新クトゥルフ神話TRPGシナリオ『記憶の葬送曲』
~このシナリオについて~
本作は、著者及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『新クトゥルフ神話TRPG ルールブック』の二次創作物です。
(C)KADOKAWA
【PL向けシナリオ概要】
難易度:低
キャラクターロスト率:高(PCによる)
適正正気度:50前後
所要時間:2~4時間
舞台:現代、完全クローズド
【プレイヤー人数】
1人(いわゆるタイマンではない)
【PCについて】
推奨技能:なし
探索キャラクター(成人済みを推奨)
SAN40以下のキャラクターはロストの可能性が高くなる
SAN20以下のキャラクターの場合はほぼロストする
【必要なもの】
新クトゥルフ神話TRPG(通称7版) 基本ルールブック
【シナリオ傾向】
サイコスリラー系
ハイリスク・ハイリターン型
【センシティブなコンテンツ】
R15相当の表現
『精神的疾患』『暴力』『犯罪』『汚染』『血やグロテスクな表現』
~トレーラー~
浴槽の中で目を覚ました。
ひどく痛む手足、全身の倦怠感。
浸かっている湯船の水は冷め、わずかに茶色く濁っている。
全身が泥まみれのようだ。髪の毛がひどく汚れている。
ここはどこだろう。
自分は何をしていたのだろう。
~シナリオをはじめるまえに~
①センシティブなコンテンツについてのプレイヤーとの合意
開始前にプレイヤーには以下のセンシティブ要素が含まれていると伝えなくてはならない。
『精神的疾患』『暴力』『犯罪』『汚染』『血やグロテスクな表現』、場合によっては『恋愛』『性的描写』なども含む。
このあたりのセンシティブな内容の扱いに関しては、裁量は実際にセッションを行うキーパーとプレイヤーに任せることにする。
不要なトラブルを避けるため、なるべく事前に聞いておくのが良いだろう。
②ロストに関しての明示
このシナリオでは、開始時の正気度によってはキャラクターは容易に永久的狂気に陥ることでキャラクターロストとなる。
ロスト率に関してはトラブルを避けるため、明示しておいたほうが良い。
とくに継続探索者の場合、キャラクターシートを見て本当にこのキャラクターで良いのか聞いておく必要がある。
③PCにとっての「大切な人」を決める
KPは開始前にPCのキャラシートを見ながら、PCにとっての『大切な人』を決めておく。(※探索者にとって『大切な人』の項目を参照)
バックストーリーなどを参照しながら決める必要があるが、プレイヤーが継続探索者の使用を望む場合、バックストーリーにすでに記載されている『大切な人』であったり、過去のセッションで用いた人物をここで持ち出すのはトラブルのもととなるので、なるべく避けたほうがよいだろう。
④情報の描写について
作中で提示する情報はPCの一人称視点で出すのが望ましい。
狙いは「あくまでPCは1人である。」という部分を強調するところにある。
例えば「あなたは」「探索者は」といった切り出し方を避け、「わたしは」「僕は」「自分は」といった形で情報を出すのが良いだろう。
⑤ミスリードの重要性
このシナリオでは、クライマックスのシーンまで『探索者はシナリオ開始直前に「大切な人を埋めに行った」のだと勘違いさせる』というギミックがある。無理にそこに誘導する必要はないが、日付のあるものは描写しないほうが無難だろう。
例えば、携帯電話に残された着信履歴の日付、カレンダー、日記などだ。
⑥舞台であるアパートの外について
探索の舞台であるアパートの部屋からは探索者は出られない。
そしてシナリオ開始時に「出ることはできない。」と明言して良い。
キーパーは「外には出たくない。」「外に出てはいけないような気がする…」という形で描写すると良いだろう。
ただし、ベランダから外やアパートの廊下といった部分に関しては目視できるレベルで描写してもよい。
以下、キーパー情報
~キーパー情報~
【シナリオ・コンセプト】
例え正気度が高く、その人物が狂気の状態に陥っていたとしても、まともな判断を下せているとは限らない。それが孤独であるなら、なおさらのことだ。狂気とは他人からみた相対的な評価にすぎない。
『自らの正気の保証など、どこにも存在しない。』
