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【READY STEADY TOKYO日本新記録の期待⑤女子5000m 新谷仁美】

歴史的な独走劇で10000m五輪代表を決めた新谷
今回はラストのスパート力で日本新記録を狙う

 東京五輪のメダル候補がREADY STEADY TOKYO(5月9日@国立競技場)に登場する。昨年12月に女子10000m代表入りを決めた新谷仁美(積水化学)が、今大会では5000mにエントリーした。今月3日に10000m代表入りを決めたばかりの廣中璃梨佳(JP日本郵政グループ)らと対決する。
 READY STEADY TOKYOは東京五輪テストイベントとして実施される。日本記録更新や五輪参加標準記録突破を期待できる選手たちを、TBSのLIVE配信で自宅から応援できる大会だ。

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●前日会見で日本記録更新を明言

 前日会見で新谷仁美が、16年間破られていない日本記録(14分53秒22・福士加代子=ワコール)の更新が目標と明言した。
「私たちアスリートは試合の都度、結果を出すことが大前提です。明日は日本記録を意識して走ります。外国人選手も数名出場しますし、廣中さんや他の日本人選手にラストで勝てるよう、勝負も意識して走ります」
 新谷は昨年9月の全日本実業団陸上でも、廣中と2人で先頭を引っ張り合い、14分55秒83の日本歴代2位をマークした(廣中が14分59秒37の日本歴代3位)。そのときの1周(400 m)毎の通過とスプリットタイムは以下の通りだった。
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▼女子5000mの通過タイムとペース変化
通過(※) 400m毎 1000m毎 
400m 1分12秒8 72秒8
800m 2分26秒6 73秒8       700m付近で廣中が先頭に
1000m 3分02秒5     3分02秒5
1200m 3分38秒2 71秒6
1600m 4分49秒6 71秒4
2000m 6分01秒3 71秒7 2分58秒8
2400m 7分13秒8 72秒5  2400m過ぎに新谷がトップに
2800m 8分24秒8 71秒0
3000m 9分00秒9     2分59秒6
3200m 9分37秒0 72秒2
3600m 10分49秒0 72秒0
4000m 12分01秒3 72秒3 3分00秒4
4400m 13分13秒3 72秒0
4600m 13分49秒0   4700mでムワンギがスパート
4800m 14分22秒9 69秒6
5000m 14分55秒83 66秒8 2分54秒5
※日本人の先頭選手を筆者が計測
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 新谷は会見で、日本記録を狙うためのペースにも言及した。
「日本記録を出すには70秒、71秒で押して行くことと、いつも課題ではあるのですが、ラストで勝ちたいと思っています。全日本実業団陸上はラストで外国人選手に負けてしまいました。ありがたいことに明日も外国人選手が出場してくれます。ラスト1周を意識して勝ちにいきます」
 昨年12月の日本選手権10000mでは、3位以下全員を周回遅れにする独走劇で、30分20秒44の日本新をマークした。昨シーズンの世界2位、17年以降の4年間でも世界3番目の記録である。
 それだけの記録を独走で出した選手が、READY STEADY TOKYOではラスト勝負もテーマとして臨む。

●今大会唯一の東京五輪日本代表同士の対決

 廣中璃梨佳が、新谷に対してどんな戦いを挑むのか。廣中は5月3日の日本選手権10000mに31分11秒75で優勝し、東京五輪代表に内定した。代表同士の対決は女子5000mだけである。
 新谷が昨年12月の日本選手権10000mで独走したときは、70秒台、71秒台の周回が何度もあった。5000m通過は15分07秒で、廣中の5000mの自己記録と8秒も違わない。新谷がそのときと似た状態なら、廣中でもついて行くのは難しいだろう。
 だが新谷が会見で話した「70秒、71秒台」なら、全日本実業団陸上で廣中も経験済みのタイムである。6日前の疲れが多少あっても食い下がることはできるし、先頭を走ることも予想できる。新谷は駆け引き無用で自分のリズムで走るが、廣中も同じタイプのランナーだ。全日本実業団陸上でも、今回の日本選手権でも前半は廣中が先頭を走った。
 新谷の「ラスト勝負」発言は、外国人選手に勝つことが一番の狙いだが、廣中を振り切れないことも想定してのものだろう。
 廣中も4月の金栗記念10000m(31分30秒03)では、ラスト1周を68秒で走った。以前よりかなり強くなっているが、全日本実業団陸上の新谷は66秒台だった。ラスト1周ではなく、ロングスパートの方が廣中の勝機は大きい。
 廣中に有利な材料は、代表を決めたばかりで勢いがあることと、気持ちが楽になっていることだ。レース中盤か残り2周以上を残すタイミングで、思い切ったスパートを仕掛ける可能性はある。

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●練習でもラストが強くなっている新谷

 新谷を指導するTWOLAPS TCの横田真人コーチは、「全日本実業団陸上と同じくらいには仕上がっている」という。その中でも違いは、練習中の「ラストを出し切る練習」のタイムが上がっていることだ。
「400m10本とか、1000m何本というインターバルのあと、500mや600mの距離で変化走をやるのですが、最後の100 mで15秒台というタイムが出ています。新谷のタイムを測ってきた中で、以前は見たことがない数字です。ストレングスコーチを付けて、ウエイトトレーニングをしっかり行う期間を設けた効果が出ているのかもしれません」
 ラストのスパート力は、新谷が世界で戦うために重点を置いている部分ではないと横田コーチはいう。ただ、以前に行っていたメニューと比べれば、「ペース変化を加え、出し切る練習が増えているはず」だという。副次的な効果かもしれないが、新谷のラストは間違いなく強くなっている。
 今回仮に、4000m通過が12分00秒(1周72秒平均)でも、ラスト1000mを2分53秒に上げて日本記録を破る展開も十分ありそうだ。実際、昨年12月の日本選手権5000mは、3000mまでがスローだったとはいえ、優勝した田中希実(豊田自動織機TC)がラスト1000mを2分52秒、2位の廣中が2分53秒で上がっている。
 歴代の日本記録保持者の正確なデータがあるわけではないが、ラストで大きくタイムを稼いで日本記録を更新すれば、これまでの選手と異なるパターンでの日本記録更新になるのではないか。
 新谷は19年世界陸上ドーハ10000mで11位(31分12秒99)となったが、自分だけで考えるやり方ではそれ以上は難しいと感じた。そこから横田コーチや周囲のスタッフを頼るようになり、新しいやり方を身につけた。誰にも相談せず、無理な減量で結果を出した13年世界陸上モスクワ10000mの5位(30分56秒70)を、絶対に超えてみせる。それが生まれ変わった新谷の目指すところだ。
 ラスト勝負で日本記録更新に成功すれば、そこに近づくための新たなアイテムが1つ増えることになる。

TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト

9日(日)よる6時30分 TBS系列生中継
『READY STEADY TOKYO陸上』
東京2020オリンピックテスト大会

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