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終わりよければすべて良し。盗難疑惑からの飲み放題

今日は特別何も起きなければ、ほどほどにおめでたい日になるはずだった。

ところが、いつもより遅く帰ってきた子どもの様子がおかしい。

我が家は店と自宅が一緒なので、子どもが家を出ていく時も帰って来た時も、仕事をしながら様子が分かる。

それは大事なことだが、仕事と合わせるときつい時もある。

自転車が無くなったそうだ。

駐輪場でないところに置いていたらしい。

落ち込んでいる。

当然だ。置いてはいけない所だ。

俺も同じようなことを昔した。

どこに置いても大丈夫だと思っていたら、無くなっていて親に迷惑をかけたことがある。

みんな同じだ。

早めに仕事を終わらせて飲みに行く予定だったが、警察への届け出の際の、今回の自転車の契約書、防犯登録の書類が見当たらず、店の片付けを後回しにして家中を探す。

見当たらない。

盗難保障3年契約をしていて、ギリギリその期間な気もしたので、懸命に探したが見当たらず諦めて、店の片付けを再開。

いつもより随分店の片付けが遅くなった後、家を出て自転車が無くなった地点の確認と、最寄りの交番への届け出を想定して家を出る。交番に人がいない場合の最寄りの警察署の遠いこと…

自分が子供だった時には自転車が無くなったら「見つかるまで帰ってくんな」みたいな事を言われて、目を皿にして自転車を探し回ったもんだが…

と思いながら現場まで行った。

子どもが自転車を置いたらしい場所まで目を皿にして向かうと、現場の道の向かい側に似すぎている自転車があった。

 ◇ ◇ ◇

「俺は運が良いから見つかるんじゃないか」と勝手に思っていた。

いつもそうだけど、「見つからないだろうなぁ」と思うと見つからなくて「絶対に見つかる」と呪文を唱えるだけで見つかる時がある。

どっちのフィルターを使うかで、見えるものが違ってくる。

そう自分に言い聞かせたら、本当にあって笑えた。持ってきたその自転車用の鍵で開いた。

 ◇ ◇ ◇

いつも置く場所と違うところに置いて、それを忘れてパニックになったのか、それともいつも置いている場所に置いたら、誰かが迷惑だからと場所を移動したのか。

後者だとしても、壁際にキチンと置いておいてくださって、ありがたかった。

悪いのはこちらだ。

私の自転車で探しに行って、自転車が見つかった。

ということは、何処かまで自転車を2台移動しなければいけない。

近くに駅前駐輪場があったのでそこに子供の自転車を移動する。

ああ、ようやく俺は一人だ。

夕飯も食べていない。
お腹と背中がくっつきそうだ。

そこから自転車で一分のところに、1〜2ヶ月に一度行っている小さなチェーン店がある。

そこに行くか〜、と顔を出した。

お店の人は忙しそうで、いつものように「飲み放題で良いですか?」と急ぎ聞いてくれる。

お願いして、いつものつまみを頼み食べ始めていると、お店の人が仕事が落ち着いたようで、注文もしていないのに来てくださった。

「今年もよろしくお願いします」

そう言ってくださった。

終わりよければ、すべてよし。

すべての良い時間を、ごちそうさまでした。