【シナリオ背景】
シナリオ開始より3週間前、探索者にとって【NPC:大切な人】が事故により亡くなった。
今夜、探索者はすでに埋葬された【NPC:大切な人】の遺体を掘り起こし、魔術<復活>を行うつもりだった。
探索者は、昨日【NPC:友人】に電話をかけたのは、友人をその代償とするためだろう。
クローゼットの中にある金庫には掘り出した【NPC:大切な人】の亡骸(現代日本であれば遺骨だろうか。)と、<無銘祭祀書>の一部である<復活>の儀式を書き写したノートが入っている。
これをどういう経緯で手にしたのかは重要ではない。
しかし、幸か不幸か。探索者はこれらの記憶を無くした。
記憶の喪失現象は<復活>によるものなのか、不定の狂気によるものなのか定かではない。
【シナリオの重要点】
このシナリオ内では唯一【シナリオ背景】に書かれたことだけが確定的な情報である。シナリオ内で実際に起こった出来事に正解はない。
他の様々な情報は、キャラクターの性格といったロールプレイや、キャラクターを操作するプレイヤー自身の想像力によって、起こった出来事を補ってもらう。
最後のシーンは必ず金庫を開け、中身を確認したところで止め、それ以上の描写をしないこと。
それ以降どうなったのかは【シナリオ報酬の選択(※後述)】をしてもらうことで、各プレイヤーの想像に任せる。
【NPCについて】
シナリオ中にはNPCが3人登場する。登場するシーンはチャートを確認すること。
NPC1:警官
NPC2:友人
NPC3:大切な人
この3名のうち、【友人】と【大切な人】に関しては、キーパーが事前に名前や性別を決め、大雑把に探索者とどのような関係であったのかを決めておく。
(このシナリオシート内ではサンプルとして男性探索者を想定し、
NPC2【友人】を「佐久間 荻人(さくま しゅうと):男性」、NPC3【大切な人】の名前を「佐久間 藤乃(さくま ふじの):女性」とした。
探索者とNPC3【大切な人】である「佐久間 藤乃」は同棲の関係にあったという想定でこの記事ではサンプル情報を作成したが、探索者が女性である場合もあるだろうし、臨機応変にサンプル情報を変えて良い。)
またオンラインセッションの場合、NPCには立ち絵などを用意しないほうが好ましい。
これはエンディング後の報酬選択の際などに、立ち絵の有無や視覚情報によってプレイヤー側の選択を狭めない為である。
【探索者にとって『大切な人』】
このシナリオの肝でもあるNPC【大切な人】は、男性であっても女性であっても構わない。探索者に合わせてキーパーが事前に設定する。
設定する項目は以下のとおり。
・名前
・性別
・探索者との関係
・探索者との関係をもとにした作中の提示情報
これらを事前に用意する。
これはシナリオ上の必須項目である。
【シナリオの進め方】
このシナリオは「部屋にあるものを調べることでPCが徐々に記憶を取り戻していく。」という形になっている。そのため「物品を調べるとそれにまつわる記憶が戻ることがある。」という説明をしておくと良いだろう。
重要な情報に関してはPCが調べる宣言をした段階で、あるいはシーン切り替わりの際に提示する。
またシナリオが1人用であるため、重要情報以外の各情報は探索者の技能に合ったものを振ってもらう。
<目星>や<聞き耳>といった基本探索技能だけでなく、記憶に関わる情報に関しては<アイデア>や<心理学><精神分析>などを提案してみても良い。
【シナリオの区分け】
このシナリオは11個のシーンに分かれている。
各シーンの移り変わりは次のシーンへのきっかけとなる『次のシーン移行のトリガー』を参照する。
これらの11のシーンはおおまかに分けて、3つの段階に分かれている。
1:記憶が欠落していることを確認し、部屋の探索を行う (シーン①~⑤)
2:同居人についての情報を探る (シーン⑥~⑨)
3:金庫を開けるための番号を思い出す (シーン⑩~⑪)
特にシーン①~⑤はセットアップの部分であり、なるべく丁寧に進めると良いだろう。
シナリオのラストは『プレイヤーキャラクターが金庫を開け、中を確認したところで席を外していた友人が帰ってくる』ところで止めておく。
