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【世界陸上オレゴン2022フィールド種目期待のコンビ】

戸邉直人&北口榛花、JAL日本記録保持者対談
第4回 世界陸上オレゴンからパリ五輪に

男子走高跳の戸邉直人(JAL・30)と女子やり投の北口榛花(JAL・24)。フィールド種目の日本記録保持者同士の対談の第4回。パリ五輪に向けての技術的な課題、東京五輪のケガから回復してどんな冬期練習を積んだのか、そして世界陸上オレゴンをどう戦うのか。フィールド種目の盛り上がりが期待できるトークが展開した。

●パリ五輪に向けての課題

――パリ五輪に向けて改善していきたいと考えていることは?
北口 私は東京五輪の前後で考えていることに変わりはなくて、技術的に何かを変えるにしても体力をつけないといけないと思います。技術的なところでは、外国人選手に劣っていると思っていません。チェコ人のコーチに教わっていますし。少し前ですがスティックピクチュアの動画で、世界のトップエイトを均(なら)したものと、私のものを一緒に映したら大差がなかった。ただ、スピードを合わせてしまっていたので、本当のスピードではなかったんです。私はめちゃくちゃ遅いので、動きのスピードを出すためにまず下半身強化が必要だと考えてこれまでやってきました。先ほど言ったように、投げの局面のスピードを上げることにつながる助走を考えて行きます。
戸邉 体力も技術も変えていくと思いますが、劇的に変えるより、微調整をして今よりも良いものを探っていく形で進みたいと思っています。僕はこれまでも助走歩数や腕の使い方(シングルアームかダブルアームか)、踏み切り位置などを何度も変えてきました。自分に何が合っているかを見つけて、最善の技術で世界と戦いたかったからです。東京五輪に向かう段階でそこは固まってきたので、今後はその技術を定着させることがメインになってきます。ただ、これまでの経験で変えることに躊躇いはないので、他の人から見たら大きく変えているように見えるかもしれません。それよりも今後重要になってくるのは、北口も言っていたオリンピックや世界陸上の決勝で、どれだけ力を出せるか、という部分です。調整力の重要性を東京五輪で痛感しました。シーズンを通しての組み立て方を試行錯誤することも必要になりますね。


●3カ月のブランク後のトレーニング

―2人とも東京五輪のケガで冬期練習に入るのが後れたそうですが、どんな冬期練習でしたか。
北口 3カ月間、運動は一切してはいけないほど重いケガでした。2カ月間はウォーキングが中心で、3カ月目でジョギングを始めました。気分転換に家の近くの公園を歩いて、こんな綺麗な風景だったんだ、と気持ちをリフレッシュさせることもできました。おかげで課題だった下半身が強くなりました。この体重でジョギングをすれば負荷は大きいですから。練習らしい練習を始めたのは11月の頭だったと思います。11月に一度チェコに行きましたが、もともと私のチームは、10、11、12月とやり投に特化しない基本トレーニングが中心ですから合流できました。ただ、東京で1人でやろうとしても、妥協してしまってできないようなメニューなんです。1カ月半いる予定がコロナの感染拡大で予定を早めて帰国しないといけませんでしたが、コーチが私の環境を考慮して、日本にいてもこれならできるだろう、というメニューを作ってくれました。やりを投げ始めたのは1月末くらいからです。2月頭から3月末までチェコで練習して、4月のグランプリから6月の日本選手権までは日本にいます。コーチが木南記念に合わせて来日してくれて、ゴールデングランプリまで見てくれます。日本選手権後にまた向こうに行き、ヨーロッパで試合に出たりチェコでトレーニングをしたりしながら、世界陸上が開催されるオレゴンに入る予定です。
戸邉 僕も北口と似た感じでオリンピックが終わって3カ月間、アキレス腱の痛みで走ったり跳んだりする練習ができませんでした。ジョグを始めたのが9月の第2週で、スプリント練習開始が10月2週目、跳躍練習が11月終わりくらいから。1月30日にチェコ(記録なし)、2月15日にスロヴァキア(2m21)、3月20日にセルビア(世界室内12位。2m15)と室内競技会に出場しましたが、調子が上がってきません。ただ、アジアのライバルであるWoo Sang-Hyeok(韓国)が2度も優勝したのを目の前で見て、かなり刺激をもらいました。1~2月の試合で技術をまとめて、世界室内では2m30を跳びたかったのですが、屋外シーズンが始まる直前からやっと、技術的なことに取り組むことができたという状態です。2m33の世界陸上参加標準記録を跳ぶことが一番の目標ですが、ポイントも考慮して、5試合はしっかり結果を残さないといけません。
――世界陸上オレゴンの目標は?
北口 世界大会はずっとメダル、メダルと、どこか責任感みたいなものを感じてしまっていました。しかし東京五輪が終わって、本当にメダルを目指せるラインにいたのかな、と感じたんです。いきなりメダルを目指すより、入賞を目指すことからスタートすべきなんじゃないかと。前回の世界陸上(19年ドーハ大会)は予選落ちでした。そこから東京五輪は決勝に残るところに来ました。パリ五輪を見据えて、東京五輪の結果も踏まえて、次の世界陸上オレゴンは入賞を目標にします。
戸邉 僕もパリ五輪を一番に考えていることは同じです。その最初の大きなステップが世界陸上オレゴンになります。先ほど話した予選の戦い方をして、決勝でも力を発揮できるかを試すことができる。それができれば決勝で自己記録を更新することを目標にしたい。東京五輪は自己記録の2m35でメダルに届くと思っていましたが、メダルラインが2m37でした。オレゴンでは自己記録を更新してメダル獲得を目標にしていきます。

TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト

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