環境を守る目標を達成しないと金利が上がる「サステナビリティー・リンク・ボンド」
チャーリーです。
1年間、ビジネス誌「THE21」で連載した内容を特別に公開許可いただいたので、1つずつ記事にすることにしました。
この記事では、環境を守る目標を達成しないと金利が上がる社債「サステナビリティー・リンク・ボンド」を図解と文章で紹介します。
サステナビリティー・リンク・ボンド
環境目標に連動する「社債」の一種だが……
2020年10月、大手不動産会社のヒューリックが、日本で初めてサステナビリティー・リンク・ボンド(SLB)を発行しました。
SLBは社債の一種で、近年、注目が高まっています。
企業が資金調達をする方法には、主に、お金を借りる「デットファイナンス」と株式を発行する「エクイティファイナンス」があります。そして前者には、金融機関など、特定の相手から借りる方法の他に、広く投資家たちから借りる方法もあります。その際には、企業が社債という債券を発行し、投資家がそれを買うという形を取ります。
借りたお金は返さなければなりませんから、社債には発行年限が決められていて、その期限が来たらお金を返します。また、社債を持っている間は、利子が企業から支払われます。
SLBが普通の社債と違うのは、発行した企業が環境目標を約束し、それが達成できないと、投資家に支払う利子の金利が上がる点です。
企業にとっては、SLBを発行すると、環境目標を達成しようというインセンティブが働くわけです。
今回、ヒューリックが発行したSLBの発行額は100億円で、発行年限は10年、金利は0.44%。目標は、25年までに、「本社やグループ会社が入るビルの使用電力を100%再生可能エネルギーにすること」と「銀座8丁目開発計画における国内初の耐火木造12階建て商業施設の竣工」です。達成できなかった場合は、金利が0.1%上がります。
「ESGへの配慮」を投資家に示せるメリット
企業の長期的な成長のためにはESG(環境・社会・ガバナンス)が重要だと考え、ESGに対して積極的な取り組みをしている企業に投資する傾向が世界的に広まっています。SLBを発行することには、ESGに配慮している姿勢を投資家に見せることができるというメリットがあります。
ヒューリックは、新中長期経営計画の基本戦略の1つとして、「社会と企業の共創・共生を図るサステナビリティーを重視したマネジメントの実践」を掲げています。ESGを意識した事業運営と価値創造による社会課題の解決や、社会価値の創造と企業成長が連動する取り組みも推進しています。SLBの発行は、その一環です。
ESGに対する取り組みは、重視されるようになった一方で、財務情報として数字に表れにくいため、投資判断への反映が難しいという問題もあります。そこで、これを解決するための試みが世界中で行なわれていて、SLBもその一つだと言えるでしょう。
SLBで資金調達をして、そのお金でESGに配慮しながら利益を生み出すことで、投資家たちに評価され、企業価値が上がる。このような良いサイクルを作れる可能性を、SLBは秘めています。
図解:チャーリー
取材執筆:桃山透
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説明は以上です。
こちらの記事は、PHP研究所が発行しているビジネス誌「THE21」で2021年1月号から12月号まで連載していた「図解で深掘り!時事ワード」の内容を掲載したものです。
誌面に掲載するフォーマット上、図解は2枚ずつ掲載しています。
本来は2枚じゃなくもっと枚数をふやして図解すべき内容もあるなと思いつつ、誌面の制限に従い、いったん全て2枚ずつでまとめるフォーマットで揃えています(本記事のみ4枚の図解になっていますが、雑誌には後半2枚しか掲載していません)。
今回、日をあける形で記事の掲載を許可いただいたので、少し時間が経過しているものもありますが、ご了承ください。また、記事中にもし間違いなどありましたら直しますので、教えていただけると嬉しいです。
今回、サステナビリティー・リンク・ボンドを紹介しましたが、今後以下のテーマについても同様に記事にしていきます。
サステナビリティー・リンク・ボンド
TESLAの炭素クレジット
パリ協定
COVAXファシリティ
ロングターム証券取引所
選択的夫婦別姓
規制のサンドボックス
10兆円大学ファンド
インパクト加重会計
オリンピックのビジネスモデル
東証市場再編
なぜこれらのテーマなのか?と聞かれると、その時々で気になっているテーマだったから、ということで選定基準はかなり属人的です。
振り返ってみれば、大きな枠組みの変化や、面白い仕組み、取り上げるべきイシュー、そういったテーマを選んでいた気がします。もともとの連載のリクエストとしては、時事的な話題をなんらか図解して紹介してほしいということだったので、時事的であることだけ縛りがあります。
掲載した記事は以下のマガジンに入れていきますので、今後の記事が気になる方はぜひフォローしてみてください。
以上です。