その後、シナリオのクリア報酬の選択をすることで、結末はPLに委ねる。
~シナリオチャート~
①セットアップ
場面:浴室
シーン開始時の描写:
「浴槽の中で目を覚ました。ひどく痛む手足、全身の倦怠感。浸かっている湯船の水は冷め、わずかに茶色く濁っている。全身が泥まみれのようだ。髪の毛がひどく汚れている。」
次のシーン移行のトリガー:
自分の身体を調べる、浴室にあるものをひとつ調べる
次のシーン移行時の描写:「浴室から出た。脱衣所の床がひどく泥で汚れている。泥は玄関から続いているようだ。」
提示情報:
髪の毛についた泥・自分の身体・シャンプー、ボディーソープ・鏡
「ここは自分の家の浴室か?」とプレイヤーに尋ねられたら、「思い出せない。」と答えて良い。
また、探索をする際に「物品を調べることで、何か記憶が戻ることがある。」という説明をこの段階でしておくと、記憶に関する情報の提示がスムーズになるだろう。
②つかみ:
『どうやらここは自分の家のようだ。玄関には泥まみれの靴とシャベルがある。何に使ったのだろう。』
場面:
脱衣所・玄関
シーン開始時の描写:
「脱衣所には泥で汚れた服がある。」「玄関には泥まみれになった靴、きれいな靴。そして不自然にシャベルが置かれている。」
次のシーン移行のトリガー:
シャベル、泥または汚れた靴のうちどちらかをひとつ調べ、シャベルの記憶を入手する
次のシーン移行時の描写:
情報【シャベルの記憶】の提示
提示情報:
【脱衣所】
汚れた服・洗面台・バスタオル・洗濯機
【玄関】
汚れた靴・きれいな靴・傘・シャベル・泥・玄関ドア・懐中電灯・靴箱・床・郵便受け
『郵便受け』を調べた時点で、探索者に「どうやらここは自分の家のようだ。」とわかっていい。
③問題の提示:
『記憶が曖昧だ。なくした記憶を取り戻さなければならない。』
場面:
玄関から部屋へ
シーン開始時の描写:
「記憶が曖昧だ。なくした記憶を取り戻さなければならない。」
次のシーン移行のトリガー:
とくになし
次のシーン移行時の描写:
「玄関から続く泥の跡は部屋の中にまで伸びている。」
提示情報:
なし
④生活状態の描写:
『ひどい状態の部屋だ。』
場面:
リビング
シーン開始時の描写:
「部屋の中はゴミだらけで、やはり床は泥で汚れている。テーブルの上に二人分の食器が不自然に並んでいる。」
次のシーン移行のトリガー:
情報【二人分の食器】を入手
次のシーン移行時の描写:
「ゴミに埋もれた床を片付けないと何も探すことはできなさそうだ。」
提示情報:
二人分の食器・用意されたプレゼントの包装・天気・アパートについて・荒れた部屋・ゴミ
⑤ターニングポイント(1)
『自分以外の誰かの存在』
場面:
部屋の中
シーン開始時の描写:
「床のゴミをそのあたりにあったゴミ袋に詰め込む。電池の切れた携帯電話、割れた陶器の破片などが出てきた。」
次のシーン移行のトリガー:
割れた陶器の破片を調べ【折れた歯】の情報を入手、電池の切れた携帯電話を充電する
次のシーン移行時の描写:
「電池の切れた携帯電話を充電する。ほかにはなにかないだろうか。」
提示情報:
化粧品の瓶・割れた陶器の破片・折れた歯・電池の切れた携帯電話
⑥中間点へのつなぎ:
『徐々に、しかし断片的に記憶を取り戻していく。留守録に知らない番号からのメッセージが入っている。』
場面:
部屋の中
シーン開始時の描写:
「部屋の中には本棚やパソコン用の机、ソファ、姿見などといった家具がある。キッチンからひどい臭いがする。」
次のシーン移行のトリガー:
机の上にある携帯電話を手に取り、不在通知を確認する。
任意のタイミングで携帯電話の充電を終わらせ、中を確認したところで大切な人の記憶を提示する。
次のシーン移行時の描写:(分岐させてもよいし、させなくてもよい)
【クローゼットを開けなかった場合】:
クローゼットの中には大切なものが入っている気がする。恐る恐る取手に手をのばす。…玄関からチャイムが鳴った。」
【クローゼットを開けた場合の描写】:
「クローゼットの中には、血のついた洋服、くしゃくしゃになった何かのレシート、金庫が入っている→なんらかのアイテムを調べる→チャイムが鳴った。」
提示情報:
