風0526のふた

2019/5/26 風をよむ「トランプ大統領2度目の来日」

・令和初の国賓待遇で強固な日米関係をアピール

・戦後日本の国体の変化と復興に色濃く映るアメリカの影

・"緊密な日米関係"が他国との外交に与える影響は…

きのう来日したアメリカのトランプ大統領。

 
一夜明け、まもなく、千葉県で安倍総理とゴルフをプレー、焦点の日米首脳会談は、明日行われます。

新たな元号になって最初の国賓として来日したトランプ大統領。手厚いもてなしには、強固な日米関係をアピールしたいという思惑が透けて見えます。

戦後日本が外交の「基軸」としてきた日米関係。

敗戦国・日本が、復興の柱としてきた、平和憲法、象徴天皇、民主主義などの社会のシステムや、朝鮮戦争の特需景気に始まる、経済成長への歩みに至るまで、常に背後にあったのが、戦勝国アメリカの影でした。

こうした日米関係は、戦後73年を過ぎた現在でも、続いています。

1972年の沖縄返還後も、不平等と批判される「地位協定」の抜本的な改定はされず、在日米軍駐留経費の一部を負担する、いわゆる「思いやり予算」は、今年度1974億円に上っています。

また2015年には、集団的自衛権の行使容認を含む安保法制が成立。平和憲法との整合性など、様々な議論が残る中での成立でした。
  
そして、トランプ大統領が登場してからも…、

あさって火曜日に、トランプ大統領と安倍総理の視察が予定される、海上自衛隊の護衛艦「かが」。

「かが」は、事実上の空母に改修されることが決まっていますが、その際、アメリカ製の最新鋭ステルス戦闘機F35Bが、多数、導入されることが、念頭に置かれているのです。
 
先月ワシントンで行われた日米首脳会談。トランプ大統領は、安倍総理がホワイトハウスを後にした直後…、

トランプ大統領「日本はものすごい量の防衛装備品の購入に同意した。アメリカは最高の物を造り、彼らはその最高の物を買う―」

日本に対しても、アメリカ・ファーストを前面に押し出すトランプ外交…。

政治学者の白井聡さんは、現在の日米関係の背景にあるのは、戦後に起きた「国体」の有り様の、大きな変化だと指摘します。

政治学者・白井聡さん「戦前の国体は、天皇中心、天皇陛下が国民を愛してくれている、というのが常識だったが、戦後は物語がすり替わった。アメリカは日本を愛してくれているんだと。アメリカに敗北して『おまえ、というのが常識だったが、戦後は物語がすり替わった。アメリカは日本を愛してくているんだと。アメリカに敗北して『おまえ、言うことを聞け』となったわけですが、いつの間にかアメリカの存在が、日本にとって慈悲深い、ありがたいものであるかのようになってしまった」

戦後、焼け野原からの復興を余儀なくされた日本。その窮地に手をさしのべたのは、アメリカでした。

食料・衣服など、広範囲におよぶアメリカの援助を足がかりに、日本は復興を果たし、ついには、奇跡とまで言われる経済大国へと成長したのです。

また、戦後世界をリードする立場に立ったアメリカには、東西冷戦を背景に、日本を自由主義陣営に引き止めたいという思惑もありました。

こうした日米両国の事情を背景に築かれてきた緊密な日米関係は、一方で、他の国々との外交にも、影響を与えています。

安倍首相「私とプーチン大統領の手で必ず終止符を打つとの決意で交渉に臨んでいく考えであります」

安倍政権が解決を目指す、ロシアとの北方領土問題。強固な日米関係を警戒するロシアは、北方領土を引き渡せば、いずれ、米軍基地が設置されかねない、という懸念を盾に、交渉を停滞させています。


また、北朝鮮との問題についても…。「対話のための対話は意味がない」として、アメリカと歩調を合わせてきた安倍政権は、ここへ来て一転、前提条件なしで日朝首脳会談の実現を目指す方針を固めました。

しかし・・・


安倍首相「まだ残念ながら日朝首脳会談が行われるということについては、めども立っていないのは事実でございます」

翻って世界を見れば、戦後の価値観や仕組みを否定する動きが拡大。深刻な対立が起きています…。

政治学者・白井聡さん「アメリカの属国だよねと見られている限り、日本の存在が重く見られることは決してないでしょう。どうやって、主体的にビジョンを紡ぎ出せるかという所に、日本の国運がかかっている」
 
“令和”に変わり、初の国賓として来日した、トランプ大統領。この来日から、何が生まれるのでしょう?

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