2020年5月31日「風をよむ ~コロナ禍の中国・・・~」
5月27日(水)、香港島中心部に集まったデモ隊。その市民に向け、催涙銃を撃つなどして強制排除に乗り出す警察。違法な集会に参加した疑いなどで、数百人が逮捕されました。
民主派団体のメンバー、周 庭(しゅうてい)さんは・・
民主派団体のメンバー周 庭さん「デモの参加者が平和的にやっているのに警察側は一方的に発砲したり拘束したりということがあった」
デモ隊が訴えたのは、中国政府が制定を目指す「国家安全法」への抗議。国家分裂や、中央政府の転覆などの行為を禁じる内容で、香港の民主派団体などは「香港への弾圧につながる恐れがある」と、危機感を募らせているのです。
雨傘運動元リーダー 黄之鋒さん(24日)「国家安全法は、去年の逃亡犯条例改正案以上に、香港にとって有害なものです。」
こうした声をよそに、中国は28日、全人代=全国人民代表大会で、この国家安全法を、香港に導入する方針を採択。今後立法作業が行われます。
中国 李克強首相(28日)「国家安全を維持するこの法制は一国二制度を安定かつ長期的に継続させるためだ」
胸を張る、中国政府。しかし、一方では、
民主派団体のメンバー周 庭さん「香港がどんどん香港でなくなる。一国二制度がほぼ一国一制度になってしまって、香港人としては納得できない」
「一国二制度」を巡り、中国政府と香港の民主派との間には、大きな隔たりがあるようです。そもそも、「一国二制度」とは、なんだったのでしょう。
中国 趙紫陽首相(1984年12月)「(共同声明の)調印式に来ていただいた香港各界の方に心よりお祝い申し上げます」
1997年までイギリスの支配下に置かれた香港。その返還について中英両国の間で交わされた、共同声明で示されたのが「一国二制度」という仕組みです。
これにより、資本主義、自由主義など中国政府とは異なる制度を返還後50年間、維持しつつ、外交と国防を除く「高度な自治」が認められたのです。
ところが、その期限となる2047年まで、まだ27年を残す今、その約束が、今回の国家安全法により、なし崩しにされ、「高度な自治」が、脅かされる可能性が生み出されたのです。
「国家安全法」制定が採択されたことを受け、イギリス、オーストラリア、カナダ、アメリカの4カ国は、 共同声明で「一国二制度の枠組みを傷つけるものだ」と厳しく批判。
アメリカ トランプ大統領(29日)「中国は香港の自治を守るという世界との約束を破った」
とりわけ貿易摩擦で対立してきたトランプ大統領は、今後、中国に厳しい制裁を科すことが予想されます。
しかし、中国政府の強硬な動きは、香港だけにとどまりません。19日に閉幕した、WHO=世界保健機関の年次総会。コロナ感染を押さえ込み、世界的に評価された台湾の、オブザーバー参加は認められませんでした。
実は2009年から2016年には、台湾のオブザーバー参加が認められてきましたが、台湾の政権が、対中強硬路線をとる蔡英文政権に交代するや、参加できなくなっているのです。
今や、国際機関のWHOの判断さえ左右する影響力を、手にした中国。トランプ大統領はWHOについて、中国が完全に支配していると批判。WHOとの関係を終了すると宣言しました。
中国の強引な姿勢は、他にも・・・
オーストラリア・モリソン首相(4月29日)「新型コロナウイルスがどのように発生したのか、独立調査を実施したいと世界が望むのは、妥当かつ合理的だ」
新型コロナの発生源を探る独立調査を呼びかけた、オーストラリア。すると、中国は・・・
中国外務省・趙立堅報道官(12日)「中国の消費者の健康と安全を保障するため、中国はオーストラリアの4社の肉類に関する輸入の受け入れを一時停止することを決めた」
中国は、オーストラリアの一部の企業からの肉類輸入を一時停止することを発表。さらに大麦も不当に安いとして、80パーセントを超える制裁関税を課すとしたのです。
この措置とオーストラリアの調査要求の関連は否定しましたが、中国は 新型コロナ発生源をめぐる調査には特に神経をとがらせているようです。
その一方で、中国は、イタリアやセルビアなど一帯一路を通じ、関係を強化している国には、医療チームを派遣するなど、新型コロナの感染拡大を機に、国際的な信頼関係の構築に意欲を見せています。
こうした中、中国の空母「遼寧」が、沖縄本島と宮古島の間を通過、東シナ海などで活動範囲を拡大させています。
さらに、国防予算も去年より6.6%増のおよそ19兆2000億円に達することが分かりました。
強気な外交で、国際的な影響力の拡大をはかる、中国。
新型コロナの感染拡大による混乱で、世界が不透明さを増す中、こうした中国の動きを、どう受け止めればいいのでしょう?