2021年3月14日放送 風をよむ「いま“差別”をめぐって…」
テレビ司会者 オプラ・ウィンフリー氏「なぜ王室を離脱したのか?という問いに、最もシンプルに答えてください」
ヘンリー王子「理解の欠如です。傷つくことがたくさんありました」
イギリス王室の公務を退き、現在はアメリカに暮らすヘンリー王子とメガン妃によるインタビューが今、波紋を呼んでいます。
王室との確執を語った二人。とりわけ大きな問題となったのが、王室内であったとされる、この発言です。
メガン妃「生まれてくる子供の肌の色が、どれくらい黒いかを心配する声もありました。初めての有色人種の王子王女ということで、称号も変わってくるという考え方でした」
メガン妃の母親はアフリカ系アメリカ人。そのことから、長男のアーチー君を妊娠中、王室メンバーがその肌の色に言及するなど、「人種差別的」な扱いを受けたと主張したのです。
これに対し、イギリス王室は9日、「記憶に相違はあるかもしれません が」と前置きした上で、「人種問題にかかわる指摘については、特に真摯に受け止め、対応します」との声明を発表しました。
記者「ロイヤルファミリーは人種差別主義的な一家ですか?」
ウィリアム王子「我々は人種差別的では、全くありません」
また、メガン妃の発言を非難し、「王室が白人至上主義者の集団であるかのような印象を与えた」と批判したテレビ番組の司会者に対して、苦情が殺到。司会者が降板する事態に至ります。
一方で、この問題については市民の受け止め方も様々です。
ロンドン市民「王室をおとしめようとしているだけですよ」「王室内で人種や肌の色が未だに議論されているなんてショックです」
今回のインタビューが大きな注目を集めた背景について、アメリカのフォーブス誌は…
「インタビューは夫妻の個人的な話だったが、コロナが浮き彫りにした社会問題と一致していた」
その社会問題とは、“人種”の問題。新型コロナの感染拡大という危機が、人々の心に潜む、人種による違いや差別の意識を浮き彫りにしたというのです。
そんななか、アメリカでは11日、バイデン大統領が国民向けの演説の中でこう呼びかけます。
バイデン大統領「多くのアジア系アメリカ人は、新型コロナとの戦いの最前線で多くの命を救おうと尽力している。それなのに通りを普通に歩くことさえ恐れながら過ごしている」
コロナ禍でのアジア系住民に対する差別に警鐘を鳴らしたバイデン大統領。確かに今、アメリカではアジア系住民への暴力が相次いでいます。
例えばこちらは、東本願寺ロサンゼルス別院、先月25日夜、防犯カメラに、男がライターのようなもので、木製の提灯の台に火をつける様子が映されていました。
男は金属製の灯籠を倒し、石を投げ込み逃走。火は激しく燃え出し、気づいた寺の人が消火に追われます。
また1月、カリフォルニア州では、91歳のアジア系の男性が、突然、見知らぬ男に突き飛ばされ負傷。
こうしたアジア系住民への「ヘイトクライム=憎悪犯罪」について監視している民間団体によれば、去年3月以降、全米での暴力や嫌がらせが2800件を超えたといいます。
この状況を懸念し、9日には野茂英雄さんら、多くの日本選手が所属した大リーグ・ドジャースが相次ぐ事件を非難する声明を発表しています。
そして、こうした事態の一因とも指摘されているのが…
トランプ前大統領「中国ウイルス」「中国ウイルス」「中国ウイルス」
度々、新型コロナを「中国ウイルス」と呼んだトランプ前大統領。こうした言動が、コロナ禍でのアジア系住民への敵意をより助長したと先月、与党・民主党の議員たちは記者会見で語りました。
民主党 テッド・リウ下院議員「暴力は何もないところから、いきなり発生しない。偏見をあおるには長い月日が必要だが、トランプ前大統領はそれをやった」
またアメリカのメディアからは、「多くの一般市民が新型コロナウイルスの大流行による経済的、社会的影響に落胆や憤りを覚える中、アジア系がスケープゴートにされている」という指摘もあります。
現在のコロナ禍という危機が人々にもたらした不安感。それが社会における分断や差別を、より加速させているのでしょうか…?