「ストライキと健康」ショートショート
アメリカでストライキが起こった。
ストライキが起こった会社は、ウェアラブル製品の会社だった。
ウェアラブル製品とは、手首や腕、頭や指に装着して使うコンピュータデバイスである。
代表的なものにスマートウォッチがある。
近年ではスマートウォッチの普及は進んでおり、それぞれが便利な時計として扱うとともに、健康のために利用する人も大勢いる。
ウェアラブル製品の会社がストライキを起こすと、世界中のウェアラブルデバイスが使えなくなった。
厳密に言うと、使用することはできるのだが、肝心の体のことを測定する機能が全く使えないのだ。
使えないといっても、何も表示されないのではない。全てが健康としてしか出ないのだ。
ウェアラブル製品を使っていた人々は、混乱した。
すでに人生の一部になっていたウェアラブルデバイスが、ただの健康を示すだけの装置になってしまった。
今まで自分の歩数や心拍数、酸素量などを測り、健康に気を遣ってきたのに…。
そんな人々の声も届かず、ストライキはまだまだ続く。
ストライキが始まって半年後。
多くの人々はもう、ウェアラブルデバイスを気にしないものの、機能としては使えるため、いまだに元気に使用していた。
ウェアラブル会社
「私たちがストライキを起こして、健康機能の表示をせず、私たち会社の人間だけが見れるようにしたが、この半年で数値がおかしい。明らかに、数値を表示していた頃より、全世界の人々が健康になっている…」
「これは…ストライキを辞めるわけにはいかないのでは…」
人々は健康になっていた。
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