机の上の携帯電話・携帯の待受画面・不在通知・知らない番号・姿見・インターネット回線・本棚・ノートパソコン・洗い物の溜まった流し・冷蔵庫・大切な人の記憶・クローゼット
⑦中間点:『警官の来訪』
場面:
玄関
シーン開始時の描写:
「チャイムが鳴った。インターホンの画面を見ると、ドアの前に男が立っている。警官のようだ。」
次のシーン移行のトリガー:
警官とのやりとりを終え、このシーンの情報3つを自動入手する。
【警官の話の例】
「近隣住民から苦情が入っている。雨の中で何をしていたのか聞かないが、迷惑なので不審な行動は控えるように。」
「それ以外にも以前から、騒音の苦情がきているので気をつけるように。」
次のシーン移行時の描写:
「クローゼットの中のものを人に見られてはならない。」
提示情報:
警察の聞き込み・近所からの苦情・土を掘る感触の記憶
⑧第二のターニングポイントへのつなぎ
『誰かに見られる前にクローゼットの中のものを処分する』
シーン開始時の描写:
「クローゼットをあける。中には血のついた洋服、くしゃくしゃになった何かのレシート、金庫がある。」
次のシーン移行のトリガー:
情報【血のついた服】を入手
次のシーン移行時の描写:
「電話が鳴った。」
提示情報:
血のついた洋服・ホームセンターのレシート・金庫
⑨ターニングポイント(2):
『友人を名乗る男からの電話。どうやら数日前に自分が電話で「今日来て欲しい」と頼んだようだ。』
シーン開始時の描写:
「鳴っているのは自分の携帯電話だ。」
・フェイズ1:
電話に出て話をし、友人の名前、自分の記憶喪失について、自分が友人を呼び出したことについて聞く。
・フェイズ2:
あと10分で友人は自分の家に来る。見られてはまずいものを隠さなくてはならない。
例)残り5分、3分、1分…とカウントしていき、部屋を片付けさせると緊張感が出て良い。
次のシーン移行のトリガー:
シャベル・汚れた服・折れた歯・血のついた服・レシート・金庫を隠す(全て任意)
次のシーン移行時の描写:
「チャイムが鳴った。」
⑩クライマックス
シーン開始時の描写:
「友人だと名乗る男が家におしかけてくる。」
・フェイズ1:
【NPC:友人】は探索者が見られてはいけないと感じるアイテムを隠した場所を何気なく探ろうとする(探索者が嫌がるようならそれ以上は詮索しない。)
・フェイズ2:
友人と対話をし、探索者自身について、【NPC:大切な人】について聞く。
【友人の描写例】
友人は一見フレンドリーそうに見える。しかしPCにはかなり気を使って話しており、特に以下の2点に関してはかなり話しづらそうだ。
・PCの記憶喪失について
・大切な人について
この2つの話題はお互いにとってセンシティブな問題であるかのように振る舞う。
それでもPCが踏み込めば、うつむきながら【友人】は探索者にとって【NPC:大切な人】は3週間前に死んでいると答えるだろう。
次のシーン移行のトリガー:
自分について・【NPC:大切な人】についての情報を得て、大切な日の情報を得る
次のシーン移行時の描写:
「ちょっと外の風を吸ってくる。」と言い、友人がおもむろに席をたつ。
提示情報:
自分について・大切な人について・大切な日について
⑪エンディング
シーン開始時の描写:
「全てを思い出した。今日自分が何をしてきたのか。」
「自分は今日、埋めになど行っていない。掘り返しに行った。」
「金庫の中…金庫の番号は…」
ラストシーンの描写:
金庫の中には儀式について記されたノート、なにか白い塊が入った入れ物が入っている。
まわりは泥で汚れている。よく研がれた刃物がすぐそばにある。
玄関のドアが開く音がした。友人が帰ってきたようだ。
【END】
~狂気の発作の描写~
狂気の発作に関しては、狂気表を用いずに以下の描写を適用する。
狂気の発作(リアルタイム):
「記憶のない状態に対する強い恐怖、なんとしても記憶をとりもどさなければならない("情報マニア"の取得)」
狂気の発作(サマリー):
「"重要な人(シナリオ中指定)"についての関係する情報を取り戻すことへの執着」
~シナリオ報酬について~
エンディング描写後、以下の2種類のうちどちらかの報酬をプレイヤーに選んでもらう。
・通常報酬の場合
