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新年のご挨拶

新年明けましておめでとうございます。

旧年中はたいへんお世話になりました。高校の校長という少し前は全く予想も出来ない場所に来ることになって、戸惑いつつ、・・・いや、恐らくは周りの皆さんを戸惑わせた割合の方が大きいかな・・・進んで参りました。今年はいよいよ二年目、ある意味で勝負の年だと思います。腹を括って事に当たります。どうぞご声援をお願いいたします。

昨年後半に、「コテン・ラジオ」というポッドキャストにハマり始め、多くの気付きと学びを頂いた。本当に多くの世界史に名を残した偉人賢人達の判断や人生に触れて、多くを学び、また自分の人生にその知見を活用できる実感を持ちました。

コテンラジオのYoutubeチャンネルのリンク

その中でしかし、一番のインパクトが残っているのは特別編の38〜40。ボーダレス・ジャパンというソーシャルベンチャー企業を経営されている田口一成さんという方をゲストに呼んでの回だった。中身が濃すぎて、未だにこれを反芻している毎日、という感じさえある。

特別編383940へのリンク

これに感激して、高校教育はこうありたい、と言う事もツイートで呟いたりしました。まぁとにかくすごい人に出会ってしまった。

今日書きたいのは、その中の、たった一つのことなんだけどね。田口さんが仰っていた言葉の中で、心に響いた言葉の一つ。「ちっさなことはいいことだ」と言う言葉です。

皆さんもよくご存じのように、現代社会は資本主義に支えられている。競争を促し、良質のサービスや商品が生まれ、質が悪いものは淘汰されていく。これ自体は悪い事じゃない。

でも、本当に質が高いもの、良き志の上に生まれたものも、量や効率を獲得できずに淘汰され、朽ちていくものがあるのです。田口さんは別のところで言っていました。「資本主義はとにかく効率」を目指すと。売値を上げるのは難しいから生産コストを下げる。ネットツールにしても効率を上げてコストを下げることによって儲けを生み出すわけです。大きな儲けを生み出すものが勝ち、儲けが小さなものは負ける。

僕らの生活の中で言えば、効率よくさらって上手になればすぐ上手くなる。少ない回数で暗譜すれば多くの曲をこなせる。効率よく宣伝して多くのお客さんにチケットを売ると主催者は喜び、また仕事をくれるかも知れない。下積みを長くやるよりさっさとコンクールで入賞すれば、効率的にキャリアアップ出来る。みたいな事か。

でも、それだけでいいんだろうか。

我々の担っている音楽や文化。これは言ってみれば、すごく効率が悪いものです。音楽を聴いてもお腹は一杯にならないし、音楽は無くても生きていける。生命維持に必要不可欠とは言えない。

資本主義に喧嘩を売るつもりはないです。恩恵も受けているしね。でも資本主義というシステムが「賞味期限を過ぎている」という事が言われて久しいのに次のシステムが生まれてこない。何とかならないものか、とずっと僕なりに悩んでます。そこに希望の光がやってきた感じがしました。

田口さんは言う。「資本主義は、効率を追求する世界。結果として人も場所も効率の悪いところが取り残され、社会課題になっていきます。ソーシャルビジネスは、その非効率も含めて再構築するビジネス。」(#FUKUOKAから)

耕作放棄地、障害者の雇用、貧困の解消、温暖化解消。これらに真っ向から挑んでいき、どんどん解決の具体的な方法を示し、業績を上げている。こんなにカッコいいことがあるだろうか。

話を戻すと「ちっさいことはいいことだ」という言葉。これは田口さんが会社の規模について述べたときに出てきた言葉だ。規模が大きすぎる、大きくなりすぎると、大きくなることや大きく居続けること、大きな儲けを出し続けることが目的になってしまって、創業時は面白い会社、志が高かった会社も「貴方たちがやらなくちゃいけない事ですか?」という仕事をする様になってしまって残念だと。だから、ちっさい規模(意志決定が7〜10人程度で行われる会社、と言っていたと思う)が良いんです、って。

僕が昨年11月28日に、上野の東京文化会館小ホールで歌ったこのプロダクション。聴いてくれた人もいたかな。これは是非聞いて欲しい舞台でした。この一曲目が"Auch kleine Dinge können uns entzücken" (小さなものでもわたし達を魅了するものがある)という曲でした。僕が好きで好きで仕方ない曲です。

小さくてもうっとりさせるものはあるし
小さいからこそ良い ということもあります
素敵な真珠の首飾り 高価だけれど小さいし
オリーブもほんとに小さくて 誰もが欲しがるもの
薔薇の花はちっぽけだけど 芳しく薫るでしょう
(訳:岩田達宗)

量やスピード、効率や数の多さ。これが良いと見做されるのは当然。でも、なのです。僕らが音楽という世界で目指すのは量より質だと思う。もっというと、志、自分らしさ、魅力、面白さ・・・そういうものかな。「計れない」物の価値。非認知能力と言う言葉が最近よくメディアにも出る様になってきたけど、これもそっちのカテゴリーですね。

今年は本当のクオリティ、質を目指す年にしたいと思います。一緒にやりましょ。


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