問われる現代のオリンピックのビジネスモデル
チャーリーです。
1年間、ビジネス誌「THE21」で連載した内容を特別に公開許可いただいたので、1つずつ記事にすることにしました。
この記事では、問われる現代のオリンピックのビジネスモデルについて紹介します。
オリンピックのビジネスモデル
ビジネスモデルが確立された商業主義的なオリンピックに問われる意義
近代オリンピックは1896年のアテネ大会から始まりましたが、商業化したのは1984年夏季のロサンゼルス大会からだと言われています。実業家のピーター・ユベロス氏が大会組織委員長になり、放映権料やスポンサー料、ライセンス料などを上げて、それまで赤字だったオリンピックを黒字に転換させたのです。
権利料が高くなったことは、スポンサーや放送局の意向を強く汲まなければならないという問題を生じさせました。これが商業主義だとされ、オリンピックの意義が問われることにもなりました。
現在のオリンピックのビジネスモデルを図解したものが、上の図です。赤字で記している金額は、今年の東京大会のものです。公式ホームページに掲載されている、2020年12月22日発表の「組織委員会予算V5(バージョン5)」を参照しました。
これによると、東京大会の組織委員会の収入は7,210億円で、支出も同額となっています。
ただ、ほとんどの競技が無観客で実施されることが決まる前の予算なので、収入にはチケット収入が900億円含まれています。
また、収入のうち、850億円が国際オリンピック委員会(IOC)の負担金です。
東京オリンピックは誰が負担し、何にお金が使われているのか?
今年の東京オリンピックの開催については、「コロナ対策にお金が必要なのに、オリンピックにお金をかけていいのか」という批判もありました。
東京大会の公式ホームページには、国の負担は2,210億円、東京都の負担は7,020億円とも記載されています。ということは、組織委員会・国・都の合計の支出は1兆6,440億円ということになります。
同ホームページには、組織委員会・国・都が負担するお金の使い道についても書かれています。それを図解したものが、下の図です。
まず、仮設ではない、恒久施設となる会場関係に3,460億円を使っています。これは、組織委員会ではなく、都と国の負担です。オリンピックのあとも資産として残るからです。ただ、これまでの大会を見ると、あまり利用されなくなり、過剰な施設として負担だけが開催都市にのしかかっている例が珍しくありません。
新型コロナ感染症対策にも、国と都が計960億円を負担しています。
東京オリンピックの当初の予算は約7,000億円でした。1兆6,440億円の支出ということは、その倍以上になっているわけですが、これまでの大会でも、同じように予算が雪だるま式に膨れ上がっています。最高額は2014年冬季のソチ大会の5兆円以上でした。
ちなみに、国の2021年度予算には、新型コロナ感染症対策のための予備費が5兆円計上されています。これはあくまで2021年度のため一部の金額ですが、こうした他の予算と比較することを通じて、東京オリンピックの予算は小さいと捉えるか、やはり使うべきではないお金だったと考えるか。いずれにせよ、議論をするには、どのくらいの金額かを知っておくことが不可欠でしょう。
図解:チャーリー
取材執筆:桃山透
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説明は以上です。
こちらの記事は、PHP研究所が発行しているビジネス誌「THE21」で2021年1月号から12月号まで連載していた「図解で深掘り!時事ワード」の内容を掲載したものです。本記事が掲載された号は以下です。
誌面に掲載するフォーマット上、図解は2枚ずつ掲載しています。
本来は2枚じゃなくもっと枚数をふやして図解すべき内容もあるなと思いつつ、誌面の制限に従い、いったん全て2枚ずつでまとめるフォーマットで揃えています。
今回、日をあける形で記事の掲載を許可いただいたので、少し時間が経過しているものもありますが、ご了承ください。また、記事中にもし間違いなどありましたら直しますので、教えていただけると嬉しいです。
これらのテーマについて記事にしていきます。
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なぜこれらのテーマなのか?と聞かれると、その時々で気になっているテーマだったから、ということで選定基準はかなり属人的です。
振り返ってみれば、大きな枠組みの変化や、面白い仕組み、取り上げるべきイシュー、そういったテーマを選んでいた気がします。もともとの連載のリクエストとしては、時事的な話題をなんらか図解して紹介してほしいということだったので、時事的であることだけ縛りがあります。
掲載した記事は以下のマガジンに入れていきますので、今後の記事が気になる方はぜひフォローしてみてください。
以上です。