XR転職
先日、XR転職合同相談会という転職イベントに登壇した。
XR転職合同相談会は、XRに就職したい人と、XR人材を採用したい企業をマッチングのきっかけづくりを目的とした、はいえろさんという方を中心とした有志メンバーによって運営されているイベントだ。2019年から年に一回ほど開催されており、今回で早くも第6回となったようである。XR転職合同相談会の名にふさわしく、バーチャル会場で開催される。一方でYouTube配信もされており、有志のイベントでありつつかなりしっかりと運営がされている。(なんと公式サイトまである。)
このイベントは、XRやメタバースに熱量のある参加者が多く、ambrには非常にありがたい機会だ。これまでの6回のうち、確認してみると4回も参加させていただいている。ここでの登壇をきっかけに入社が決まった社員ももちろんいて、今も大活躍してくれている。なので、今後もこのイベントにはできるかぎり参加したいと考えているし、公式サイトには参加者の声として「代表の方の生の声を聞けたので、その会社の雰囲気を感じることができました!」と書かれているので、登壇の類は苦手ではあるのだが、自分が登壇し続けたいと考えている。
XR転職合同相談会の説明が少し長くなってしまったが、このイベントをきっかけに、XR業界の転職や採用について思ったことをつらつら書いてみる。
まず、いきなりではあるが、XRの採用ポジションは、希望者に対して少ない。
VRChatのユーザーを中心に、VRやメタバースにのめりこみ、それを仕事にもしたいと思う人は少なくない。XR転職合同相談会にきている方もそういう方が非常に多い。
一方で、日本にはまだまだXRで事業に取り組む会社は限られており、さらにいえばそれらはスタートアップであったり、大企業だとしても小さな部署であったりすることが多い。スタートアップは、まだまだ売上も小さく、利益もあったとしても少しか、投資フェーズとして赤字であることが多い。そんな中で採用できるポジションや数には限りがある。特に正社員であれば、一人ひとりの採用が非常に大事だ。もし採用した人が会社にうまくフィットしなければ、少ない利益がさらに減るか赤字が大きくなってしまう。大企業のXR部署はそれはそれで、企業全体としては売上も利益もあったとしても、部署としてまだまだ予算が限られていたり、その企業自体の採用基準やプロセスなどのルールや文化と、XR部署に必要な組織や人材がフィットせず採用が動きづらいということもある。
そんなわけで、日本のXRの採用ポジションは限定的で、XR転職というのは簡単とはいえない現状といっていいだろう。
それはすごく残念なことだとは思う。日本は、XRに熱量が多い人が比較的多い国だと思う。XR転職合同相談会ではそんな人たちにたくさん会える。その度にいつも、自分の会社をもっと成長させてもっと採用ポジションをつくるぞ、業界も盛り上げるぞと思うのだが、まだまだ力及ばずだ。これからも頑張るのでチェックしておいてください。
そう思いつつ、一方でXR市場がまだまだ成長していないことが根本的な問題だとは思っている。
自分がXR業界に参入したのは、会社を起業した2018年だ。スマートフォンというデバイスシフトの時代を、高校生から大学生として指をくわえてみていた自分は、XRデバイスがスマホの次でありここから急速に広がっていくはずだと考え、会社を創業した。それからあっという間に6年が経ちどうなったかというと、XRデバイスはまだまだ全然普及していないと言ってよいだろう。もちろん、2018年に比べるとデバイスのスペックも出荷台数もソフトもゲームも増えたけど、XRで一定規模の事業をつくるためには市場が小さすぎる。
実際に、2019年以降、日本にVCから資金調達するようなXRのスタートアップというのはほとんど生まれていない。(という認識だけど間違っていたらごめんなさい。)また、2018年以前にあったXRスタートアップも、XRというよりはスマートフォンやPC向けをメインに軸足を変えつつある企業が少なくない。cluster, STYLYもスマホのユーザーが大半だと思うし、VARKはVRライブアプリの運営を終了した。もちろん今でもVRゲーム領域でMyDearestやThirdverse、UNIVRSがいるし、MESONやGraffityは今年に入ってからAppleVisionPro/Spatial Computing領域に注力しているようだが、どこも2018年以前の創業であり、またどこも数十人規模の会社で、年間の採用数は限られる。XRの採用ポジションが増えるには、XR市場自体がどんどんと成長し、企業もどんどん成長し、参入する企業もどんどん増えていく必要があるが、現状はそうなっていない。
