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モメンタム

"Startup survives on momentum"
「スタートアップはモメンタムによって生き延びる」

Sam Altman

スタートアップ業界の人であれば一度は聞いたことがある言葉だろう。
OpenAIのCEOでもあるSam Altmanの言葉だ。
Sam AltmanはOpenAIで知った方も多いと思うが、もともとはY Combinatorと呼ばれるアメリカでも最も有名なシードVC/インキュベーターの一つで、代表を務めていた人物である。上記は、彼がYコン時代に残した言葉だ。

これはとても偉大な言葉だと思う。自分が経営するambrはこの言葉に助けられたといっても過言ではない。今日はその話をしたい。

ちょうど1年前の2023年9月、ambrはしんどい状況にいた。そこからさらに少し前、コロナ禍とfacebookのMetaへの社名変更をきっかけに、メタバースブームの真っただ中であった2021年。その恩恵を受ける形で、ambrのメタバース開発事業は順調に成長し、シリーズAで10.2億円の資金調達を実施、まだまだ市場とニーズが伸びていくと思われた一方で、社内のリソースが全然追い付いていない状況で、焦るように組織を急拡大していった。

しかし、メタバースブームはやはりブームでしかなかった。様々な企業が「メタバース」をこぞって開発したが、結果は惨敗。そのほとんどがユーザーに見向きもされず、もちろん収益を生むなどもってのほかであった。その状況で2023年に突如現れたChatGPT。メタバースブームはほんの一瞬でAIブームへとシフトした。

もちろん当事者として、当時のメタバースがブームでしかないことはわかっていた。なぜなら、ほとんど誰も結果を残せていなかったからだ。過疎バースと呼ばれるむなしい仮想空間がどんどんと生まれていた。自分たちのスタンスとしては、そんな状況の中で、結果が出せる仮想空間を自分たちがつくって成功事例を生むんだと考えていた。だから、自分たちが可能性があると思ったエンタメやIPだけに絞って仕事を受け、クリエイティブとユーザー体験を大事にチャレンジした。実際に東京ゲームショウVRは、延来場者は40万人を超え、今年で4年連続で開催されるイベントになっている。ほかにもマジックザギャザリングバーチャルアート展は、ファンの方々にとって非常に楽しんでもらえるイベントになった(公表はしていないが驚くべき平均プレイ時間が物語っている)。
ただし、「クリエイティブ」は高くつく。僕らはBtoB事業でありながらクリエイティブにこだわりすぎるあまり、プロジェクトをやるたびに赤字を出していた。それはスタートアップだから、投資フェーズだからという言い訳でごまかしていた。

そんな中で突然訪れたメタバースブームの終焉。ambrに残ったのは、大きな赤字と、急拡大しすぎた組織であった。そういう状況化で、まさに1年前は難しい局面だったし、会社全体としても当然元気がなかった。もちろん経営者として、どうしようかと悩んだ。その時に出会ったのが、冒頭に書いたSam Altmanの言葉、"Startup survives on momentum"「スタートアップはモメンタムによって生き延びる」だ。

モメンタムとは何か。そのまま訳すと「勢い」や「はずみ」を意味するが、Sam Altmanの言うモメンタムについて記事を書かれているTaka Umadaさんの記事の中では「きっと次のチャレンジでも勝てるという思いであり、それが更なる大きな挑戦と成長を促す」と説明されている。スタートアップにおいて挑戦は命だ。既存の延長戦上や常識の範囲内に急成長はありえない。非連続な変化をいかに起こしていくかがすべて。そんな挑戦を生み出していく活力こそがモメンタムだ。だからこそ、モメンタムを失ったスタートアップは死ぬ。挑戦なしに成長はありえない。"Startup survives on momentum"という言葉は非常に的を得た表現だと思う。

では、そんなモメンタムをつくるには何をすべきか。再度Taka Umedaさんの記事の引用で恐縮だが、下記の通りだ。

まずモメンタムは小さな勝利の積み重ねから生まれます。自分たちの進捗を社内や社外に示し続けることがモメンタムの醸成につながる、というのが Sam の弁です。

スタートアップはモメンタムによって生き延びる

スタートアップは、当然大きな挑戦に取り組む。壮大なビジョンや、大きな売上収益目標を掲る。それは非常に大事なことだ。一方で、挑戦が大きければ大きいほどそれを達成するには時間がかかる。また、挫折や困難が付きまとう。そんな中でも組織の勢いを失わないためには。それはスモールウィンを積み重ね続けることだ。未来の大きな目標に向かって、この1日の目標の達成、1週間の達成、1か月の達成。目標を細分化し、それを達成し続けるのだ。そして、ただただ目標を達成し続けるだけでは不十分で、その目標達成を社内で賞賛することが大事だ。まだまだ会社のビジョンや将来の目標を達成するには遠いかもしれない。でも今この瞬間達成できたことを称賛しあう。その積み重ねの上にしか、将来の目標達成はないはずだ。

一方で、毎回目標が達成できるわけではない。特に急成長を目指すには強気の目標が必要で、目標が強気であればあるほど、達成できないことも増えるだろう。その時は、たとえ目標が達成できていなくても、何かしら生まれた成果を確認し合い称え合うのが良いと思う。何かに失敗した場合は、失敗による学びを確認しあうのが良いと思う。

そうしたスモールウィンの共有を積み重ね続ける。そうすることでモメンタムは生まれる。モメンタムが生まれることで、スタートアップはさらなる挑戦を行い、その挑戦がスタートアップに命を与え続ける。

モメンタムについて長々と説明してきたが、この1年、ambrはモメンタムという言葉を大事にしてきた、というか縋ってきた。月1の全社会の度に、モメンタムをつくろうと社内に呼び掛けてきた。株主の定例でも、会社としては厳しい状況ではあるが、だからこそ、モメンタムを一緒につくっていきたいという話をさせていただいた。

そして今、ようやくモメンタムが生まれてきたと思っている。まだまだ大赤字の会社だ。しかし、最初は小さかった目標や成果は毎月大きくなり、全社会の活気は会を経るごとに増している。もちろんまだまだ課題ばかりだ。2か月前にリリースしたgoghというtoCアプリは、DL数自体はすごい勢いで伸びているものの、いまだ収益はゼロだ。ちょうど今開催している東京ゲームショウデジタルワールド(旧東京ゲームショウVR)をはじめとするBtoB事業においても、ブームの時とは変わって地に足がついた相談やプロジェクトが増えてきてはいるものの、XRもメタバースもまだまだ民主化していない中でどうなるかわからない。最近事業として本格的に取り組みはじめたRoblox事業においても、まだまだ結果は出せていない状況だ。

そんな中でも、少なくとも多くの挑戦ができている。上にあげたこと以外にも多くのことを仕込み始めている。しかもそれが、自分からだけではなく、チームのメンバーからの提案で動き始めている。それはまさにモメンタムがあるからこそ起こっている状況だ。


"Startup survives on momentum"
「スタートアップはモメンタムによって生き延びる」

今、苦しんでいるかもしれないスタートアップは、ぜひモメンタムという観点を意識してみてもらえると良いかもしれない。

さらにいえば、日本のスタートアップ業界ひいては日本全体が、さらにモメンタムを持ち、生き延びていくだけではなく、大きく成長していけたらよいなと思う。

上でも引用しているが、Taka Umadaさんの下記の記事はこれまで何度も読ませていただいた。本当にありがとうございます。


また、ambrでは採用強化中です。
一緒にこのモメンタムをさらに加速しながら、さらなる挑戦ができればうれしいです。