SAN 1D10+10
幸運 1D6
既に取得済みの任意の技能3つ +1D10
・呪文取得の場合
プレイヤーが望むなら、SAN-2D8をして呪文を取得してもよい
その場合はSAN回復を行わず、バックグラウンドの恐怖症に <孤独恐怖症> を加える
SAN -2D8
クトゥルフ神話技能+3
信用 -30
<無銘祭祀書の写本>
魔術<復活>
<孤独恐怖症>取得
~途中でキャラクターの正気度が0になったときは~
概要に書いたとおり、このシナリオでは正気度15以下のキャラクターは確定SAN減少により、ほぼ間違いなく永久的狂気となる。
また、そうでなくても40以下のキャラクターは永久的狂気によるロストの可能性が非常に高い。
もしPCが正気度を完全に失い、永久的狂気に陥った場合は以下の描写を行う。
①「大切な人」についての情報を全てと、情報「自分について」を提示する。
②クローゼットの中身、そして金庫の中に入っているもの、金庫の番号を提示する。
③エンディングを描写する。その際、最後の一行「玄関のドアが開く音がした。友人が帰ってきたようだ。」を消去する。
④その後どうなったかは、プレイヤーに判断を任せる。
~情報一覧~
【情報について】
ここに載せた情報は、基本的なものになるが、女性探索者である場合や、【NPC:大切な人】との関係については必要に応じて変更していい。
それ以外でも、セッション中に情報の必要性を感じたならば、随時キーパーの判断で情報を追加してほしい。
その場合、情報に関しては一人称の視点で書くと良いだろう。
ここでは【探索者:男性】を想定して、【NPC友人『佐久間 荻人(さくま しゅうと):男性』】、【NPC大切な人『佐久間 藤乃(さくま ふじの):女性』】とし、探索者との関係は【同棲関係】を選んだ。
更に『佐久間 荻人』と『佐久間 藤乃』は兄妹だという設定とした。
なんらかの原因によって探索者と佐久間藤乃は死別することになり、現在の状況に至ったのだろうが、その理由や経緯を描写してはならない。
事実だけが点々と存在しているなかで、それをプレイヤー自身がどのようにつなぎ合わせるか、そして最後の報酬のどちらを選ぶかがこのシナリオの最重要な部分となる。
【基本的な情報】
髪の毛についた泥
自分の髪には泥がついている
一部は乾いて固まっており、無理に引き剥がそうとすると痛い
いつ汚れたのか思い出せない
自分の体
身体には覚えのない生傷がいくつも手足についている
あまり深い傷ではないものの、しみると痛い
いつ傷がついたのか思い出すことができない
人は記憶に蓋をして埋めたがるものだ
なにかを守るために
SANc
1/1D6
バスタオル
どこにでもある2枚のバスタオル
使い古されていて柔らかさは失われている
しばらく洗っていないのか、わずかに臭う
シャンプー
2種類のシャンプー
片方は自分が普段使っているものだ
もうひとつは誰のものだろうか
両方とも残りの量が減っている
鏡
水垢で汚れた鏡に自分の顔が写っている
頬に手を当てると何故かとても嫌な気分だ
洗面台
洗面台には化粧品やコップ、歯ブラシが並んでいる
コップが2つある
きっと歯ブラシも2本あっただろう
汚れた靴
自分が愛用している靴
靴底はすり減り、泥まみれに汚れている
靴は履く人間を表すという
きれいな靴
誰かの靴
使いこまれてはいるが、どれも状態はきれいに保たれている
大切に使われていたのがわかる
しばらく履いた形跡はなさそうだ
傘
2本の傘
片方は自分のものだろう
両方とも少し埃をかぶっている
シャベル
玄関に立て掛けてある土を掘るための大型のシャベル
比較的新しいもののようだが、取手は泥まみれになっている
なにか硬いものにでもぶつけたのだろうか
先端の金属は一部かけ、ねじ曲がっている
泥
生乾きの泥
赤黒くぬめりとても臭い
玄関・靴・服・髪の毛についていたものと同じものだ
泥(追加情報)
<医学><生物学><科学(医療系・生物学系)><精神分析><心理学>などを用る
いや、ちがう
泥に決まっている
泥(追加情報)
<追跡><科学(地質学系)><鑑定>などを用いる
細かな枯れ葉や木の皮などが混ざっている
この付近のものではなさそうだ
