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2019/5/19 風をよむ「新時代の覇権争い」

●米中貿易戦争の裏側

●経済から、軍事、宇宙まで

●アメリカが恐れていることとは

2008年、北京オリンピック開会式。紙や活字、羅針盤など、中国が生んだ世界的発明を紹介しながら、「中国5千年の歴史」をアピールしました。あれから10年余り…

中国国営中央テレビ「我々と戦いを望むなら徹底的に戦う。5千年の歴史がある中華民族が、経験していないような試練などない」

13日、中国国営の中央テレビは、激しさを増すアメリカとの貿易交渉について、「5千年の歴史」という言葉を改めて使いました。

「5千年前」にさかのぼれば、中国は黄河流域を中心に古代文明が花開いた時代。そうした歴史ある国家としての誇りにかけて、一歩も引かない対決姿勢を鮮明にしたのです。

中国版のツイッター・ウェイボーにも、「強気でいかないといけない」「絶対に頭を下げてはいけない」などといった、市民の愛国的な書き込みが目立っています。

こうした状況に、ニューヨーク・タイムズは、「今の米中の対立は今後数十年続く経済戦争がさらに拡大する前の小競り合いに過ぎない。なぜならば、両国は“覇権”を巡って対立しているからだ」と報じました。

米中による‘覇権’を巡る争い。それは、貿易摩擦にとどまらず、いまや次世代技術から軍事・安全保障分野にまで及んでいます。

15日、トランプ大統領は中国企業ファーウェイなどを念頭に安全保障上脅威と認める通信機器の使用を禁ずる大統領令に署名。

中国外務省・耿爽報道官 「アメリカ側は国家の力を乱用し、手段を選ばずに下心を持って特定の中国企業の顔に泥を塗り、抑圧している」

管制官「探査機は正常に着陸しました」

また今年1月には、中国の無人探査機が世界で初めて月の裏側への着陸に成功するなど、「宇宙強国」建設を目指す中国。一方で、去年8月、アメリカのトランプ政権は「宇宙軍」を設立する計画を発表しています。

こうした大国同士の「覇権争い」は、歴史を振り返れば、これまでも度々繰り返されてきました。

16世紀の大航海時代、無敵艦隊を擁するスペインが覇権国に。また植民地戦争に勝利したイギリスが18世紀、覇権を握ります。

そしてそのイギリスに代わって、20世紀の覇権国となったのが、アメリカ。ところが、ここに来て、その力に陰りが見え始めています。
 
そこに新たに台頭し、アメリカと肩を並べようとしているのが中国です。

歴史上、広大な領土を有し、アジアで権勢を誇った中国は、今、世界の覇権国を目指そうとしているかに見えます。

その中国に警戒感を露わにするアメリカ。去年10月、ペンス副大統領は演説で、これまでとは違う、新時代の覇権争いに警鐘を鳴らしたのです。

ペンス副大統領「アメリカの人々が知らなければならないことを話にきた」

去年10月、アメリカのペンス副大統領は中国に対して厳しい批判を行いました。

ペンス副大統領「中国共産党は、関税、通貨操作、強制的な技術移転、知的財産権の窃盗、産業補助金をいとも簡単に与えるなど、自由かつ公平な
貿易と矛盾する政策を行っている」


外国企業に対する中国企業への技術移転の強要や中国政府の産業補助金など、「国家資本主義」とも呼ばれる政策に関し、アメリカ側は公平な競争を阻んでいると厳しく批判したのです。

対立の背景について、国際政治に詳しい春名さんは…

春名幹男・元共同通信ワシントン支局長「ペンス副大統領の去年10月4日の演説も含めて、アメリカは中国共産党の支配を何とか崩そうとしているんじゃないかということが見えてくる。単に中国との貿易問題ではなくて、中国共産主義、中国の覇権を阻止するという方向にいま出てきている」

国家としての体制にまで異を唱え、新たな次元に至った米中の対立。こうした覇権争いについて「トゥキディデスの罠」という言葉があります。

古代ギリシアの時代、覇権国スパルタと新興国アテネとの対立が戦争を招いたという、歴史家トゥキディデスの指摘から生まれたもので覇権国と新興国の対立が、しばしば互いに望まない戦争にまでエスカレートする危険性を訴えたものです。

自国の「偉大さ」を訴え、一歩も引かないアメリカと中国。両者の対立は、今後、どこへ向かうのでしょうか…。

トランプ大統領「アメリカを再び偉大に!」

習近平国家主席「中華民族の偉大な復興を成し遂げる―」



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