2021年9月19日放送 風をよむ「またミサイル発射」
山岳地帯のトンネルから、姿を現した列車。3両編成の列車からは、白い服を着た兵士らしき人影が・・・。
やがて、車両の天井が開くと、出てきたのは、ミサイル。次の瞬間・・・
ミサイル発射
これは、北朝鮮のメディアが16日に放送した「鉄道機動ミサイル連隊」による発射訓練の様子。
北朝鮮は、鉄道からのミサイル発射について、同時多発的に、攻撃を加える効率的な手段だとしていますが、軍事に詳しい専門家は・・・
東京大学先端研・小泉悠特任助教「鉄道であれば、鉄道が広がっている所はどこでも入っていける。比較的早く移動できる。非常に広い範囲から分散してミサイルを撃てるようになる」
15日午後に発射され、日本のEEZ=排他的経済水域内に落下したと 見られる、この短距離弾道ミサイルには、ある特徴がありました。
東京大学先端研・小泉悠特任助教「非常に特異な飛び方をする。大気圏を出ないようにして、低い所を飛んで、なおかつ、終末段階でコースを変えながら落ちてくると」
このように変則的な飛び方をするため、実際の落下地点と、当初、日本が推定した落下地点とでは、ズレがあり、イージス艦などからの迎撃も難しくなるのではという声も上がっています。
実は、これに先立つ月曜にも・・・
朝鮮中央テレビ(13日放送)「国防科学院は9月11日と12日、新しく開発した新型長距離巡航ミサイルの試射を成功裏に行った」
北朝鮮は、新型の巡航ミサイル発射を公表したばかり。
こうした動きが活発になっている背景には、いくつかの理由が指摘されています。
韓国軍は、15日、SLBM=潜水艦発射弾道ミサイルの発射実験を実施、世界で7番目に成功したと、発表。加えて、戦闘機からの空対地ミサイルの分離試験にも成功していました。
北朝鮮の弾道ミサイル発射は、この実験の1時間半程前だったのです。
この時、SLBMの発射実験に立ち会った、文在寅大統領は・・・
文在寅大統領「きょうも北朝鮮が、弾道ミサイルを発射する挑発を行ったが、我々のSLBMは非常に効果的な抑止力になるだろう」
この発言を受けて、北朝鮮の金正恩総書記の妹、金与正氏は、「北南関係は完全破壊に突き進むことになる」などと反発。応酬がありました。
日本も人ごとではありません。弾道ミサイル発射前日の14日には、東京で、日・米・韓三カ国の外交当局の高官による、北朝鮮のミサイル開発や非核化などについての協議が行われており、弾道ミサイル発射は、この動きへの牽制では、という見たてもあります。
なぜ今、北朝鮮は、軍事力による危険な行為を再開したのでしょう?
北朝鮮の相次ぐミサイル発射。その背景にあるのが・・・
振り返れば、38度線をまたいでの、文在寅大統領との歴史的会談や、
電撃的なトランプ大統領との首脳会談など、国際社会の注目の的となる動きを見せた、金正恩総書記。
特に、米朝首脳会談が行われた2018年以降は、米国などを強く刺激しかねない、核実験や長距離弾道ミサイル発射を控えてきたように見えました。
当時の北朝鮮側の姿勢を、共同通信の元平壌支局長の磐村さんは・・・
共同通信社 元平壌支局長 磐村和哉さん
経済制裁の圧力から逃れたいという意図から、トランプ大統領との首脳会談に臨んだんでしょうね。トランプ政権とのディール(取引)、思惑が合致した所はある。個人的な信頼関係が生まれたという事で、北朝鮮も、その辺は大事にしようとしたみたいですね」
しかし、その後、非核化に向けた交渉は進展せず、トランプ政権はバイデン政権に交代。情勢に変化が生まれます。
共同通信社 元平壌支局長 磐村和哉さん「朝鮮労働党の中央委員会の幹部と(私は)時々メールでやり取りしているが、『バイデン政権は対話環境づくりに向けて何もしていない。オバマ政権の戦略的忍耐と同じ感じになってきた』と。ですから、恫喝外交に逆戻りした。鉄道からうってみたり、巡航ミサイルを飛ばしたり。朝鮮半島で有事が起きた際、後方支援に回る在日米軍基地 や、自衛隊基地も射程にあるぞという、警告のメッセージ。日本の敵基地攻撃論を十分に意識していると思います」
ミサイル発射ばかりか、この16日には、核兵器に使用可能な、ウラン濃縮を行う寧辺の核施設を、拡張している、との報道もありました。
危険な軍備増強の動きに、拍車をかける北朝鮮。東アジアは再び、重苦しい空気に包まれる事になるのでしょうか?
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