2019/10/20 風をよむ「フェアプレー」
・台風で試合が中止に…そのときラガーマンは…
・ライバルを手を差し伸べて…勝ち負けの次元を超えて
・自分の良心に照らして、絶対的に恥じない行動をすること
道路にたまった泥を片付ける外国の人たち。実は、台風19号の被害を受けた岩手県釜石市でボランティア活動をするラグビー、カナダ代表の選手たちです。
13日に、予定されていたラグビーワールドカップの試合が中止になったため、支援を買って出たのです。
カナダ代表 ジョシュ・ラーセン選手「中止を聞いたときはとても残念だったけど、安全上仕方のないこと。釜石の人たちが大変な思いをしているのはよく分かっている。」
地元の女性「ラグビーの方々だなと思って見てた。こんなところで、一生懸命やっていただくなんて、すごいことですね。」
一方、カナダと対戦するはずだったナミビア代表も、同じ13日、岩手県宮古市で、市民と交流。
台風による被害の確認に奔走する市の職員を激励しました。
試合の勝ち負けを離れた場所で、のぞいたスポーツマンシップの一端。
もちろん試合のなかでも・・・
試合が終われば、敵味方の区別はない、として試合終了をノーサイドと呼ぶ、ラグビー。その後には、選手達が互いに健闘をたたえあう光景も。
スポーツマンシップは、競技の中でも、さまざまな形で生まれます。
今年9月、カタールのドーハで行われた世界陸上・男子5000m予選。足がもつれ転倒しそうな選手を、ライバルの選手が支えながら、ゴール。
2014年、ロシアのソチオリンピックでは、スキーのクロスカントリーで、スキー板を折ってしまった、ロシア選手に、ライバルのカナダ代表のコーチが駆け寄り、スキーの板を提供する場面も。
日本選手にまつわるエピソードもあります。
古くは、1920年代のテニスの国際大会。清水善造選手は、ゲーム中に転倒した相手選手に対応しやすい緩いボールを返した、と言われています。
1984年のロサンゼルスオリンピック、柔道の決勝戦。右足を痛めていた山下泰裕選手に対し、エジプトのラシュワン選手は、その右足をことさら攻めることなく戦いました。
さらに、記憶に新しい、去年2月の韓国・平昌オリンピックでは、トップに立った小平奈緒選手は、歓声の沸く応援席に向かって、人差し指を唇にあてて、「お静かに・・・」のサインを出し、その後に滑る選手への配慮を見せました。
勝敗へのこだわりを超えたところに生まれる、スポーツマンシップ。
スポーツのあり方を示す、オリンピック憲章には、次のような言葉が記されています。「友情、連帯、フェアプレーの精神と共に相互理解が求められる」。スポーツに求められるのは、勝ち負けの次元を超えた理念。
思い出されるのは去年のサッカーワールドカップでのできごとです。
去年、ロシアで行われたサッカーのワールドカップ。
日本チームの応援に駆けつけたサポーターが、試合後、観客席を清掃して帰る姿を、海外メディアはこう報じました。
「日本のサポーターは負けて落胆した後も、観客席のゴミ拾いを忘れなかった」(USA TODAY/2018年7月2日)
グラウンドの外でも、選手ではなくても、フェアプレーがあることを、世界に伝えたのです。
そもそも、スポーツのフェアプレーとは何なのでしょう? 日本ラグビーの育成に貢献した、大西鐵之祐氏は、著書で、フェアプレーについて次のように語っています。
「自分の良心に照らして、絶対的に恥じない行動をすることを、誇りとするような共通の精神。(中略)あの人の行動は正に社会の規範としていつもフェアである、ということをスポーツマンが行なって、スポーツマンになったら、ああいうふうになるんだ、と言われるようになった場合に、(中略)初めてスポーツは、社会にいい影響を与えていく」
堀江翔太選手・ラグビー日本代表 (17日・木)「僕らの試合を見てくれて、元気をもらったとか、勇気をもらったとか、見ている人たちが、心を動かされるような試合をしたい。」