その中で、XR業界に転職したい人がとるべきアクションは何か。ひとつはシンプルに、限られた採用ポジションにチャレンジすることだ。限られているといっても別に年間で数人のみというレベルではない。上にあげたきたような会社以外にもまだ少なくとも10社以上のXR企業はあるし、それぞれ年間数人から数十人は採用しているはずだ。もしあなたがXR転職に本気なら、まずはチャレンジすることをおすすめしたい。
自分がXR合同転職会やカジュアル面談などでよく聞かれる質問が、「XR業界に転職したいが、経験がまだ足りないと思うので、一度ほかの業界に転職して経験を積みたい。どんな業界や経験が良いと思うか」というものだ。その考え自体はわからなくもないが、そもそも「経験がまだ足りないと思う」の部分はどの程度検証済みなのかいつも気になる。そう勝手に思っているだけなのか、知り合いかエージェントか誰かに言われたのか、すでに1社断られたのか、もう10社以上断られたのか。採用側の考えとしてお伝えすると、採用というのは経験やスキルだけで判断するものではない。会社のカルチャーとフィットするかがまず一番大事だし、さらにいえば採用中のポジションとフィットするかや、その時の採用の緊急度やほか候補者との兼ね合いもある。そして、それらはタイミングによって変化する。転職/採用はタイミングといわれることがあるが、その通りなのだ。なので、XR転職を本気で目指している人は、ぜひ一度気になるXR企業をすべてリスト化して、応募してみてほしい。
ただしその時の注意点として、各採用ポジションにおける、募集要項に書かれている「必須要件」に明確に当てはまらない場合は応募は控えた方が良いだろう。一方で歓迎要件に当てはまらないというのは、気にせず応募してみるのが良いだろう。応募してみない限り、XR転職は始まらないのだから。ちなみに、転職エージェントに依頼するという手もあるが注意がある。スタートアップにとって、採用時に転職エージェントに支払う採用候補者の年間給料の30~35%というのは非常に高額ということだ泣
長くなってしまったが、一つ目がXR企業に最初から転職することだとして、二つ目はいったんXR企業ではないが、いずれXR企業に転職するためのスキルや経験を積めそうな企業に転職する方法だろう。これは上に書いた通り、最初から取る選択としてはおすすめしない。しかし、すでに行きたいXR企業すべてに断られてしまった、そんな時はこの選択肢はもっともだろう。では、この選択肢をとるとして、どんな企業や業界がおすすめか。これは実は難しい。XR企業の中でもどんな企業にいきたいかや、あなたの職種によって異なるからだ。安易に答えると、いわゆるVRメタバースみたいなものに関わりたいのであれば、ゲーム、特に3Dゲーム業界の経験は役に立つことが多いと思う。弊社もこれまでにもゲーム業界の出身者は少なくない。一方で、意外と業界を問わずいろんな人を採用している。これはほかの会社も同じだと思う。他の観点として、カルチャーフィット以外に採用で大事とよく言われるのはハイパフォーマー(仕事で高いパフォーマンスが出せる人)かという点だ。なので、自分が高いパフォーマンスを出せそうな会社に転職し、そこでしっかりと成果を残すという戦略も重要視してもよいかもしれない。そう考えると、あなたならではの、転職先の職種や働き方、文化、同僚に対する基準が見えてくるかもしれない。
さて、XR転職のための二つのアプローチについて話してきたが、実は三つ目があることに気づいた。XRの会社を、自分で起業してしまうことだ。VRChatのクリエイターがチームで起業する事例もこの数年でいくつか出てきている。日本には会社が100万社以上あるといわれており、起業というのは特別なことでもめずらしいことでもない。XRの会社がまだまだ日本に少ないからこそチャンスがあるともいえる。もしあなたが本当にXRに熱意があり、また可能性があると考えているならば、起業という手もおすすめするし、まだまだ数少ないXR企業としてぜひ歓迎したい。もし起業した際には良かったらXにDMくださいぜひお話ししましょう。
最後に、ambrは現在、複数のポジションで採用中です。
ぜひご応募いただけたら嬉しいです。