こういった類の泥土は市街地ではなく通常は山や林の中などにあるだろう
玄関ドア
玄関のドア
ドアノブと内鍵は泥で汚れている
この部屋に住んでからそこそこの時間が経っているのだろう
ドアはところどころ手垢で汚れている
外は土砂降りだ
出たくない
いや、出てはいけないような気がする…
懐中電灯
屋外でも使える懐中電灯
防水機能があり、かなり強い光を放つもののようだ
新品のようだが泥がついてしまっている
靴箱
とくに変わったところのない靴箱
自分の靴と、誰かの靴が入っている
この誰かの靴には見覚えがある
たしか自分が買ってきた
汚れた服
泥まみれの服
傘もささずに外に出たのだろう。雨と泥に濡れ湿っている
ズボンのポケットには軍手が入っている
お気入りの服だったのだが
床
フローリングの床
汚れやゴミが目立つ
玄関、脱衣所、リビング、クローゼット前まで泥で汚れている
シャベルの記憶
どうやらシャベルをもって出かけたらしい
何をしにいったのかまるで覚えていないが、他人に言えないようなことをしていたのだけはわかる
身体の節々が痛む
なにか大切な事を忘れている気がする
SANc
1/1D2
天気
今週は1週間土砂降りの雨だった
昨日は雨だった
一昨日も雨だった
先月もそうだった
今日も
明日も、明後日も
アパートについて
手頃な賃貸のアパート
おそらく自分の部屋だろう
住んでからしばらく経っているようだ
1人で暮らすには少しだけ広い
荒れた部屋
ゴミが散らばった部屋
コンビニの弁当のゴミや食べ物の滓、飲み終えたペットボトルなどが散乱している
しばらく掃除をしていないようだ
信じたくはないが自分の部屋のようだ
郵便受け
郵便受けは溢れそうになっている
電気やガス、公共料金の催促状
どうやら先月支払いをしていなかったらしい
どれも自分の名義だ
洗い物の溜まった流し
流しには皿が溜まったままになっている
かなりそのままだったのだろう
皿の表面にはカビが生え、持ち上げるとぬるりとしている
三角コーナーにも何か黒い塊があるが大方予想できるし調べる気にもなれない
ゴミ
しばらく捨てにいっていないのだろう
あたりに散乱している
ゴミ(追加情報)
弁当のゴミが多いようだ
製造年月日からすると1ヶ月近く溜め込んでいるらしい
二人分の食器
二人分の食器がテーブルの上に並べてある
テーブルの上だけはきれいに整っている
食器の横にはプレゼントらしき包みが置かれている
なにかの記念日なのだろうか
用意されたプレゼント
丁寧に包装された小さな箱
きっと誰かへの大切な贈り物なのだろう
開けるべきではない
プレゼントの中身について
靴か何かの箱だろうか
中には何も入っていない
化粧台
化粧品が並んでいる
しばらく使っていないようだ
携帯の待受
自分の携帯電話の待受画面
未確認の通知が溜まっている
割れた陶器の破片
陶器の破片が床に散らばっている
もとはなにかの置物だったようだ
その中に何か白いものが混ざっている
折れた歯
人間の歯のかけら
自分の口を確認するが欠けている歯はない
固く小さなそれを見つめると不思議と尊く感じる
SANc
1/1D4
折れた歯(追加情報)
<医学系><生物学系>
人間の前歯だ。自分のものではない。
強い力が加えられ、折れている。
机の上の携帯電話
自分の携帯電話
暗証番号はわからないが指紋認証で解除された
自分と親しげに誰かが写っている写真が残っている
携帯電話は身近なもの
しかしなぜか実感はわかない
誰かの携帯電話
自分のものではない携帯電話
電池が切れているようだ
充電された携帯電話
待ち受け画面には自分と誰かが写っている
おそらくこの電話の持ち主だろう
とても親密な関係だったようだ
携帯電話は暗証番号でロックされている
(ロック解除などを試みる)
<アイデア>
ロック解除後の携帯電話
なぜか暗証番号は知っている
自分の誕生日だ
持ち主の名前は【サクマフジノ】
持ち主と友人との間の他愛ないやりとりが残っている
以前も同じことをした気がする
SANc
0/1D2
不在通知
不在通知や未読のメッセージが溜まっている
送り主は誰一人として覚えていない
留守録が残っている
「夜分遅くにごめん。
ここ数日【フジノ】を誰も見ていないんだけれど、何か知らない?
