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天ぷら屋の交わりは、淡きこと水のごとく
今週は、良いことと厳しいことが見事に交互にやってきて、そのギャップがキツかった。
良いことがあったゆえに、その関連で起きた大変なこともいくつかあった。
それを全部書いたら、皆さん胸焼けすると思うので、ささやかに嬉しかったことを自転車関係だけ2つ書いてみたい。
◇ ◇ ◇
うちの店からそう遠くないところに、自転車界ではレジェンドとして知られている人が二人いる。
お二人とも選手ではなく、自転車のオーダーメイドを請け負う人、自転車のフレームを、パイプ一本から作り上げていくフレームビルダーである。
そのうちの一人は義父の業界仲間なので、何度か居酒屋などでお話をさせていただいた、
競輪選手から高い評価を得ている。
身近な人が乗っているが、恐ろしく軽くてしなやかで、無駄がない。
本来の使い方ではないが、この自転車で、一部担がないと越えられない峠に挑戦みたいと思う、夢の自転車だ。
もう一人のレジェンドの話。
私が若い頃にすでに、海外での本格レースにも使われるほど評価が高く、特徴のある自転車を作られている人。
知人はオーダーから1年は待って、作ってもらっていた。
御夫婦で仲良く、ユニークな素材も使った疲れにくい自転車で、お二人がうちの店の前をオシドリみたい通られていたこともある。
レジェンド過ぎて、とても私なんかはその人のショップを冷やかしではフラッと入れない。
最近、また私の店の前を走るのを見かけるようになった。以前に比べると、お年をとられたようではあるが、レジェンドの作られる自転車同様、柔らかくてしなやかで静かなお人柄、美しい生き様を感じる。
すると、先日天ぷらを買ってくださり、それからちょくちょく来られるようになった。
私は、その方の自転車を間近で見たいのだが、いつも店の邪魔にならないようにと、少し遠くに置いてこられる。
つい最近来られた時は、ちょうどフキノトウが初めて入った時で小粒で70円だった。
「スミマセン、まだこんなに小さくて70円もして」と私が言うと、レジェンドは
「いやいいんだよ、俺はここの天ぷらが楽しみなんだょ」
と言って、他の天ぷらと合わせて買われ、風のように去っていかれた。
私も自転車が好きだ、とはレジェンドには言っていない。
あくまで天ぷら屋とお客さんの関係で、自分も恥じない天ぷらを揚げなければ、と思わせていただいている。
天ぷら屋の交わりは、淡きこと水のごとくあれ。
◇ ◇ 次の話 ◇ ◇
20-30代で自転車のメカに詳しい奴、好きでしようがない奴がこの街に、近くの街にいないかなぁ、と1年くらい考えていた。
先日もそんな事を考えながら行きつけのファミレスに行った。
行くと、息子の同級生で1年ぐらい働いている、いつもの彼が、席に案内してくれた。
店内は混んでいて、4人席が一つだけ空いていた。
彼は迷わず、そこに通してくれた。
私は体がでかいし、結構オーダーするので、4人席だと本当にありがたい。
その席の斜め前はスタッフルーム。
そこでの仕事を終えた人や、これから交代する人が出たり入ったりする場所。
私がゆっくり、くつろぎの時間を過ごさせて貰っていると、仕事を終わった彼が私服に着替えて、そこから出て帰るところだった。
「お疲れ様、いつもありがとう!」
と私が言うと、何となく話が始まった。
彼は、昔から人なっこい。
大学に行くと言っていて高校3年生でいま働いている、と言うことはもう受験は終わっているのかなと、聞いてみた。
「もう大学は決まった?学部は?」
と聞くと、工学系大学の機械関係だった。
息子も検討していた大学だ。
(理系とは、意外!)
「いや~、僕、自転車が、好きなんです!」
(え〜!さらに衝撃)
「自分の自転車を、ハブもBBも全部分解して、また組んだりしています。自動車のメカにも興味があって。そんな改造クラブが大学にあるので興味があります。大学が少し遠いので、ここでのバイトも続けられるか分からないです。違う形態の飲食バイトにも興味があるし…」
(マジか!)
三十分ぐらい話してしまった。
どの話も衝撃的であり、自分が探していた3種類ぐらいの人が、彼の中に全てある。
「いろいろ話を聞かせてくれてありがとうー」
そう言って彼とバイバイして、あまりの驚きで、ワインをもう一杯頼んでしまった。
こうやって、お互いの夢やビジョンみたいな話ができるファミレスがあるって奇跡だ。
◇ ◇ ◇
今週はしんどかったので、嬉しかったささやかなとこをnoteに書き込むことで、自分を落ち着けさせたい、と書いてみた。
自分の住んでいる街の、意外な自転車つながりの人達。
一方でレジェンドがいらっしゃって、一方でルーキーがいて。
その間に自分がいる事の幸せを感じた。
親から子へ 子から孫へ
みたいな。
おやすみなさい。