世界陸上派遣設定記録の2時間07分39秒突破が焦点か2時間6分台の小椋、7分台3回の聞谷、上り調子の丸山らが優勝候補【別大マラソン2023プレビュー①
第71回別府大分毎日マラソン(以下別大マラソン)が2月5日、大分市高崎山・うみたまご前をスタートし、別府市を折り返してジェイリーススタジアム(大分市営陸上競技場)にフィニッシュする42.195kmのコースで行われる。
前回は西山雄介(トヨタ自動車・28)が2時間07分47秒の初マラソン日本歴代2位(当時)で優勝し、世界陸上オレゴン代表に選ばれた。今年も8月開催の世界陸上ブダペストの選考レースの1つ。2時間07分39秒の派遣設定記録を破れば代表入りの資格を得る(代表決定は全選考競技会終了後)。多くの選手がそのタイムを目標に走ることになりそうだ。
参加選手中ただ1人2時間6分台を持つ小椋裕介(ヤクルト・29)、10000m前日本記録保持者の村山紘太(GMOインターネットグループ・29)らが注目される。
●ハーフマラソン日本記録保持者が復活するか?
小椋裕介が21年びわ湖でマークした2時間06分51秒は、外国勢を含めても今大会参加選手中最高タイムになる。その前年の20年にはハーフマラソン日本記録(1時間00分00秒)をマークし、マラソンでも2時間07分23秒で走った。
だが、その後はトップレベルの記録がない。21年は11月に10000mで28分23秒57を出して復調の兆しを見せたが、1カ月半後のニューイヤー駅伝は3区区間17位。22年8月の北海道マラソンも2時間19分24秒と振るわなかった。10月1日の日体大長距離競技会10000mも30分かかった。大腿部の疲労骨折を2回した影響で、ヤクルトの本田竹春監督は「故障が怖くて、私も抑えめの練習を組んでいた」と言う。
しかし日体大以降は「抑えめでなく、耐える練習」(本田監督)ができるようになり、11月の上尾シティハーフマラソンに1時間01分48秒で優勝。「やはりポテンシャルは高い」と、周囲に再認識させた。
ニューイヤー駅伝は6区で区間6位。向かい風や起伏のあるコースは得意というわけではなかったが、「期待通り。見事に答えてくれた」という走りを見せた。
別大に向けては「自己記録の頃と練習は同じですが、疲労度合いが同じとは限りません。そのあたりがどう出るか。最低限の目標はMGC出場権です」と、本田監督は慎重に言葉を選ぶ。
MGC(今年10月開催のマラソン・グランドチャンピオンシップ。パリ五輪代表3枠のうち2人が決定)の出場権は、日本人3位以内なら2時間10分00秒以内、4~6位なら2時間09分00秒以内、そして順位に関係なく2時間08分00秒以内で獲得できる。
つまり2時間07分39秒を上回れば、着順に関係なくMGC出場権と世界陸上選考資格に手が届く。それができれば小椋が完全復活した、と言える。
●初マラソン勢にも優勝の可能性
小椋以外にも自己記録が2時間8分を切っている選手が多数出場する。自己記録順に紹介すると2時間07分20秒の木村慎(Honda・28)、2時間07分26秒の聞谷賢人(トヨタ紡織・28)、2時間07分36秒の村本一樹(住友電工・30)、2時間07分41秒の市山翼(小森コーポレーション・26)、2時間07分50秒の丸山竜也(トヨタ自動車・28)というメンバーだ。
木村は今年のニューイヤー駅伝7区区間2位で、Hondaの2連勝のテープを切った。聞谷は2時間7分台が3回と、高いレベルで安定している。村本は“長距離どころ”兵庫出身だが、星陵高、兵庫県立大と強豪校ではないチームで育った。市山は昨年の別大は途中棄権に終わり、8月の北海道も19位と良くなかったが、12月の防府で2時間09分43秒の6位と復調した。そして丸山はただ1人、海外レースで自己記録をマークしている。
初マラソン勢では10000m前日本記録保持者の村山、22年東日本実業団駅伝3区区間賞の照井明人(Honda・28)が、トラックや駅伝で高いレベルの実績を持つ。
学生勢では今年の箱根駅伝10区区間賞の西澤侑真(順大4年)、2時間12分41秒(22年別大16位)を持つ横田俊吾(青学大4年)らが先頭集団で走りそうだ。
優勝(日本人1位)候補最有力は3人。ハーフマラソンのスピードが他を引き話している小椋、高いレベルで安定している聞谷、勝負どころのペースアップができる丸山が実績ではリードしている。村山と照井も昨年の西山のように、初マラソン初優勝があるかもしれない。
2時間7分台前半、気象コンディションに恵まれれば2時間6分台の優勝記録を期待したい。
TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト