新型コロナ対策「福井モデル」って?~マスクは着け方で効果激減!?
東京など9都道府県に出ている緊急事態宣言の期限が延長されました。なかなか“出口戦略”が見えてこないなか、今、福井県が独自で取り組む新型コロナ感染対策「福井モデル」が注目を浴びています。政府も、そのデータを活用して対策を検討しているという「福井モデル」とは、どんな策なのでしょうか。そして、「マスクの着け方」で大きく変わる“漏れ率”についても考えていきたいと思います。
■政府が注目する「福井モデル」
「緊急事態宣言延長」の会見で福井県の感染対策について言及する菅首相
(TBS Youtube LIVE配信 2021年5月28日)
菅首相(5月28日の会見)
「福井県では、4月の陽性者の98%の感染経路を特定し、その85%がマスクなしの会話が原因であると分析されております。これを踏まえ、飲食店などにおいても、会話をする際にはマスクを着用することが徹底され、極めて低いレベルに感染が抑えられております」
■コロナ感染者の約85%が「マスクなし」だった!
福井県が、県内で4月に確認された新型コロナの新規感染者286人について感染経路を調査し分析したところ、約85%(242人)が『マスクをしていない』場面での感染とみられることがわかりました。下の円グラフがその詳細になります。
(福井県HPより)
「マスクなしで感染」の内訳を「飲食の有無」で見てみると、3分の2の67.8%が「飲食あり」となっていて、「マスクをしないで飲食をする」場が、感染リスクが高いことがあらためてわかります。
感染場所の内訳を見ると、「家族・共同生活」が約40%、「飲食店・バーベキュー」が約25%と多くを占める一方で、学校や職場、病院などマスク着用が徹底されているはずの場面でも感染していて、低学年の児童や高齢者のマスクが外れたりしていた事例や、更衣室や喫煙室でマスクを外していた事例があったということです。
福井県は、この調査結果を受けて、『感染対策にマスクが極めて有効』と判断し、「おはなしはマスク推進協議会」を設立、会話時や会食時のマスクの徹底を官民一体で展開しています。
福井県の「おはなしはマスク」推進ポスター(福井県HPより)
■「おはなしはマスク」の徹底
福井県は、会話時のマスク着用=「おはなしはマスク」を下記のように呼び掛けています。
◆会話の際は必ずマスクを着用しましょう。
◆県外から来県した方や、県外と往来した方がいる場合は、家庭内でも全員がマスク着用を。
◆飲食時は「マスク会食」を実践。まずは家庭で練習を。
◆バーベキューやスポーツ活動など、屋外活動でも会話時はマスク着用を。
兎にも角にも、話すときはマスクを!ということですね。
■「マスク会食」のやり方
福井県が推進する「マスク会食」のやり方です。
福井県の広報は、「マスク会食」を動画でも紹介しています。
■菅首相が福井県知事を官邸に招いて・・・
首相官邸に招かれた福井県・杉本達治知事(5月17日「Nスタ」より)
杉本達治知事(5月15日)
「会社の中でも更衣室でも、たばこを吸うときも、「お話はマスク」ということを福井県は徹底しています」
5月14日の会見に続き、28日の会見でも、福井県の例をあげその対策を評価した菅首相。福井県の杉本知事を「話を聞かせてよ」と5月15日に官邸に招き、直接知事から「福井モデル」について説明を受けました。首相は、「こういったデータが出てきたのは初めて」と強い関心を示したということです。
■感染対策と経済再生の両立目指す「福井モデル」
福井県では、マスク着用の徹底のほかに:
◆積極的疫学調査による次なる感染拡大の防止
⇒感染経路を調査(発症前2週間分の行動経過を徹底して聞取り)することで、感染経路不明率を3%にとどめている(全国平均は50.2%)。
◆検査・入院の調整を一元管理
◆マスク会食を推進する飲食店には10万円の奨励金を公布
①アクリル板の設置 ②食事中以外のマスク着用 (マスク会食の推進状況) ③手指消毒の徹底 ④換気の徹底 等 の感染対策を第三者が現地で確認した後に認証し、1店舗10万円の奨励金を支給(6月中開始予定)
◆県民の県内旅行代金の50%割引キャンペーン(上限5000円)再開
など、感染拡大防止と経済活動を両立させようと独自の取り組みを行っています。
■マスクを着けていれば大丈夫?
東京都が若者に緊急アンケートを実施(4月30日)
”マスク着用”はとても大事です。ただ、”マスクを着けていれば大丈夫”なのでしょうか。東京都は、4月30日に新宿や渋谷などで10~30代の若者を対象に緊急アンケートを実施。緊急事態宣言が出ているなか、外出する理由について聞くと・・・
「マスクをしているから大丈夫だと思う」という回答が3分の1を占めました。これを受けて小池都知事は、「変異株とか今の感染する確率というのがこれまでとは違うんだという認識を持たなければいけない(5月6日)」「若者のみなさん、今はどうぞ遊びに出ないでいただきたい(5月7日)」と訴えました。
実際、青森市にある不動産会社では、窓口にアクリル板、換気をしたうえで、従業員と利用者全員がマスクを着用していたにもかかわらず、従業員と利用者7人が感染し、その家族含め計27人が感染するクラスターが発生した、という事例もあります。青森市の保健所によると、「エアロゾル感染」が起きた可能性があるということです。
■マスクは着け方が重要! 大事なのは“W”
空気中に浮遊するウイルスが、鼻や口などに入ることで起きる「エアロゾル感染」。TBSテレビ「あさチャン!」では、藤森アナが聖路加国際大学公衆衛生大学院を訪ねて、布、ウレタン、不織布、防塵の4種類のマスクで、空気中に漂う粒子がどれだけマスク内に入り込むか検証しました。
(「あさチャン!」5月12日放送より)
布マスクの場合、なんと漏れ率が100%という結果に!この「漏れ率」とは、0.3~0.5マイクロメートルの粒子がマスク内にどれだけ侵入したかを示す数値です。
聖路加国際大学公衆衛生大学院 大西一成准教授
「空気中に浮遊している粒子がすべてマスクの中に入ってしまっている」「接触感染を防ぐという意味では全く意味がないわけではない。ただ、粒子を吸い込むという点では、(マスク内に)入ってきてしまっているので、その粒子に感染力があれば感染するリスクはグンと高まる」
次に、不織布マスクで計測すると・・・
漏れ率は、70.29%。空気中に浮遊している粒子が7割侵入してきてしまうという結果に。しかし、大西准教授が着け方をちょっと変えて再び計測すると・・・
漏れ率は21.72%と約8割カットできているという結果になりました。その秘密は、"隙間を無くすマスクの着け方”に!大西准教授に教えてもらいました。動画でご覧ください。
①指をマスクの真ん中にあてて半分に折る
②マスクのワイヤーを鼻の高さに合わせて、“W”の形にカーブをつける
③マスクを手にのせ顔に合わせて着用、隙間なく顔に密着させる
聖路加国際大学公衆衛生大学院 大西一成准教授
「顔にしっかり密着してマスクをつけているということは、外の粒子を防ぐと共に外に放出する、拡散させるのを防ぐことにもつながります」
マスクの種類別で粒子の"侵入率”を比較(藤森アナの場合)
藤森アナが普段どおりにマスクをつけた際の粒子の漏れ率(侵入率)は上の写真のような結果になりました。不織布マスクの場合、”Wカーブ”を意識して着け方を変えるだけで、漏れ率が大きく変わるのは驚きですね。
■マスクと複数の感染対策で感染を防ぐ!
大西准教授は、従来型のウイルスでも変異ウイルスでも注意点は変わらず、マスクと行動で感染を防ぐのが重要と話します。
聖路加国際大学公衆衛生大学院 大西一成准教授
「人流を止めたりすることができない、そういった中でも、自分の持っているマスクの限界を知って、複数の感染対策を同時にやっていくというのが、感染流行下では必要になってくる」
5月26日に開かれた厚労省新型コロナ感染症対策アドバイザリーボードでも、福井県が分析した「マスクの効果」について言及がありました。国立感染症研究所所長の脇田座長は、「会食時含め会話の際にマスクの着用を徹底することは重要」とする一方で、「マスクさえすれば大丈夫というメッセージとならないようにすべき」として、手洗いや3密回避、換気などの基本的な感染予防対策の重要性も強調しています。