冬期受験講習会、学校説明会での挨拶全文
東京音楽大学附属高等学校、冬期講習受講者の皆さん、保護者の皆様、こんにちは。
本校の冬期受験講習会、学校説明会にようこそおいで下さいました。学校長の小森です。
この説明会は、受験対策などへのアドバイスの他、コンサートもあり、本校の魅力や方向性を十分わかって頂けるのではないかと思います。
僕自身、4月に就任したばかりの新米校長ですので、ちょっとだけ自己紹介をさせていただきます。
僕は学校長ですが、同時に声楽家、オペラ歌手でもあり、演奏活動を続けながら高校の、教育、運営に携わっています。
今日も冬期講習が終わったあとは、1月にあるオペラ公演、二期会というオペラ団体の公演の稽古に参ります。フランス人指揮者のマキシム・パカルさんも合流しているので、非常に楽しい、充実した稽古が続いています。
今日のコンサートで、本校の代表として演奏してくれるのは、生徒でありアーティストである、津野絢音さんと前田妃奈さんです。今日の演奏を聴くのを、僕自身、とても楽しみにしています。
前田妃奈さんとは、僕は校長としてではなく、演奏家としては2月にも共演します。東京音楽大学のアクトプロジェクトと言う企画のコンサートですが、東京音楽大学、東京音楽大学附属高等学校の学生と生徒が教員と一緒に演奏すると言う、独創的な企画です。冬期講習で個別相談を行うクリエイティブラボにチラシがありますので、よろしければご覧下さい。
表現者として舞台に立ち続けること、つまり現場の緊張感や喜びを、教育の現場にお届けする事が、自分の役割の一つではないかと思っています。
そして声楽教育の現場に立つ教育者でもあります。今日はこの学校説明会の後、もちろん年越しのレッスンもさせていただくことになっています。
新しい生徒さん、声に出会うのはとても、とても楽しみです。
受験講習会と言うのは、ある意味で、「出会いの場」だと思っています。ここで素敵な出会いが生まれ、それが講習のレッスンの中で育っていくと、さらに素敵なコラボレーションにつながっていきます。すなわち本校のカリキュラムの中での、本格的な学びです。
われわれは、独創性、個性を重んじています。
「それは音楽高校だから、音楽大学の付属機関だから」と思われるかもしれませんがそれだからだけではありません。これからの時代を生き抜く上で、これは人生のクオリティを上げていくキーワードの一つになります。
皆さんもご存じのように、コロナウィルスの流行の中、我々は非常に難しい選択を迫られています。我々も万全の衛生対策を持って、保護者の皆さんに安心してお子さんを学校に送り出していただけるように、常に対策をアップデートし続けています。昨日も会議で、今日の講習の衛生対策については、慎重な討議が為されました。
こう言う組織での選択もそうですが、生活の中での選択を、皆さん、毎日迫られ続けていると思います。今日、予定通りに出かけるべきか、この人と会って大丈夫だろうか。衛生対策だけでも判断することが沢山あります。
コロナを取り巻く厳しい状況はすぐには去りません。また感染症もこれが最後ではないと言われています。毎日、毎日、選択、判断をしなければなりません
つまりこれからの若者は我々大人時代とは違う、スピード、未知の出来事に日常的に立ち向かっていかねばなりません。コロナだけでなく、予想しなかった、「想定外」の出来事が次から次と起こります。スピード、未知の出来事の到来は頻度を増し、適切で素早い判断力へのニーズは今までになく高まっています。
そういう時に大切なのは判断力、直感力です。
そして自分の軸、多様性も大きな力になります。本校ではこれらを教育のコンセプトの中心に置いています。
直感を培うのに、芸術ほど、とりわけ音楽ほど役に立つものはありません。時間芸術ですから、常に瞬時に判断下すことを求められます。これを考えて考えて、考え抜いた末の思考による判断とは別の直感力です。直感力は生命力につながっていきます。
また、音楽の訓練を通して、地道な努力を学びます。今季、忍耐力も併せて学ぶ事になります。練習は根気が無くては出来ません。
そして、ここが非常に大切なところなのですが、美しい音楽に触れることで、「美意識」を養います。美意識と言うのは音楽作品の美しさだけを言うのではありません。人間の行動の美しさ、思いやり、道徳、に対する意識。また、未来を考えたときに描く景色の美しさ、それらを愛することを学びます。そして、その愛は自分、自己から生まれ出ており、個性が反映されます。
音楽と言う、絶対的な軸を自分の中に持ち、自分の音楽性や感覚と言う個性・・・これは「癖」も含めてですが・・・を見出し、肯定し、愛するようになる。自己肯定感が弱いと言われる日本人には、非常に大事な部分です。
その上で本校では、多様性を求めます。一歩進んだ英語教育を含んだ国際交流、デジタルトランスフォーメーション、IT技術へのリテラシーなどに触れ、自分の軸に加えて、「多様性」と言う力を身に付けていきます。来年度から、IT関係の教育を強化するべく、カリキュラム検討を行っています。
自分の軸と多様性。この激動の世の中を生きていくのに、この2つほど自分を助けるものは他にありません。人生を通してのパートナーとなります。つまり本校での教育は、音楽家としてのステージでのスキルを身に付けるためだけのものでは無く、未来を生きて行くための、パートナーと出逢う場所なのです。
皆さんの、また皆さんのお子さんのより良い未来の為、ひいてはこの国の明るい未来のために、我々と一緒に学びましょう。ご清聴ありがとうございました。