アニメ、ジョゼと虎と魚
絵本作家のかたが、この街を大切にして下さっていて、私もお近づきさせていただいている。
自転車にキャンプ道具を積んで旅するくらいしか能がなく、絵を描くのが苦手な私には、絵本の世界は遠い存在だった。
ところが、その方の個展に行くと、黒いペンの短い線のつながりなだけなはずなのに、手で触ったかのような猫の温かさ、のんびりさ、時に俊敏な動きの直前のような絵になるのが不思議だった。
別の個展では、木や皮や紙や5種類くらいの素材を重ね合わせたものが「Wave」(たしか)と書かれている小さな作品があった。
それを見た時に、小さい頃家族で行った外房の海で泳ぎの苦手な自分が浮き輪にしがみついて海水浴をしていたこと、そして大きな波でひっくり返り死ぬかと思うような瞬間があったこと、そしてその時に五感で感じた海の中の記憶が、その額縁の中にあってびっくりしたことがあった。
苦手な絵画がこんなに身近に感じられるなんて。
ところで皆さんは「ジョゼと虎と魚たち」というアニメ映画をご存知ですか?
その絵本作家の方が「劇中画」を描かれていると、映画を観に行きました。
「劇中画」って言葉の意味を知らぬまま、2021年の正月にその映画を観に行きました。
ジョゼは、下半身麻痺の女の子。お祖母ちゃんに育てられ、外には「虎」がいるから気をつけろと言われ、家の中に引きこもっている。
引き込もっていながら、魚のような自由にも夢見て、自分の部屋で絵を描いている。
そこから話は始まるが、その主人公ジョゼが描く絵を担当されているのが、その作家のかた。
その映画の大事な部分でスクリーン全体にその絵が映し出されるんです。
…
観ながら嗚咽をこらえるのが、特にマスクをしているコロナ禍での映画館ではつらかった。
それから、ずっと考えていたことがある。
この何枚もの原画は、一般の私達が見ることができるのか。
原画展は可能なのか。
絶対に見たい。
聞ける機会があった。
可能かもしれない!
頭にあったのは、地元のギャラリーOGUMAGさんと、田端のユニバーサル映画館チュプキさん。
OGUMAGさんで原画展をして、同時期にチュプキさんでアニメ「ジョゼと虎と魚たち」の映画を上映する。
アニメ映画のコンセプトとチュプキさんのコンセプトは重なるはず。
この街を大切にしてくださっている作家さんと、チュプキさんともタイアップすることもあり国際的な映画業界の人でもあるOGUMAGの斎藤英子さんが出会えれば、これは可能なんじゃないか!
…
きっと、私を介さなくてもこのお二人は、すぐに出会うべくして出会っていたし、この企画は生まれたと思います。
でも、自分は一日も待ちきれなくて、思ったタイミングで、お二人に同時に自分の夢を伝えました。
…
構想が実現に向かっているそうなのです。
夢かと思いました。
これから実現への先は、プロの世界。
いろんな著作権とか、ルールとか、私のような素人にはきっと口の出すべきではない世界です。
二日酔いのオヤジみたいな何気ない顔をして、あまり聞かず進展を待っていました。
なかなか、話が動いていないように思える時も。
でも、作家、ギャラリー、映画館、それぞれ、素晴らしい、信念のある人ばかり。最終的には絶対に素晴らしい形になると確信していました。
そして、先日想像以上のことが判明。
ニ月中一ヶ月にわたる作家松田奈那子さんの、ジョゼと虎と魚たち劇中画のみの50点にもなる個展。
そしてギャラリーから徒歩8分の日本で唯一のユニバーサル映画館では、2月の後半、二週間上映。
このアニメ映画、いま世界中で欧米からアジアから、上映されていて、米アカデミー賞でもエントリーされているんです。
両方を一度に鑑賞できる我が街。
こんなことが起きるのか!
…
「よし今こそ素人の出番だ」と、情報公開のタイミングで拡散を、と思ったところ、すでに相当拡散されているらしい。
こんな時代だから落ち着いて、様子を見ながら拡散をしなければ…
まずは原画展、二月前半の平日が地元の人はおすすめです。
絵のラフから見られるみたいで、楽しみですね~!