自分を信じる力(2)
~「自分を信じる力(1)」のつづき~
息子の通っているスイミングスクールは月に1回進級テストがあります。最初のテストの時、息子は「あー、テスト受かるかなぁ」とテストの1週間くらい前からずっと言うようになりました。「テスト毎月あるから気楽にやんなよ。今まで練習してきたんだから、あとはもう自分を信じて、ベストを尽くすだけだよ」と言っても、「あー、受かるかなぁ」と言い続けます。この不安感はどこから来るのだろう?と思い、息子に聞いてみました。
私:「何か心配なこととか困ってることでもあるの?」
息子:「うーん、わかんない。でも受からなかったら嫌だなって思ってる。」
私:「なんで嫌だと思うの?」
息子「うーん、なんだろう。悔しいから?」
私:「悔しいって悪いことなの?」
息子:「・・・?」
私:「悔しいって思うってことは、それだけ頑張ってやってるってことなんじゃない?だから良いことなんじゃないかな。悔しいと思うからもっと上手になろうと思って練習して、それで上手くなっていくんじゃないの?他のスポーツでもそうじゃなかった?」
息子:「うん」
私:「誰だって不安や心配はあるよ。”テストに受からなかったら嫌だな”と思うのもテストに受かりたいと思ってるからで、不安になったり心配になるのも当然のことだよ。受かりたいと思っていればきっと緊張もすると思う。でもそれも受かりたいという気持ちがあるからで、自然なことなんだよ。”緊張しないようにしなきゃ”なんて思う必要もないんだよ。誰だって緊張するんだから。受かるか受からないかは実際にテストをやってみないと分からないことだから、あまり考えてももうどうしようもないよね。テストの日に出来ることっていうのは、自分を信じてベストを尽くすだけだよ。あとは、一番大事なのは何事も楽しむことかな。楽しくなければ、やろうって気にもならないし、続かないから。」
息子は最初のテストを無事に合格しました。
9級に進級した後も暑くなって外で遊べなくなってきたこともあり、毎日のように「今日もプール行きたい!」と言うようになりました。自宅近くの市営プールで毎日のように練習して、2回目の進級テストも一発合格、8級に上がりました。
市の夏休み水泳教室にも参加したいと言うので、8月は7日間の水泳教室にも通いました。水泳教室に通い始めて4日目頃でしょうか。「今日、クロールで25mを泳いでみたけど、何回立っても良くて、4回立ったけど、クロール息継ぎありで泳げたよ!」と息子が言いました。そしてこの水泳教室も最終日にテストがありました。
息子:「クロールで25m泳げたよ!」
私:「え、泳げたの!?1回も立たずに?」
息子:「うん。1回も立ってない。25m2回泳いだんだよ。すごい時間かかったけど。先生がタイム計ってて、1回目は57秒くらい。2回目は47秒くらいだった。」
私:「え、すごいよ!25m泳ぎ切ったことがすごいよ。しかも2回目は10秒もタイム縮まったんだね!?時間がかかっても最後まで諦めないで泳いだってことが何よりもすごいことだよ!」
まさかこの短期間で25mが泳げるようになるとは思ってもいなかったので、本当に驚きました。そして、この息子の頑張りに私自身もとても勇気づけられました。
息子はスイミングスクールでの3回目の進級テストも一発合格し、7級に進級しました。息子以外は誰も8級のテストに合格しなかったそうです。10級、9級、8級と同じ先生だったのですが、その先生からは「すごく上手に泳げてる!一発合格してすごい!」と褒められたそうです。息子は先生から褒められたことをとても喜んでいました。日頃から丁寧にご指導くださっている先生方にも感謝感謝です。
つい3ヵ月前まで浮くのが怖いと言って泳げず、水泳に対して苦手意識を持っていた(何だったら拒否反応すら示していた)息子が、水泳を習い始めてわずか2ヵ月で25m泳げるようになったのは、他のスポーツもやっているためそれがうまく作用したということもあると思いますが、それだけではこの短期間で25m泳げるようになっていなかったのではないかと思います。いくら技術や実力が備わっていてもその能力を十分に発揮できないケースもあるからです。息子が25mを泳げるようになったのは、最後に自分を信じたからだと思っています。
大人に比べると子供の方が素直で柔軟性があるため、このスピードで目の前の目標を無心で着実に達成できているのかもしれませんが、大人だって自分が思っている以上にまだまだたくさんの可能性を秘めています。無意識に繰り返し語りかけていくことによって、そのうちネガティブな思考や感情は取り除かれ、やがて自分を信じることに変わっていくことでしょう。そしてそういった思い込みが外れていくことによって、成功体験を積み重ねることができ、やがてそれが自信へと繋がっていく。自信をつければより自分を信じられるようになり、様々なことにチャレンジ出来るようになる。こうやってポジティブなサイクルが自分の中で築かれ、生涯を通して成長し続けることが出来るのではないかと思います。自分の殻を突き破ることさえ出来てしまえば、自分の想像を超えることはそう難しいことではないのかもしれません。
息子には「自分を信じて」とよく言っていますが、自分自身はどうなのかと聞かれると、情けないことに、実際のところあまり信じられていないところがあったりします。息子に言い続けるのは、もしかするとそれは私の無意識から私に対するメッセージで、息子に言うことによって自分自身にも言い聞かせているのかもしれません。
私も息子を見習って、もっと素直に自分を信じていきたいと思います。大人になればなるほどあれこれ考え過ぎて行動に移すことを躊躇してしまうことがありますが、私もこれから新しいことを始めようと思っていますので、何事も恐れずにどんどんチャレンジしていきたいと思います。
そして、自分だけでなく、相手のことももっと信じるようにしたいです。相手のことを信じていないとそれを言葉で伝えていなくても非言語の部分(表情、姿勢、ジェスチャー、声のトーン、話す速度、など)から相手に伝わってしまいます。人は信じていない相手には警戒心や不信感を抱き応えようとはしません。良好な信頼関係を築くためにも、相手を信じることの重要性を今後もより意識していきたいと思っています。
自分を信じ、相手を信じ、相乗効果でお互いが成長できるような、そんな関係性をこれからも色々な人達と築けていけたらいいなと思っています。