ECのメディア化を考える ~コンテンツの価値とは何か~
こんにちは、TCOのミカミ・リョーです。更新が滞っており、すみません! ここのところLINE研究にずっと取り組んでいましたが、今回はテーマを変えてお届けします。
デジタルの世界については、常にネタをウォッチしていますが、改めてホットなのはコンテンツ軸の話かなと思っています。とくにECにおいて。
ECを考えるうえで、いろんな課題があります。カート、つまりECシステムから、SNS活用、広告運用、接客や追客のツールまで。いろいろある中で機能的な議論は、しつくされたのではないかと感じています。実はどこのツールを使っても、できることに差はあまりない状態。ある種、コモディティ化しているような。
そこで、ミカミ的に気になっているのがコンテンツ軸の話なのです。言い換えるならECの「メディア化」です。コンテンツマーケティングという言葉は、ECに限らず目にするトピックですね。そんなコンテンツの話は、EC事業者や、私たちが支援するD2Cブランドこそ、もっと取り組むべきではないか。そこには「機能」だけでない何かがある気がして。
前に、このnoteでECのアプリ化を取り上げました。
詳しくは、過去記事を読んでいただくとして、「アプリ化の前にやることがあるのではないか?」というのが、考察を通してミカミが得た「気づき」でした。その“前にやること”とは、ユーザーとのつながりをつくることですね。アプリ化でも、ユーザーの分母が重要なのは触れました。しかし、一網打尽にユーザーを獲得するような方法ではなく、一人ひとりと質のいいコミュニケーションを通して、関係をつくる必要があると思うわけです。これは「LINE研究」でお伝えしたことにもつながります。
LINE研究パート1では、LINEという手段をつかったOne To Oneコミュニケーションの重要性について書きました。そのコミュニケーションの先にあるもの、「受け皿」と言い換えられるかもしれませんが、それが「コンテンツ」です。ECやD2Cブランドを運営する企業が、ユーザーと質のいいコミュニケーションを行うために大きな役目を果たすのが「コンテンツ」であり、それを束ねた「メディア」ではないでしょうか。
ECサイト訪問の目的は買い物だけなのか
ミカミがアマゾンにアクセスするとき、その目的は「買い物」です。当たり前すぎますね(笑)でも、大真面目に考えてみましょう。ミカミが毎日アマゾンをのぞくことはないです。買うものがないとき、ミカミにとってアマゾンは単なる「用がないECモール」だからです。
しかし、私の友人で、とあるECサイトに頻繁にアクセスする人がいます。買う予定がなくても、そのECをのぞきに行く。その人が楽しみにしているのは、コラムの更新だそうです。で、教えてもらったのが、福岡の地域文化商社「うなぎの寝床」のECサイト。コラムのページを見てみましょう。
読み物が充実していますね。内容は扱っている商品の「背景」や「つくりて」の紹介などが中心。ファンにとっては、これがたまらないとのこと。なんとなく、その気持ちはわかります。友人はコラムを読んで気に入った商品を購入するそうです。「うなぎの寝床」自体が「目利き」で、商品スペックだけでなく、コラムを通して背景からプレゼンテーションしているわけですね。なるほど、コンテンツの重要性を感じます。
ミカミ的に、アマゾンでも、楽天でも、販売チャネルとしてECモールがダメだとは思っていません。むしろモールの販売力に大きな利用価値を感じるタイプです。でも、D2Cブランドに置き換えた場合、ECモールだとブランドの世界観を伝えるのが難しい。競合商品と並んだ総合カタログみたいなものです。商品のスペックと必要な商品情報で勝負するしかない(レビューについては、また別の話なので省略します)。
だから、「うなぎの寝床」のように背景を物語るには、自社ECサイトにコンテンツが必要です。コンテンツが充実してくれば、ECサイトはメディア化します。これは多くのファンを集める強力な装置です。そうなると、ECサイト訪問の目的は、買い物だけではなくなります。定期的に来てくれる人をつくり、必要と思えば買ってくれる。ECメディア化の最大ポイントは、そんな仕組みづくりなんですね。
ファンが楽しむことを買い物よりも優先する「北欧、暮らしの道具店」
ここで、アプリ化の記事でも注目した「北欧、暮らし道具店」についても考えてみましょう。
コンテンツマーケティングの教科書みたいな存在です。彼らは、「ライフカルチャープラットフォーム」と自分たちのことを言っていますね。ECはキャッシュポイントの柱でしょうかが、それより大事にしているのが、自社を好きだと思ってくれている人たちに「フィットする」プラットフォームであること。ここがスゴイとこですね。
アプリ化の記事でも引用しましたが、代表の青木氏は、「売れるけどおもしろさに反する、快適さに反することはやらない」と言っています。買い物客だけを求めていないわけですね。ググれば「北欧、暮らし道具店」について、いろいろな記事がヒットします。関係者のインタビューも多いですね。研究したい方は、ぜひググってください!
ミカミ的に「北欧、暮らし道具店」のコンテンツ戦略で感動したのは、商品情報だけでなく「このアイテムがあなたにフィットすれば、生活はこんなになりますよ」と、コンテンツを通して伝えている点です。提案というほどゴリゴリ押してこない。さりげなく紹介しつつ、琴線にふれる見せ方をしている。だから、ユーザーと高いエンゲージメントを形成できるし、月間200万人ものユーザーが訪れるんですね。
メディア化のために必要なことは何か
ここまでは、メディア化の事例を見てきました。やっぱりコンテンツって重要ですね。と、思うわけですが、どうやるか、そこが難しいところです。
D2Cブランドであれば、その背景を語ることはマストです。しかし、メディアとしてコンテンツを運用していくには、積み重ねが必要です。ブランドストーリーをひとつ語ってオシマイだと厳しい。そこでミカミ的に考えたのは、まずは社内に目を向けることです。
商品開発の苦労話、ユーザーから寄せられた声、営業担当のこだわり、中の人の使用レポートなどなど。ネタは社内に転がっているはずです。少し乱暴かもしれませんが、なんでもいいと思うんです。まずは発信してみることが大切です。
自社ECをメディア化するのが大変なら、SNSを活用してもいいし、noteでもいいかもしれません。ブログでもOKです。とにかく、発信し続ける。多少の忍耐は必要です。たぶん、「北欧、暮らしの道具店」も、それを続けたからこそ今のポジションがある。
まあ、こうしたコンテンツは、LPとは違うかもしれません。すぐに販売につながらない。だから、評価もむずかしい。しかし、続けていくことで価値が出てくることは、間違いないと思っています。もちろん、SEO対策とか、トレンドとか、戦略的な取り組みも大切です。でも、肝心なコンテンツがなければ、メディア化の道はひらけないし、ユーザーとの質の高い、日常的なコミュニケーションは生まれないのではないか、というのがミカミ的な見立てです。
ミカミ的まとめ
今回は、ECのメディア化をテーマにいろいろ考えてみました。ちなみに、ミカミがLINEやD2C界隈、デジタルマーケティングをテーマにアレやコレやを発信している、このnoteもそういう狙いがあります。あくまでも個人でカジュアルに発信しているわけですが、ある意味でミカミ的コンテンツマーケティングです(笑)。まだ、このnoteを読んだ方から仕事の依頼はありませんが、いつかそんな日が来ることを信じて続けています。ではまたー。
ミカミ・リョー@コンテンツマーケティングは忍耐が必要