20210815 [polygon wave]考察

自分が生きている意義を確認する場が否応無しに奪われたら、どうなる。

何のために生きているのか、自分たちは必要なのか、エンターテイメントは不要不急なのか、何を社会にもたらすことが出来るだろうって考える時間はたっぷりあった。それどころか自分たちと向き合わざるを得ない状況だった。

幸いにも彼らは一人じゃなかった。手を取り合って進んできた仲間が大勢居て、何を伝えるか、どう切り開いていくかを語り合った。


いつだって少し先の、洗練された未来を提示してきたPerfumeが、まだまだ続くであろうこの時代をこう生きていったらどうだろうって提示する、そんなライブだったように思う。


ライブの主題は、あ〜ちゃんが繰り返し言っていた「共に生きよう」じゃないだろうか。

数日前に金ローで「もののけ姫」をしていたから、え?アシタカなの?ボケなの?って突っ込みたかったけど、彼女は大真面目だったので心の中で上げかけたツッコミの右手はすぐに下ろした。


「共存」というと「ウィズコロナ」という掛け声然り、ウィルスと人間の共存とも取りがちだけど、今回テーマにしたのは他者とのそれ。


他の人はウィルスを持っているかもしれない、触れ合ってはいけない、不用意に近づいてはならない、未だかつてないほどに個々のパーソナルスペースが広がっている。そして悪者探し、憶測と中傷、主張や信念の食い違いがあちこちで分断を生んでいる。


8/15、「不要不急の来県は中止を」と叫ばれている真っ只中に私は県境を越えた。ライブビューイングなんて不要不急なんだろうな、このことは誰にもバレてはいけないと隠れるようにして行った。

新幹線では三列シートの1番窓際に座った。隣の列の4人家族が椅子を回転させて談笑していた。小学校低学年くらいのお兄ちゃんと、4歳くらいの女の子の可愛らしい声が響いていた。

それなのに私はその家族の微笑ましい姿を盗み見て、マスクしてないのか…と思ってしまった。トンネルに入るたびに窓に映る家族を監視してしまうようで、そんな自分が嫌で、眠たくもないのに目を閉じていた。見えないものに恐怖して、他者を疑って、境界線をひいて、本当に嫌な世界、自分の心。


君と僕、こっちとそっち、そっちとこっち

それぞれの環境・立場がある。こっちとそっちが完全に溶け合うことはない。


黒い髪、黒い瞳、黒い影
白い肌、白い光、白い気持ち

黒い髪、黒い瞳を持つ人は限られているけど、黒い影は誰もがつくるもの。

白い肌はわたしにはないけれど、白い光はどこにでも降り注ぐし、誰しもに白い気持ちはある。


私の声は、私の存在は、私の気配は

今、私とあなたの間のベールは取り去ることが出来ないけれど、お互いの気配に心を寄せ合うことはできる。

バラバラにならずに、共に生きていきましょうというメッセージと受け取りました。


ライブが出来なくなって、1年半。エンターテイメントにできることを考えて考えてたどり着いた1つの答え。みんなの想いを1つの束にして、跳ね返す柔らかいかたまりになること。

誰かの想いがPerfumeというミラーボールに反射して確かに私の心にキラキラと届いたし、私のも、誰かには届いたんだと思う。

そのひとかけら、ひとかけらをポッケに入れて無くさないように、忘れないように過ごしていきたい。そうすれば、ほんの少しだけかもしれないけど、君と僕との間のベールが透明度を増すんじゃないかな。

一晩寝かせて、そんなことをつらつらと思いました。


以下、雑感。

・2010年のはじめての東京ドームをやるときに、広い会場だから間を埋めるのに人を入れるという方法もあるが、3人だけでやるか?と先生から確認されたとき、3人だけで舞台に立ちたいと答え、どんなに広い会場でも3人だけでやり遂げると決めてきた、その不文律を破った。

観客を間引きして、一年半前と同じことをしても意味がない。もう元には戻れないんだから、新しいことをやる必要がある。

2010年の東京ドーム、真っ白の衣装にベールを被ったGISHIKIを赤く塗り替えて入場してみせた。はじめに歌うは同じく2010年の不自然なガール。

3人以外が舞台に上がるというのはこの上ない不自然なんだけど、MVの再現だから違和感は無い。

ダンサーさんを導入する道筋として最適解です、先生。


・すこし自然じゃないガールがコーディングされ、生み出された。自らの存在意義に苦悩しながらも、最後に答えにたどり着き、次のステージへと進んでいく。フォロワーさんも言ってたけど綾波レイを彷彿させた。


・I still love Uで、人の方を影に見立てマッピングの方を鮮やかに踊らせるの最高でした。はじめに上に鏡のような機構を吊るして照明を照射していたので、3人の像がリフレクトしているって意味だと思う。

影の新たな表現方法が画期的で、このアイディアありきでダンサーさんを入れる方針になったのではないのかな?と思うほどの出来栄え。


・前、後、横、上下、大きなステージの空間を余すことなく使って魅せた。分かっているはずなのに、こっちにも伸びるよ〜って空間を示されていちいちその広がりにビックリ。


・観客が声を出さない状況でのP.T.A.のコーナーをしっかり盛り上げられるところ、巻きこみ力は名人の域だと感服した。

ライブ本編だけだとかっこよ過ぎて芸術になってしまうところ、限られた時間で凝縮して温かみをくれる。これを両立できるのがPerfumeの凄みだと再確認することでした。


以上!いけるといいな、次のライブ!

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