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【READY STEADY TOKYO日本新記録の期待②女子1500m 田中希実】

昨年のGGPで新国立競技場日本新第1号となった田中
9連戦目での2年連続日本記録更新、さらには標準記録に挑戦

 田中希実(豊田自動織機TC)が2度目の国立競技場でも日本新記録を狙う。
 東京五輪テスト大会として5月9日にREADY STEADY TOKYO陸上競技が、五輪本番会場である国立競技場で行われる。なかでもワールド・アスレティクス・コンチネンタル・ツアーとして行われる男子11種目、女子6種目は参加選手のレベルが高く、日本記録更新や五輪参加標準記録突破が予想されている。今季の実績などから、世界でも通用する記録、日本新記録が期待できる選手たちを紹介していく。

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●10連戦の9連戦目で日本新を狙う

 田中希実の昨年の女子1500m日本新は、8月のゴールデングランプリ(GGP)でマークした4分05秒27。新装なった国立競技場で誕生した最初の日本記録だった。
 その後5000mの日本代表を、狙い通りに12月の日本選手権に優勝して内定させた。五輪代表権を得た田中と父親である田中健智コーチは、独自のスタイルで東京五輪に突き進んでいる。
 昨年のGGPは日本記録に強い気持ちで臨んだが、今年は少し幅を持たせている。
「目標は自分を超えること。日本記録に届けばいいな、と思っています。仮に届かなくても、そこを目指して日本記録に近い走りができれば、今後に生きるはずです」(田中コーチ)
 昨年との大きな違いは“国立競技場の1500m”までの試合数である。
 昨年も7月に、15日間で5連戦を行い、その間に3000mの日本記録も更新した。しかしGGP前の1カ月ちょっとは、試合には出ず練習で調整した。
 それに対して今年は3月21日にスタートさせ、5月15日まで続ける10連戦の9試合目として出場する。ここまでの連戦となれば記録や勝負が最大目的ではなく、長期スパンでの取り組みをしていると考えるのが普通だろう。連戦の目的は6月の日本選手権1500mでこの種目初の五輪代表権を取ることと、代表に決まっている東京五輪5000mで世界と戦うこと、そのための力をつけることだ。
 前半を楽に入ったり、ペースに変化をつけたり、一定のペースで押し切ったり、ラストのスピードを上げて勝ちきったり。レース毎にテーマを持って臨んでいる。

●兵庫RC、織田記念は不満の残る走りも、静岡国際で納得の走り

 直近の3試合は4月25日の兵庫リレーカーニバル1500m(4分10秒14で優勝)、同29日の織田記念5000m(15分11秒82で3位。日本人トップ)、5月3日の静岡国際800 m(2分03秒19で2位)だった。
 兵庫は日本記録に近いところも目指せる状態だったが、風が強く、予定されていたペースメーカーもつかなくなった。田中は「勝ちきることにテーマを変更して臨み、勝つことはできましたが、ラストが上がりきらなかった」と反省点を強調した。
 織田記念は「まったく5000mの練習をしないなかで、距離にどう対応できるか」(田中コーチ)を見たという。そのなかでもラスト2周(800 m)のペースアップをテーマに臨んだ。4200mからの1周を65秒に上げられたが、最後の1周は71秒かかった。残り200 mで完全に脚が止まり、外国勢2人に抜き去られた。
「予定よりもスローペースになって余裕があったことと、1500mなど短い距離を走ってきたので、ポーンと体が反応してしまいました。もう少し落ち着いてペースを上げればよかったのですが、走り急ぎすぎましたね」(田中コーチ)
 しかし静岡国際では、その反省が生かされた。1周目を61秒台後半で通過し、2周目もほぼ同じタイムでまとめた。田中本人は「1周目の通過で余裕があったのに囲まれてしまって、2周目のバックストレートで頑張って先頭に追いつかないといけなかった」と反省点を強調した。だが田中コーチは「後半失速しない2周の走り方ができた」と評価した。
 2周(800 m)という距離を意識して色々と試しているのは、5000mで世界と戦うときに重要になるからだ。田中コーチは「世界のトップ選手の最後1周は60秒を切ってきます。そこでは太刀打ちできないので、残り2周で大逃げを打って、どこまで粘れるか、という戦い方になる」とイメージしている。

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●標準記録突破の可能性を検証すると

 READY STEADY TOKYO1500m出場も、10連戦と同じように1500mの代表権を取ることと、5000mで世界と戦うための力を付けること、その2つの目的がある。そのために、自身の持つ日本記録更新を目標としている。
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▼ゴールデングランプリ2020
距離 通過 400m毎
400m 1分06秒42 66秒42
800m 2分11秒91 65秒49
1100m 3分02秒37
1200m 3分17秒89 65秒98
1500m 4分05秒27 47秒38
※1200mまでは速報タイマー表示
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 昨年は上記の通過タイムとスプリットだった。実際のペースは田中が走り出してから自身の感覚で決めるが、2日前の段階では800 mを2分10秒で入るプランも選択肢の1つになっている。
「800 m以降は一度休むか、そのままキープするかはわかりませんが、もう1回上げきれるイメージで走れたら昨年のGGPを超えられるかな、と思っています」(田中コーチ)
 田中コーチは少しでも自己記録を超えられればいい、という考えだが、1秒更新できれば五輪参加標準記録の4分04秒20にも手が届く。
 静岡国際の800 m2分03秒19は、昨年7月の5連戦中に出した自己記録を1秒47更新した。田中コーチが示した2分10秒は、昨年の日本記録より1秒以上速い800 m通過になるが、対応するスピードはついている。
 昨年と同じ後半のタイムなら、日本記録の1秒更新が実現する。机上の計算通りに走れるわけではないが、連戦中に研いたスピードや、最後の2周を繰り返し試した成果が1500mに結びつけば、2度目の国立競技場での日本記録、さらには標準記録突破の可能性もある。

TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト

9日(日)よる6時30分 TBS系列生中継
「READY STEADY TOKYO 陸上」
東京2020オリンピックテスト大会

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