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【READY STEADY TOKYO日本新記録の期待①】橋岡優輝

助走、踏み切り局面ともレベルアップ
橋岡の日本記録更新を期待できる理由は?

 東京五輪テスト大会として5月9日にREADY STEADY TOKYO陸上競技が、五輪本番会場である国立競技場で行われる。なかでもワールド・アスレティクス・コンチネンタル・ツアーとして行われる男子11種目、女子6種目は参加選手のレベルが高く、日本記録更新や五輪参加標準記録突破が予想されている。今季の実績などから、世界でも通用する記録、日本新記録が期待できる選手たちを紹介していく。
 最初に紹介するのは男子走幅跳の橋岡優輝(富士通)である。今年3月の日本選手権室内は8m19の室内日本新で優勝したが、6回の試技中5回が、踏み切り板を越えるファウルだった。4月29日の織田幹雄記念国際も5回ファウルと踏切板に合わせるのに苦労し、7m97(+1.1)で2位と敗れた。
 その状態でも橋岡の日本記録への期待が上昇している理由とは?

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●NEWS23で日本記録宣言

 5月6日のNEWS23に出演した橋岡は、石井大裕アナウンサーのインタビューで日本記録(8m40)への意欲を語っていた。
「今年中には超えるつもりです」
 それは東京五輪で?
「いえ。その前には超えたいです。噛み合えばイケると思います」
 大会までは特定しなかったが、橋岡にはその手応えがある。日本記録を超えれば昨シーズンの世界リストでは1位相当だ。コロナ禍の影響で世界的にも大会の多くが中止に追い込まれ例年よりレベルは低いが、19年には8m40(+1.5)の日本記録を跳んだ城山正太郎(ゼンリン)がシーズン世界4位だった。
 橋岡も19年に8m32(+1.6。当時日本新、現日本歴代2位)をマークし、その年の世界陸上ドーハ大会では8位に入賞した。男子走幅跳での世界陸上入賞は史上初の快挙だった。昨シーズンも日本インカレ優勝時に8m29をマーク。向かい風0.6mの中で跳んだ記録で、内容的にも高く評価された。
 NEWS23での橋岡は日本記録更新の根拠の1つとして、助走の出だしが良くなっていることを挙げていた。
「走幅跳の助走は1歩目から大きな力を出さないといけないので、昨年の自粛期間中に短距離の世界トップ選手の動画を見て、参考になるものを試してみました」
 森長正樹コーチ(8m25の元日本記録保持者)によれば、簡易測定による織田記念の助走スピードは昨年と同じくらいだった。だが当日の気温が低かったことを考えれば、実質的にはスピードが上がっている。
 日本室内では助走の出だしに下りの傾斜がついていたため、予想以上のスピードが出てファウルを繰り返した。織田記念も速度は昨年と同じでも、何かがレベルアップしていたため、ファウルを繰り返した可能性が高い。
 森長コーチは「踏み切り前の勢いが増している」ことが、踏切板に合わなかった理由だと見ている。速い速度の中で踏み切り動作にもっていくためにやることあるが、「感覚的に忙しい」状態になってしまう。
 結果的に踏切板を越えてファウルにはなったが、「平均で(距離は)8m30は跳んでいたし、2本はそれよりも跳んでいた」という。ファウルはファウルでしかないが、織田記念の橋岡は次につながる要素はしっかりと見せていた。

●「反り跳びだった頃の踏み切りに近づいています」(森長コーチ)

 森長コーチが日本選手権室内のときも、織田記念後も口にしたのが、「反り跳びの頃の踏み切り要素が出てきている」という点。橋岡は高校から大学1年時までは反り跳び(大きく背中を反らせる空中姿勢の跳び方)だったが、2年時のゴールデングランプリからシザース(空中を走るように脚を回転させる空中姿勢の跳び方)に変更した。
「今季の橋岡は反り跳びだった頃の踏み切りに近づいています。シザースになってテンポ良く前に抜けていく感じの踏み切りになっていましたが、今季は踏み切りで大きな力を加えて体を押し出していく。シザースですが、高さも出るようになりつつあります」
 シザースの世界トップレベル選手は、高さも出て脚を大きく回すことができるダイナミックな跳躍をする。その跳躍スタイルに橋岡も近づいているのだ。
「READY STEADY TOKYOでもその跳躍ができれば、本当の力になったと考えて良いと思います。前半3回目までに8m20を跳べれば合格点ですね」
 森長コーチは記録よりも、助走の勢いや踏み切り技術など、やるべきことに集中してほしいと考えているのだろう。記録的な目標は明言しなかったが、前半でやるべきことを確認する中で8m20が跳べれば、後半の3回の試技で世界レベルの大ジャンプが見られるだろう。

TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト

9日(日)よる6時30分 TBS系列生中継
『READY STEADY TOKYO 陸上』
東京2020オリンピックテスト大会

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