2019/09/1 風をよむ「アマゾン森林火災」
南米にある世界最大の熱帯雨林・アマゾンで続く大規模な森林火災。 軍も出動し、消火活動を続けています。
こちらはブラジル西部のサッカー場。スタジアムの近くまで炎が・・・火の手は、人々の生活圏にも及びはじめているのです。
住民「空気が薄くて眠れません。とても具合が悪いです」
火災はペルー、ボリビアなど近隣の国々にも広がっていますが、 ブラジルや中南米だけの問題ではありません。
膨大な樹木が二酸化炭素を吸収し、大量の酸素を放出しているところから、「地球の肺」とも呼ばれます。
また、現在、地球上で確認されている野生生物の内の10%が生息してると言われ、アマゾンの焼失は、地球全体の環境にとっても深刻な問題なのです。
そんな中、アマゾンの火事に怒るデモ隊からはこんな言葉が・・・
デモに参加者「ボルソナロは放火犯だ。ボルソナロが立ち去れば全てが変わる」
デモ隊に、名指しで批判されたのは、去年10月に大統領選に勝利、今年1月に就任したばかりの、ブラジルのボルソナロ大統領。
ボルソナロ大統領「ブラジルを偉大で自由で繁栄した国にするため変革するのです」
元々、アマゾンでは農地開発を目的とした、違法な「野焼き」が横行。
さらにボルソナロ大統領が、開発を重視し、取り締まりを緩めたことが、火災の増加につながったという指摘が出ています。
このボルソナロ大統領、地球温暖化対策の国際的な枠組みであるパリ協定からの離脱を主張したこともありました。パリ協定離脱といえば・・・
トランプ大統領「アメリカはパリ協定から離脱する!」
2年前、「パリ協定」からの離脱を宣言したトランプ大統領。背景には、国内のエネルギー産業への配慮もあると見られます。そして、産油国ブラジルを率いる、ボルソナロ大統領も・・・
ボルソナロ大統領「私はトランプ大統領のファンだ。彼は偉大なアメリカを、は偉大なブラジルを求める」
かみ合わない、経済最優先の姿勢と、気候変動を巡る議論。そんな中・・・
国連の気候変動に関する会議に出席するため、温室効果ガスを大量に出す飛行機を使わず、ヨットでニューヨークに到着した、スウェーデン人の環境活動家・グレタ・トゥンベリさんは・・・
グレタ・トゥンベリさん「私たちが自然破壊を止める必要がある。アマゾンは気候危機や生態系危機に対処するための重要なカギであり、非常に重要な場所だ」
しかし、現実には・・・
氷が溶け、むき出しになったグリーンランドの大地。
フランス・コルシカ島では海上に大きな竜巻が発生。そしてノルウェーで見つかった大量のトナカイの死骸。
今年も世界各地で、気候変動によるとみられる異変が発生する中、環境への取り組みが、進まないのはなぜなのでしょう? 哲学者の内山節さんは、
内山節さん「ほとんどの人たちは環境が大事とかこれ以上自然を壊しちゃいけないとか倫理観としては分かっていると思うけど、環境のために経済をストップするかとなると、総論賛成、各論反対になる。人間は自分の支えになる経済が縮小していくというのはやっぱり困るわけです。だから結果的にみんなしてひたすら経済成長を求める。そういう時代を作っちゃった」
事実、先日フランスで開かれたG7では、アマゾン火災もあり、気候変動に関する真剣な議論が期待されました。
しかし結局、アメリカと他の国々との溝は埋まらず、最終的に出された首脳宣言には、気候変動対策の項目はなかったのです。
内山節さん「人間は、手触り感があるというか、自分で感じられるものに対しては、真剣に向き合える。だけど実感のないものは、かすんでしまう。だから、地球から考えるんじゃなくて、自分が実感を持てる世界から、地球全部が絡みこんできているという、それを見つけていかなきゃいけない」