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2021年5月16日放送 風をよむ「何用あって・・・」
CCTVキャスター「初の火星探査機の着陸が成功しました」
15日、中国政府は、中国の無人探査機が、火星への軟着陸に成功したと発表しました。
旧ソ連とアメリカに次いで3か国目の成功。予定されている地質構造や、水の存在などの探査に成功すれば、アメリカに次いで、2か国目の快挙になります。
習近平国家主席は「中国は惑星探査の分野で世界の先頭集団に入った」と称賛しました。中国と言えば・・・
今月9日の未明、静岡県で撮影された映像。そこには点滅しながら、移動するナゾの物体が。
実はこれ、先月29日中国が打ち上げた、大型ロケット「長征5号B」の残骸でした。
通常ロケットや人工衛星の残骸は、大気圏で燃え尽きます。しかし、これは宇宙ステーションを建設するための、大型ロケットで、燃えつきずに、地上に落下するのではという、不安が広がっていました。
これに対して、中国側は
中国外務省 汪文斌報道官「大部分のパーツは(大気圏に)再突入する
過程で燃え尽き、地表に危害を与える確率は極めて低い」
しかし、同型ロケットの打ち上げは、これが2度目。去年5月、最初に打ち上げた際は、アフリカのコートジボアールに破片が落下、ロイター通信によると、複数の建物で被害が出たと言います。
一方、落下する破片を追跡していた、アメリカは、
オースティン国防長官「宇宙開発に携わる者には安全管理の責任がある。
運用の際にはそのことを考慮するべきだ」
結局、残骸は今月9日、インド洋・モルディブ沖の海上に落下しました。
「宇宙強国」を掲げ開発を進める中国と、警戒心を強めるアメリカ。
去年、中国の無人月面探査機「嫦娥5号」が、月の土壌サンプルの持ち帰りに成功。
また、「中国版GPS」とも呼ばれる、独自の位置情報システム「北斗」の 運用を世界で開始させるなど、中国は実績を積んできたのです。
一方で、ガガーリンの人類初の宇宙飛行から丸60年を迎えたロシアも、日本や欧米と協力してきた、国際宇宙ステーションのプロジェクトから、4年後に脱退し、独自の宇宙ステーションを建設する方針を表明。
中国とロシアが手を結んで、アメリカに対抗するという、対立の構図が 宇宙でも展開される可能性も、見えてきました。
例えば、ロシアや中国が開発する「対衛星攻撃ミサイル」。
2007年、中国は老朽化した自国の気象衛星を「実験」と称して、地上から発射したミサイルで破壊、能力の高さを誇示しました。
こうした動きに対して、アメリカはトランプ前政権時に、宇宙軍を創設。 日本も自衛隊に20人体制の「宇宙作戦隊」を新設しました。
河野元防衛相「我が国の宇宙領域における優位性を早期に獲得する観点から非常に意義がある」
本来、宇宙は平和利用が原則。1967年に発効した「宇宙条約」には、「宇宙空間の平和利用は全人類共同の利益」と、明記され、100か国以上が批准してきました。
しかし、国益を求め宇宙進出を計る動きは、大国以外の国々にも拡大、まさかと思うような計画が、推し進められているのです。例えば・・・
世界に広がる、宇宙開発計画の動き。
例えば、UAE=アラブ首長国連邦は、2117年までに火星に都市を建設することを目指すといいます。
さらに、インドも独立75周年を迎える2022年までに有人宇宙飛行を実現させるとするなど、新興国も巻き込んだ、宇宙開発の動きが始まっているのです。
一方で、イーロン・マスク氏やアマゾンのジェフ・ベゾス氏など、名だたる実業家が率いる民間企業も、相次ぎ、宇宙ビジネスに参入。
アメリカの大手金融機関の試算では、世界の宇宙市場は2016年の40兆円から、45年までに300兆円に拡大すると予想されています。
地球がダメなら宇宙がある、といわんばかりの、宇宙新時代。
著名な随筆家・故山本夏彦さんが、アポロブームに熱狂する世相を、「何用あって、月世界へ」、と評した時代からほぼ半世紀。
宇宙は今、陣取り合戦の主戦場と化したかのような、賑わいです。