日本選手権③2日目速報&3日目展望
男子100mは中盤までの加速を武器に多田が悲願の初優勝
多田と3位の山縣、女子やり投の北口の3人が東京五輪代表内定
●桐生、サニブラウンがまさかの5、6位
日本選手権2日目(6月25日・ヤンマースタジアム長居)は9種目の決勝が行われ、注目の男子100mは多田修平(住友電工)が10秒15(+0.2)で初優勝。標準記録(10秒05)突破と日本選手権3位以内という選考規定を満たし、東京五輪代表に内定した。日本記録保持者の山縣亮太(セイコー)は3位に入り、3大会連続五輪代表を決めた。
▼男子100m決勝(+0.2)
1)10秒15 多田修平(住友電工)
2)10秒19 デーデー・ブルーノ(東海大)
3)10秒27 山縣亮太(セイコー)
4)10秒27 小池祐貴(住友電工)
5)10秒28 桐生祥秀(日本生命)
6)10秒29 サニブラウン(タンブルウィードTC)
7)10秒41 栁田大輝(東京農大二高)
8)10秒42 東田旺洋(栃木スポ協)
3人目の代表はデーデー・ブルーノが7月1日に世界陸連が発表する世界ランキングで出場資格を得られれば、7月2日以降に日本陸連が2次発表選手として代表に追加内定する。
デーデー・ブルーノが出場資格を得られないときは、標準記録を破っていて日本選手権最上位の小池祐貴(住友電工)が2次代表で追加される。
元日本記録保持者の桐生祥秀(日本生命)は5位、前日本記録保持者のサニブラウン(タンブルウィードTC)は6位。日本選手権上位選手が代表を辞退しない限り、100mの代表入りの可能性はなくなった。
女子やり投は北口榛花(JAL)が61m49で2年ぶり2度目の優勝。標準記録突破済みのため、東京五輪代表に内定した。
女子1500mは田中希実(豊田自動織機TC)が4分08秒39で2連勝。世界ランキングで出場資格を得られれば、7月2日以降の2次発表で代表に入ることができる。
女子100mは兒玉芽生(福岡大4年)が11秒62で優勝。向かい風が1.9mと強くタイムは予選&準決勝より落としたが、勝ちきって2連勝を達成した。
【多田修平】
「決勝は今まで以上の集中をして、結果、優勝できてホッとしています。日本選手権は5位が何年も続き、すごく辛かったので本当にうれしいです。(涙は)やっと納得のいく形を残すことができ、感極まってしまいました。(10秒01を出した)布勢スプリント以降も、武器であるスタートから中盤が良くなってきたことが勝因です。正直、後半は記憶がないので、後半のどこが良かったかは後で確認します」
【山縣亮太】
「決勝の1本に集中しましたが、少し気持ちが空回りして硬いレースになってしまいました。自分のレースに集中したつもりが、多田選手が前に見えて、追いつこうと思って力んでしまいました。(五輪日本人初の100m3大会連続代表入りは)そのことに関してはすごくうれしいのですが、優勝して代表を決めたかったです」
【北口榛花】
「今回の日本選手権に向けて日本のやり投のレベルが上がっていました。私も標準記録(64m00)を切っていないつもりになり、64m00を目指して臨みました。(優勝記録は)61m49でしたが、記録的には残念です。でも今シーズンはすごく調子が悪かったので、その中でオリンピック代表権を獲得できたことにはホッとしています。(4投目に跳び上がって喜んだのは)今シーズン60mを投げていなかったので、やっと投げられたと思って」
●大会3日目は男子400 mハードルが激戦種目
大会3日目の26日も、東京五輪代表を狙う選手が次々に登場する。
決勝が行われる種目ですでに標準記録を破っているのが、男子3000m障害の三浦龍司(順大)と男子400 mハードルの黒川和樹(法大)、安部孝駿(ヤマダホールディングス)、山内大夢(早大)、豊田将樹(富士通)。この5人が3位以内に入れば東京五輪代表に内定する。
男子400 mハードルは23日に予選が行われ、以下の8人が決勝に進出した。
▼男子400 mハードル予選1組
1)49秒52 山内大夢(早大)
2)49秒94 豊田将樹(富士通)
3)50秒16 川越広弥(JAWS)
▼男子400 mハードル予選2組
1)49秒59 安部孝駿(ヤマダホールディングス)
2)50秒00 岸本鷹幸(富士通)
3)50秒07 筒江 海斗(スポーツテクノ和広)
▼男子400 mハードル予選3組
1)49秒73 黒川和樹(法大)
2)50秒05 山本竜大(日大)
安部は4月に故障をして、5月9日のREADY STEADY TOKYO後は治療を優先した。しかし予選では前半から飛ばすいつもの安部だった。「予選の走りで吹っ切れました」と復調への手応えをつかんだ。
予選トップタイムの山内大夢(早大)は後半型の選手だが、前半からリラックスして飛ばしているように見えた。
そしてREADY STEADY TOKYOで今季日本最高(48秒68)を出している黒川和樹(法大)は、タイムこそ49秒73だったが、武器である1、2台目のスピードは目を見張るものがあった。
「自分が一番強いと思って自分のレースを作れば勝てると思う」
男子100mの5人に次いで標準記録突破者が多い種目。12年ロンドン五輪代表だった岸本鷹幸(富士通)にも標準突破の可能性があり、代表争いは100mに負けないくらい熾烈になる。
男子3000m障害は標準記録突破者こそ三浦1人だけだが、山口浩勢(愛三工業)、塩尻和也(富士通)、青木涼真(Honda)も世界ランキングで出場資格を得る可能性もある。3位争いが激しくなる可能性もあるが、READY STEADY TOKYOのように三浦が抜け出し、自身の持つ日本記録(8分17秒46)にチャレンジする可能性もある。
女子100mハードルのママさんハードラー・寺田明日香(ジャパンクリエイト)は12秒84の、男子棒高跳の山本聖途(トヨタ自動車)らは5m80の五輪標準記録を期待したい。
TEXT by 寺田辰朗
写真提供:フォート・キシモト