デザインは思考することが重要だが、デザイナーとして仕事するなら表現力もないと成り立たない、という話
元WEBデザイナーが、デザインについてつらつらと書いていきます。デザインの仕事は「思考」がすべてなのか?ということについて語ります。デザイナーを目指したい人、デザインを学んでいる人、就活中の人、駆け出しデザイナー、フリーランスを目指している人に読んでいただければ幸いです。
「デザイン」は思考がすべて?
最近SNS界隈で、「デザインは思考がすべて」という意見が散見されるようになりました。
極端な意見のようにも見えますが、デザインの中核をなすのは「企画」「設計」「構想」「計画」等々の思考する事、意図する事であるのは、まぎれもない事実です。
人はモノを作る際、程度の大小はあれど必ず何かを思考、意図して作ります。何も考えていなかったと思える事もあるかもしれませんが、それは意図したことが意識に上がってきていないか、意識できていないだけで、そこには必ず何かしらの思考、意図が含まれています。
デザインにおいて、思考する事は最も重要な事であり、「思考なきデザイン」「意図なきデザイン」は存在しないと言っても過言ではありません。
デザインの仕事の工程において、「企画」「設計」「構想」「計画」等々の思考する作業工程はコンセプトワークと呼ばれることがあります。一方、グラフィックデザイン、WEBデザイン等の領域ではコンセプトを視覚的に表現する、コンセプトにカタチを与える作業工程があります。これらはアートワーク、ビジュアルデザイン等と呼ばれます。
最近では、企画職のようなコンセプトワークだけを担当する職域と担当者にも、「デザイン」「デザイナー」といった表現、呼称を用いるようになっていますが、一般的にいう「デザインの仕事」は大抵の場合、コンセプトワークとアートワークがセットになっています。
「デザイン」は思考がすべてなのかもしれません。ですが、「デザインの仕事」「デザイナーの仕事」の全工程を見た場合、「思考だけ」では完結しない部分も多分にあるのではないでしょうか。
デザイナーには表現力が必要。思考するだけでは「机上の空論」
デザイナーは「デザインを考える人」であると同時に「表現者」「伝達者」としての役割もあります。しかし、「考えるだけ」では表現者、伝達者としての役割を全うできません。
特にグラフィックデザイナー、WEBデザイナーといった、視覚伝達の役割を担う職業は、自身の思考に形を与えて世に送り出すことができるだけの、造形的表現力が必ず必要になります。
デザイナーの役割は、基本的にコンセプトワーク、アートワークの両方を一貫して担当する事ですが、所属する組織の構成、案件ごとに割り当てられる役割分担の中身によっては、アートワークが中心になる事も良くあります。特にアートディレクターの元でデザイナーの役割を果たす場合、デザイナーの仕事はアートワークが中心になる傾向があります。
アートワーク中心の仕事に携わる際、デザイナーには人並み以上の美術的素養、造形的表現力が求められます。求められる水準以上の結果を出すためには、思考の鍛錬だけでなく、表現力の鍛錬も必要です。
デザイン思考だけでも、デザインテクニックだけでも、デザイナーの仕事は務まらない
グラフィックデザイン、WEBデザイン等、アートワーク、ビジュアルデザインが作業工程に含まれるデザインの仕事においては、デザイナーとしての職務を全うするには、デザイン的な思考が得意なだけでは務まりません。
制作会社等に所属しているグラフィックデザイナー、WEBデザイナーはアートワーク、ビジュアルデザインがその仕事の中心といっても良いでしょう。特に広告関係の仕事では、コンセプトをビジュアルに落とし込み、表現する際、高い造形的表現力・デザインテクニックが求められます。
請負仕事をメインにしている企業に所属しているデザイナーの場合、コンセプトワークの部分をクライアントやアートディレクターが担い、自身はアートワークばかりを担当する事が多くなる事もあります。そして、その状況が長く続くと、コンセプトワークの経験が十分に積めないまま、ベテランと呼ばれる領域に達してしまったりします。その状態でフリーランスとして独立してしまったりすると、ベテランであろうとも苦戦を強いられる事は避けられません。
デザイナーとして仕事をしていくには、コンセプトワークとアートワークの両方を、高水準かつバランスよくこなせることが大事です。
特に将来フリーランスとして独立をしたい人、デザインを学んでフリーランスデビューを検討している人は、思考する事と表現する事、その両方の能力を、将来競合するであろう人達と同等以上の水準にまで高める必要がある事を覚えておきましょう。