…思い出したことがあったら連絡して。それじゃ。」
知らない番号
自分の携帯電話の履歴に残っていた知らない番号
何度も電話がかかってきている
姿見
姿見に自分の身体が写っている
目が落ちくぼみ指先の血色がわるい
自分とはこんな姿だっただろうか
きっとなにかが足りない
SANc
0/1
インターネット回線またはwifi
ネット回線を繋ぐ機器
どこにもつながっていないようだ
本棚
木製の本棚
本だけでなくブルーレイのパッケージなども収められている
エッセイ集など自分のものではない本も並んでいる
時々借りて読ませてもらっていた
本棚(追加情報)
<目星>など
有名なホラー小説が目に止まった
内容は「事故で亡くなった愛する我が子を、古い伝承の残る忌まわしい土地に埋葬する。」というものだ
この小説の結末はどうだったのか、覚えていない
ノートパソコン
自分のノートパソコン
だいぶ長いこと使っている形跡がある
今はネットにはつながっていない
数年前の型なのでそろそろ新しいものが欲しい
また無駄遣いだと怒られそうだけれど
SANc
1/1D2
ノートパソコン(追加情報)
新しいメールは届いていない
メールの内容に変わったところはない
冷蔵庫
少し大きめの冷蔵庫
これなら十分な食料が入るだろう
しかし今はほとんど中には物が入っていない
一緒に暮らすために少しだけ奮発した
長くは持たなかったけれど
SANc
1/1D2
洗濯機
少し大きめの最新式の洗濯機
洗濯の終わった洋服が入ったままになっている
少し無理して買った
後日、ほかのところで買ったほうが安かったと笑われた
それでもきっと買ってよかったと思っている
SANc
1/1D2
【フジノ】の記憶
自分はここで【フジノ】と暮らしていた
今はもういない
SANc
1/1D4
クローゼット
人が入れるほどの大きめのウォークイン・クローゼット
このクローゼットが気に入ってこの物件に決めた
開けたくない
中になにか恐ろしいものが入っているような気がする
SANc
0/1
クローゼットの中
血のついた服、金庫、ホームセンターのレシートが入っている
服とレシートを早く処分しなくてはならない
早く処分しなくては
誰にも見つからないように
処分しなくては
SANc
1/1D6
土を掘る感触の記憶
土を掘っている
今から何時間か前のことだ
土砂降りの雨の中
泥が顔に跳ねるのも気にせず
このことを絶対に人に知られてはならない
SANc
1/1D3
警察の聞き込み
泥だらけで市街地を走る姿を見られていた
幸い何をしていたのか聞かれることはなかった
怪しまれただろうか
怪しまれたに違いない
クローゼットの中のものを処分しなくては
近所からの苦情
どうやら騒音の苦情がたびたび入っていたようだ
この部屋から言い争う音が聞こえていたらしい
何もわからないくせに
血のついた洋服
【フジノ】の着ていた洋服
お気に入りだと言っていた
襟元についたはずの血はすでに乾いている
自分がやった
そんなつもりはなかった
SANc
1/1D6
金庫
暗証番号式の金庫
この部屋には不釣り合いで異様な印象を受ける
解除の番号は覚えていない
確か大切な日付けを番号に設定した
ホームセンターのレシート
最寄りのホームセンターのレシート
買い物をしたのは昨日のようだ
シャベル、軍手、懐中電灯を購入している
このレシートを人に見られてはならない
シャベルも軍手も処分しなくてはならない
友人について
小学校からの付き合いのある友人だ
なんでも相談できる間柄だった
最近は疎遠になってしまっていた
友人からみたあなたについて
ここ数日の自分は精神が不安定だったようだ
極度のストレスによるものなのか、しばしば記憶を無くしてしまう症状が現れていた
誰とも連絡をとらなかったので友人は心配していた
もっと頼ってほしいと言われた
