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2021年12月5日放送「風をよむ~コロナで広がる格差」

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南アフリカ・ラマポーザ大統領「南アフリカ、およびアフリカ南部の国々について、渡航制限措置をかけた諸国に呼びかけます。直ちに措置を撤回して下さい!」
新型コロナのオミクロン株出現に揺れる世界。先月28日、南アフリカのラマポーザ大統領は、オミクロン株の発生で、各国が行う南アフリカからの入国を制限する措置の撤回を訴えました。さらに…

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ラマポーザ「オミクロン株の登場は、『ワクチン格差』が続くことは許されないという、世界への警鐘です。全ての人々が、ワクチンを接種するまで、全ての人がリスクに晒されるのです」

と、世界的な「ワクチン格差」の解消を強く訴えたのです。

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これは、世界のワクチン接種状況を地図で色分けしたもの。色が濃いほど接種が進んでいることを示し、南北アメリカ大陸やヨーロッパなどは、色が濃く、片や、色が薄いのがアフリカの国々です。

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オミクロン株を確認した南アフリカでは、2回接種を終えた人の割合は24.7%ですが、アフリカ全体では7.5%にとどまっています。

こうした国々にワクチン供給を行うことを目的として、去年4月に作られたのが「COVAX(コバックス)」という世界的な支援の枠組みです。

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ところが、今年中に、ワクチン20億回分を提供することを目標としましたが、実際に届けられたのは、先月時点でおよそ5億6千万回分となっています。

この状況を、世界の医療格差を研究する専門家は…

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東京都立大・詫摩佳代教授(国際政治)「コバックスに優先的にワクチンを供給する枠組みが整っていない。商品としてのワクチンを、先進国と同等の立場で確保するため戦わなければならない。自国第一主義の、ひずみというものが出ている」

こうした中、29日、中国の習近平主席は、西アフリカのセネガルで開かれた「中国・アフリカ協力フォーラム」にオンラインで出席し、こう訴えたのです。

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習近平国家主席「中国はアフリカ向けにワクチンを、さらに10億回分提供する。『ワクチン格差』について心配する必要もなくなるだろう」

中国はすでにアフリカ諸国を中心に、100か国以上にワクチンを供給していますが、さらに10億回分の追加提供を明言したのです。しかし、

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東京都立大・詫摩佳代教授(国際政治)「待っていても来ない、だけど中国がくれるというのであれば使わない手はない。中国はすごくしたたかで、一帯一路のインフラ建設の一環として、ワクチン外交を展開してきた」

ワクチンを巡り、交錯する大国の思惑。それは欧米諸国でも同様です。

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現在、WTO・世界貿易機関では、ワクチンや治療薬の特許権を一時的に放棄し、途上国に自由な利用を認めるかが議論されています。中国への対抗姿勢を強める、バイデン政権は、それを支持しましたが…

メルケル首相「多くの人にワクチンを提供するための解決にはならない」(5月)

製薬大手の企業が域内にあるEU圏の国々が反対し、交渉は行き詰まっています。

そして今、コロナを巡って、新たな軋轢が生じているのです。

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先月から、一日の新規感染者が2万人近い日が続くチェコ。飲食店や、文化施設などで「ワクチン接種証明」が必要となり、「検査での陰性証明」では利用できなくなることに、抗議デモが起きています。

デモ参加者「(ワクチンを打たない)我々が、危機に瀕していることを、警戒しなければなりません!」

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ワクチンを接種した人と、しない人の間に生じる軋轢。
 
さらに、開発中の「飲み薬」を巡っても、新たに懸念される問題が…

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ファイザー・ブーラCEO 「パクスロビドは、オミクロン株を含め、すべての変異株に効くと、強い自信がある」(11月29日)

アメリカ・ファイザー社のCEOは、自社の飲み薬「パクスロビド」について、オミクロン株にも有効であると自信をみせました。

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重症化のリスクを89%減らすといわれる「パクスロビド」。現在、アメリカで緊急使用許可を申請中で、こうした「飲み薬」は今後、コロナ対策の「切り札」として期待されています。

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しかし、重症化のリスクを30%減少させるという、メルク社の飲み薬「モルヌピラビル」については、すでにアメリカが310万人分、イギリスが48万人分、日本も160万人分の供給で合意。
 
争奪戦の様相を見せており、今後、ワクチンと同様、国による「格差」の広がりが懸念されています。

こうした事態に、私たちは、どう向き合っていけばいいのでしょうか―

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