元旦決戦かく戦う。有力チーム監督コメント前編:Honda、SUBARU、旭化成、三菱重工【ニューイヤー駅伝展望コラム】
有力チーム監督の思いはいかに?
23年最初の全国一決定戦であるニューイヤー駅伝は、前回優勝のHonda、2年前優勝の富士通、戦力充実が著しいトヨタ自動車、九州大会優勝の黒崎播磨が4強と言われている。そこに大迫傑(Nike・31)が“参画”するGMOインターネットグループも加わる勢いだ。
前回優勝のHondaは世界陸上オレゴン10000m代表だった伊藤達彦(24)が外れ、エース区間の4区は小山直城(26)が走る。オレゴン3000m障害代表だった青木涼真(25)は3年連続5区に入った。
前回2位のSUBARUは前回4区の清水歓太(26)が5区に回ったが、好調の照井明人(28)が4区に入った。1~3区は前回と同じメンバーだ。
前回3位の旭化成は、チームエントリーの段階で10000m日本記録保持者の相澤晃(25)が外れていたのに加え、10000mで代表経験のある鎧坂哲哉(32)も補欠に。しかし4区の市田孝(30)、5区の小野知大(23)ら、日本人選手全員が過去に経験した区間を走るのはプラス材料だ。
前回4位の三菱重工は前回、3~5区でトップを走った。そのときと同じ配置で3区の林田洋翔(21)、4区の井上大仁(29)、5区の山下一貴(25)という顔ぶれに。初めて6区を走る定方俊樹(30)で勝負をかける。
上記4チーム監督のコメントを大会直前の取材から、想定しているレース展開などを中心に紹介する。
前回1位・Honda
小川智監督
「川瀬は3区で、小山は4区で起用するつもりでした。理想は去年みたいに6区でトップに立つ展開」
1区の小袖英人(24)で良い位置を占めたいですね。そこが1つポイントです。3区の川瀬翔矢(24)は、伊藤がいなくなったから入れたわけではなく、3区で起用しようと思っていました。彼の一番得意なコースですし、去年より明らかに強くなっていますから。強い選手が集まっている区間ですが、胸を借りるつもりで行ってほしい。
小山には春先から4区で行くよ、という話をしていて、本人もその気でやっていました。伊藤に比べれば名前的なインパクトはないかもしれませんが、他チームのエースと遜色なく走れると思っています。
5、6区は昨年と同じで、理想は去年みたいに6区でトップに立つ展開になれば、と思います。なかなかそううまくはいかないでしょう(苦笑)。7区の木村慎(28)は今、非常に調子が良くて、12月頭に甲佐10マイルを走ってからさらに上がっている。去年区間賞を取った土方英和(25。現旭化成)と遜色ない。
去年はたまたま勝てただけでした。自分たちは上積みができているんですけど、相手があることです。チャレンジャーの気持ちで頑張ります。
前回2位・SUBARU
奥谷亘監督
「8位入賞のためには5区で、(9位以下のチームが)後ろから追いにくい位置を確保したい」
4区に起用した照井は、本人も走りたくて仕方がなかった区間です。満を持しての登場で、調子も良いですね。
理想は1~3区が(先頭集団かそれに近い位置で)しっかりと流れたら、4区の照井も上位集団で粘ることができます。そうなれば5区の清水でもう1回上がっていける。8位入賞のためには5区で、(9位以下のチームが)後ろから追いにくい位置を確保したいです。
6区は新人の長田駿佑(23)ですが、大学3年時の全日本大学駅伝6区(12.8km)で区間賞を取っていますし、意外性がある選手です。ずっと何をアピールして、どうメンバーに入るのかを考えるように言ってきました。秋になって「6区ですかね」という言葉が本人から出るようになりましたね。
7区の口町亮(28)は向かい風に強い。スピードがないので必然的に7区になりましたが、本人は区間3位だった去年より良い、と言っています。
去年も6、7区は不安がなかったわけではありませんが、風に強い選手を置きました。5区までが良い流れになり、6、7区は力以上に走ってくれましたが、今年は去年より力があるかもしれません。
目標は入賞ですが決して8位でいいという話ではなく、地元企業として1つでも上の順位を狙っていきます。それだけの準備はしてきました。
前回3位・旭化成
西村功監督
「目標は優勝です。3区、4区のどの辺で流れをつかむかが一番のポイントになる」
4区の市田孝、5区の小野、6区の市田宏(30)の3人は、過去にその区間で区間賞を取った選手です。3区の大六野秀畝(30)を4区に起用する案もありましたが、10月のマラソンを走った後、故障して思うような練習ができない期間が若干あった。悩みましたが、市田孝が練習できていたので任せられると判断しました。
目標は優勝です。前半しっかりと行ってくれたら、後半でなんとかなる。しかし(インターナショナル区間の)2区で先行されることは想定しています。3区、4区のどの辺で流れをつかむかが一番のポイントになる。
小野は前回の区間賞選手。ハムストリングを痛めていましたが、ぎりぎりで間に合わせてくれて、今はゾーンに入っています。移籍してきた土方英和(25)も自然と、旭化成の練習の流れに入ってきました。
来年度も良い新人が入ってきます。若手がしっかり育ってチームが回転していけば、新しい旭化成として優勝していけます。
前回4位・三菱重工
黒木純監督
「3区の林田で先頭が見えるところにいてくれたらベスト。定方を勝負どころの6区に起用できました」
優勝を目指す陣容になんとか間に合いました。1区の的野遼大(30)は今年まったく良くありませんでしたが、キャプテンの責任感で仕上げてきました。よく練習できています。2区のキプラガット(20)は、スピードを生かした走りをしてくれたら。
3区の林田が九州予選はダメでした。やらなきゃいけない思いが強すぎたのだと思います。練習では元気です。3区で先頭が見えるところにいてくれたらベストですね。
4区の井上は、ベルリン・マラソンは腹痛を起こし、駅伝の九州予選は集中できていませんでした。今はいつも通り、マラソン練習に入ればリズムが上がってきそうな状態になっています。
5区の山下は右脚大腿部の疲労骨折で、10月のシカゴ・マラソンに出られませんでした。2カ月リハビリにかかりましたが、12月に入って昨年並みの練習ができるようになっています。勝負センスがありますね。
定方の6区は初めてですが、アンカーに吉田裕晟(27)を置くことができたので、定方を勝負どころに起用できました。そこで勝負したいですね。7区の吉田も成長して、調子が良いです。
九州予選が6位とダメで、危機感を持つことができました。(19年の)九州予選が5位だったときは、(20年の)ニューイヤー駅伝も17位と大敗しました。あのときよりもチームとして成長していることは感じられます。選手たちの自覚がしっかりしているので、優勝は狙っていきます。
TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト