AMI発症患者の心血管イベントに対するスピロノラクトンの効果
NEJMの試験の結果です。https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMoa2405923
AMIを発症したすべての患者に対してスピロノラクトン(25mg/day)を投与して心血管死もしくは心不全発症が減少するかを3年間のフォローアップにより検討した試験です。EF低下している患者のAMIにはスピロノラクトンが有用であったと言われており、それでは全患者を対象にしたらどうなのか?といった背景から行われているようです。
結果はnegativeでした。心血管死のイベント数の減少にはスピロノラクトンの有効性は明らかではない、といった結果になってしまいました。
血圧に関しては3mmHg程度低下しているので、内服コンプライアンスはよさそうな印象です。
safety outcomeでは女性化乳房や乳房の貼り、高K血症がスピロノラクトン群で有意に高かったことが報告されています。eGFRに関してはスピロノラクトン群で有意に低くなっています(どのくらいの意味があるのか分かりません
)。
RALES試験ではNIHA分類でIIIかIV(通常以下の身体活動もしくは安静時に息切れ)の症状を有しており、EF35%未満の患者に対して、スピロノラクトンは全死亡を減少させることが示され、脚光をあびていました。
エプレレノンをEF40%未満の心不全を有するAMI患者に使用したEPHESUS試験でも同様に全死亡の減少が確認されています。
一方で心不全を有さない心筋梗塞患者を対象にしたALBATROSS試験ではスピロノラクトンは有効性を示していません。
心血管イベントには有意な差はありませんが、よくよく結果をみると、心不全発症は低下傾向になっています。医療の進歩により心筋梗塞患者の予後が改善していることが当初予想されたイベント数の減少につながっており、いわゆるタイプIIエラーを引き起こしている可能性について言及されています。臨床試験がますます困難になっていますね。
一方で非ステロイド系MRAのフィネレノンはいろいろといいことが報告されており、フィネレノンへの期待が高まっています。
まとめですが、スピロノラクトンは心筋梗塞が既往にありEF低下した心不全症状を有する患者には積極的に投与していこうと思いました。それでは、EFが低下していなかったり、心不全症状のない患者にはどうするのか迷いますね。投与しなくてもいいのかもしれませんが、心不全入院は減るかもしれない可能性にかけて、副作用がなければスピロノラクトンを投与しておいてもいいかもしれません。