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コーディングが苦手だからノーコードツールという選択は悪手、という話

元WEBデザイナーが、デザインについてつらつらと書いていきます。今回はデザイナーがコーディングが苦手、もしくはできないという理由でクライアントにノーコードツール利用を勧める事の是非について語ります。WEBデザインを学んでいる人、就活中の人、駆け出しのフリーランスデザイナーに読んでいただければ幸いです。


デザイナー側の都合でノーコードツール利用を勧めるのはビジネスとして問題アリ

クライアントがノーコードツール利用を望んでいるのであれば問題ありませんが、特に条件を指定されていない案件で、自分がコーディングできない、苦手だからという理由で、クライアントにノーコードツール利用を強引に勧めるのは、果たしてクライアントのためになっていると言えるでしょうか。

デザイナーがコーディングスキルを有しているかどうかは、クライアントにとっては重要な事ではありませんし、コーディングできない、苦手だからというデザイナーの都合だけでノーコードツールの使用を提案するべきではありません。

デザイナーはクライアントの要件・要望、ビジネスの規模、ホームページ運用にかかる負担等を考慮しつつ、ノーコードツールを利用することでそれらの課題が解消されるかどうか、デメリットがないかを検討し、クライアントの利になるような提案をするべきです。

ホームページ制作でノーコードツールを利用した場合、初期費用のうちのコーディングにかかる制作費の削減、運用にかかるリソースやコストの節約につながる等のメリットがある一方で、諸々デメリットもあります。ノーコードツールについてよくわかっていないのに漠然とノーコードツール利用を希望しているクライアントに対しては、ノーコードツールのメリット、デメリット、WordPress等の他のCMSを使う選択肢もある事も説明した方が良いでしょう。

そもそも、ノーコードツール利用を前提にしないとホームページを作る事ができない、というのはクライアントに提供できる選択肢の幅が、WEB制作のプロフェッショナルとしては狭すぎます。

ノーコードツール利用、既製品CMSパッケージ利用、それ以外の方法のいずれを採用するのか、選択権はクライアントにあります。自身のスキルや都合でクライアントの選択肢を狭める事がないようにしましょう。

予算が潤沢にある企業はノーコードツール利用に否定的

ホームページ制作、運用に際し、予算が潤沢にある企業はノーコードツールの利用に否定的である事が良くあります。

中~大規模な企業の場合は、扱わなければならない情報量、ページ構成の複雑さ、規模感、必要とされる機能等の事情でノーコードツールの利用に適さない事はよくありますが、規模的、機能的にノーコードツールでも十分に制作可能な場合でも、ノーコードツールの利用を断られる事があります。

ノーコードツールの利用に難色を示される理由として、筆者がクライアントから伺ったことがあるのは

・プラットホームに依存してしまう事で発生するリスク(サービス終了や予告なしの突然のアカウント削除等によるデータの消失、運営側の都合、判断で情報を削除される等の情報統制行為)を避けたい

・自社のオウンドメディアは可能な限り、自社管理でメディアの独立性を維持したい

・自社内でノーコードツールを使って作成してみたが、自分達の要望・要件を満たすことができなかった経験がある

・提供されているサービス・機能の範囲内で制作しなければいけない点に不自由さを感じる

というものが多かった記憶がありますが、

ノーコードツールで作られたホームページは安っぽい、品質がイマイチという印象がある

という理由で利用を断るクライアントも一定数いました。

確かに、ノーコードツールを使ったホームページには、テンプレートを利用したものが多く、また、演出面でも付属機能を利用した安っぽい演出のホームページが多く存在するのも事実です。

ホームページ制作、運用に潤沢な予算を用意できる企業は、ホームページに「見栄」や「格」を求めている事があります。そのようなクライアントはノーコードツールの利用に難色を示す事が多い様に見受けられます。

このように、クライアント側はホームページの規模、機能、品質、運用管理といった合理的な理由だけでなく、見栄やプライドという感情的な理由でノーコードツールの使用を否定する場合もあります。

高額案件でノーコードツール利用不可なものが多い事情の裏には、クライアント側の感情的な部分も作用している事もある、ということを覚えておきましょう。

自分一人の力だけで仕事の幅を広げようと考えない

クライアントの利益を考えず、自分が苦手だからという理由でノーコードツールを無理やり提案してしまう、ノーコードツールを使って制作してしまう人は、「何でも自分でやらなければならない」もしくは「デザイナーの守備範囲」という固定観念に縛られていて、苦手な事は誰かに頼むという発想に欠けているのではないでしょうか。

社会経験が少ない駆け出しデザイナーは、「人を使う」「人に頼る」という発想ができない人が多い様ですが、「何でも自分が~」という発想に縛られていては最善手は打てません。プロのデザイナーとしてビジネスをしていくのであれば、他人のサービスの利用、横のつながりの活用を考えるべきです。フリーランスでも「人を使う」「人に頼る」という選択肢を持っておきましょう。

「〇〇が苦手」「〇〇できません」ではフリーランスとしての仕事の幅は広がりませんし、受注できる仕事も限られてしまいます。

フリーランスだから「なんでも自分一人でやらないといけない」という思い込みを捨て、ディレクターとしての視点を持って他人が提供するサービスを有効活用する事を考えましょう。

特にWEB制作の仕事では、「デザインだけ」を請負う案件は数が少なく、最低でもHTML+CSSのコーディング、WordPressのテーマ制作まで一貫してデザイナーが行えないと、まともな仕事を得るのは難しいです。デザインだけしかできないとなると、バナーやサムネイルといった格安な仕事しか請けられない状態になってしまいます。

どうしてもコーディングが苦手なフリーランスデザイナーは、コーダー、フロントエンジニア、バックエンドエンジニアの協力を得て、チームで活動するべきでしょう。

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