2020年11月15日「風をよむ ~“環境後進国”?ニッポン」
これは2005年3月、ヒバリの初鳴きが観測された日の映像です。こうした動物に加え…
気象台職員(2020年3月14日)「昨年より7日早い開花となりました」
サクラの開花日の観測。気象庁は、こうした鳥の初鳴きや、植物の開花などで季節の変化をとらえる「生物季節観測」を、1953年から行ってきました。
ところが火曜日、23種の動物すべて、34種の植物のうち、梅や桜など一部を除く種について、「今年一杯で観測を終了する」と発表したのです。
理由は、対象の動物を探すことが困難となり、植物も標本となる木の確保が難しくなったためでした。
実際、東京では、ウグイスの初鳴きは2000年3月以来、またヒグラシの初鳴きも2001年8月以来、およそ20年に渡って観測されていません。
こうした生態系の変化の背景の一つが「地球温暖化」。菅総理は先月26日の所信表明演説で、こう述べました。
菅義偉 総理大臣(2020年10月26日)「わが国は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする」
政府として初めて具体的な時期を表明したのです。
しかし、前途は多難です。資源エネルギー庁によると、日本の電源構成は、80.9%を石油・石炭などの化石燃料に依存。水力と再生エネルギーを併せても16%に過ぎず、海外の主要国と比べても低い数字です。
去年12月、地球温暖化問題への対策を話し合った「COP25」。CO2を排出する石炭火力発電所を多く稼働させ、国際社会から批判を浴びる日本は…
小泉進次郎環境相(2019年12月)「残念ながら、石炭火力発電の新たな政策をこの場で共有することはできません・・・」
発電所の削減を打ち出せないなど、具体策を表明できません。こうした日本に対し…
国際NGO・気候行動ネットワーク「化石賞は・・日本!!」
世界の環境団体でつくるNGOは、去年12月、地球温暖化対策に消極的な国として、不名誉な「化石賞」を贈りました。
また同じ頃、ドイツのシンクタンクなどが発表した「地球温暖化対策ランキング」でも、日本は58の主要な排出国・地域の中で51位とされたのです。
ところが、かつての日本は、1997年温室効果ガス削減を定めた「京都議定書」の取りまとめを議長国として主導。2008年の「環境・循環型社会白書」でも「わが国は、“環境先進国”として、国際的な連携に基づく地球温暖化防止に向けた取り組みを“主導”していく必要があります」という記述も。
“環境先進国”として、世界をリードする気概を感じさせました。実際、2007年当時、太陽光発電量の世界シェアでも、日本勢が上位を占め、存在感を示しました。ところが、10年後の2017年、1位から5位のうち4つは中国企業。日本は10位以内にも入っていません。
また2019年の電気自動車の世界販売シェアを見ても、アメリカや中国企業が圧倒的なシェアを占める一方、日本の存在感は希薄です。
日本の環境先進国からの“転落”。一体、なぜなんでしょうか?…かつて環境先進国として世界をリードした日本。とりわけ2011年の福島第一原発事故以降は、より一層、再生エネルギーの普及に舵を切るかに見えました。
しかし、その後の国の「エネルギー基本計画」では、「運転コストの安さ」や「運転時に温室効果ガスの排出がない」ことなどを理由に、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけます。
さらに、コストや備蓄などの面から石炭・石油火力などを重視し、企業による再生エネルギーの開発もなかなか進みません。
そうした中、水曜日、宮城県は女川原発2号機について、再稼働の前提となる「地元同意」を表明。国会でも、梶山経済産業大臣が温暖化対策として、依然として原発を活用する姿勢を示したのです。
梶山弘志 経済産業大臣(2020年11月2日)「原子力についても、重要な脱炭素技術として活用を進める」
その一方で、当選を確実にしたアメリカのバイデン氏は、温暖化対策の国際的枠組みである「パリ協定」への復帰を表明。
アメリカ大統領選 当選確実 ジョー・バイデン氏(10月22日)「私たちは温室効果ガス実質排出ゼロへ向かわなければならない。パリ協定に再び加盟します」
さらに国連で採択された「SDGs=持続可能な開発目標」が、重要な課題として注目されるなど、多くの国が温暖化対策に本腰を入れつつあります。
そうした中、いまや環境分野で世界各国の後塵を拝する日本。かつての“環境先進国”としての輝きを取り戻す日は来るのでしょうか―
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