映画『ロング・ショットー僕と彼女のありえない恋』に見られるイキにくさの表現
先に投稿した場面の続きで、セックスした直後の二人の会話にも注目してみよう。
[after they’ve just had sex](セックスした直後)
Charlotte Field: Wow. Oh, my God, I’m sorry. I don’t know what happened. I usually last way longer than that. You know?(うわあ、どうしよう。ごめんなさい。どうなってたのかわかんない。私ふだんはもっとイクまでずっと時間がかかるの[←直訳:私ふつうはこれよりもずっと長く続くの]。そうなのよ)
Fred Flarsky: Not me.(俺は違う(俺はイクのがふだんから早いよ))
Charlotte Field: That was weird. (変だったわよね)
Fred Flarsky: We both said, “Oh, boy,” when we came at the same time.(俺たち、同時にイクとき二人とも「うわあ!」って言ったよね)
Charlotte Field: Yeah. Yeah, that’s what I was thinking. That’s never happened before.(そうよ。そのこと私も考えてたの。こんなこと以前には一度もなかった)
セックスした時に、イキやすくてすぐイク人(男性だとこれは早漏と呼ばれあまり高く評価されない)と、なかなかイカない人がいるのは周知の事実である。
さて、今上でも書いたように、オルガズムに達するのに時間がかかる(男性だと遅漏ってこと)ことを、日本語では「なかなかイカない」と否定形に副詞を付けた形で表現したり、「イクのに時間がかかる」とイク瞬間を基準(ゴール)にしてそこへの到達に時間がかかるという言い方をすることがおおい。
でもここの英語表現はいずれとも異なるのが興味深い。
I usually last way longer than that.
ここのlastはもちろん、「最後の」という意味の形容詞ではなく、動詞である。動詞の意味は『ジーニアス英和辞典』(第5版)で以下のように定義されている:
❶ [SV]〈会議・劇・試合などが〉〔…の間/…まで〕続く
❷ [SV]〈天候・努力・状況などが〉(同じ状態で)継続する
つまり、英語ではなかなかイカないことを表すのに、イカずにセックスという活動を行っている時間が「続く、継続する」という部分に焦点を当て、そこを基準にした言語化をするのである。
wayはもちろん「道」という名詞ではなく、副詞であり、『ジーニアス英和辞典』(第5版)で❷ [副詞・前置詞(句)を強めて] ずっと, はるかに, きわめて、と定義されているものである。
than thatのthatは直前のセックスを指すから、全体の直訳は「私はふつう、それ(さっきのセックス)よりもずっと長く(セックスを)継続する」となる。
つまり、日本語では「なかなかイカない」「イクのに時間がかかる」のように「イク」という結果に焦点を当てた言語化をしているのに対して、英語ではイカずに「セックスを続ける」という行為に焦点を当てた言語化をしていることになる。
たまたまこの場面では、焦点を当てている(叙述の中心としている)部分が異なるわけだが、これがさらにもっと大きな法則か何かにつながるのかどうかは、さらなるデータを収集して分析しなければわからない。
ただね、今日、この映画を見てて、ふと面白いなと私は思ったのだよ。下ネタ好きの私はねw
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