呼び出し内容について
昨日、友人に家に来てもらえるよう頼んだ
仕事終わりに来てくれるらしい
数日前に「話したいことがあるので来て欲しい」と自分が電話したようだ
【フジノ】について
【佐久間藤乃】は21日前に事故で死亡している
深夜、雨の中を歩いていて石段で足を滑らせて落ちた
先々週、【藤乃】は少し離れた山の中にある墓地に埋葬された
どうして【藤乃】が夜中に傘をささずに出歩いていたのか
あなただけが知っている
SANc
1/1D4
自分について
【藤乃】と口論になった夜、あいつはコンビニに行くと言って出ていった
それきりここへは帰ってこなかった
とある本に出会った
その経緯は重要ではない
本には死者を眠りから覚ます冒涜的な儀式とその手順が記されていた
それを忘れないようにノートに書き写すと、金庫の中に厳重に閉まった
以来、度々記憶をなくす原因不明の疾患を患っている
今晩、自分は"埋めに"など行っていない
SANc
1/1D6+1
大切な日
今日から21日前。11月19日。
この日を金庫の番号に設定した
大切なものをなくさないよう、全てしまっておくために
SANc
1D6/2D6
得体の知れない儀式を記したノート
死者の復活について
汝、死したる者を蘇らせんと欲さば血肉と御霊を捧げるべし。
是即ち、汝の友と汝の記憶とを贄とし、死したる者の肉をこの世に呼び戻すものなり。
金庫の中
白いなにか・よく研がれた刃物
なにか白い塊が入った入れ物がある
まわりは泥で汚れている
よく研がれた刃物がすぐそばにある
~サンプル部屋MAPとテキスト~
【浴室】【脱衣所】
【浴室(サンプルテキスト)】
浴室の中には【浴槽】【鏡】【シャンプー・ボディソープ】がある
排水溝は髪の毛で詰まっている
【髪の毛についた泥】が絡まって痛い
【脱衣所(サンプルテキスト)】
浴室から出た。脱衣所の床がひどく泥で汚れている
【泥で汚れた服】が【洗面所】に放り込まれている
【バスタオル】【洗濯機】がある
【廊下・玄関・トイレ・空き部屋】
【廊下(サンプルテキスト)】
廊下の電気をつけた
同じように廊下も【泥】で汚れている。汚れは【玄関】から続いているようだ
玄関には泥まみれになった【汚れた靴】と【きれいな靴】
そして不自然に【シャベル】が置かれており、その横には無造作に【懐中電灯】が転がっている
ほかには当たり障りのない【傘】や【靴箱】などが目に留まる。
【玄関のドア】にある【郵便受け】には郵便物が溜まっているようだ
【リビング】
【リビング(サンプルテキスト)】
玄関から続く泥の跡は部屋の中にまで伸びている
リビングの扉を開けた。
…中は足の踏み場もないくらいに【ゴミ】だらけだ。
玄関もそうだったが、【アパートについて】は見たところ、かなり広く家賃も高そうなのに。
キッチンらしき設備と隣の部屋のドアが見えるが、ゴミに埋もれている。
リビングのテーブルの上だけは小綺麗に整理され、【二人分の食器】とプレゼント…だろうか?【包み】が不自然に並んでいる。
他には【テレビ】や【化粧台】が置いてある。
この【荒れた部屋】の中で生活していたのだろうか?
…記憶が曖昧だ。なぜ自分は記憶をなくしているのだろうか
ゴミに埋もれた床を片付ければ何か手がかりがあるかもしれない。
【リビング(サンプルテキスト2)】
ゴミをどうにかすると【化粧品の瓶】や【割れた陶器の破片】、【電池の切れた携帯電話】【充電用のケーブル】をみつけた。
ともかく、隣の部屋には行けそうだ。
【隣の部屋(自室)】
【隣の部屋(サンプルテキスト)】
この部屋の床も泥で汚れている。
部屋の中には【本棚】や【作業机】、【姿見】、【粗末なベッド】などといった家具がある。そして一番奥には【クローゼット】がある。
…離れているはずなのにこの部屋までひどい臭いが漂ってくる…。臭いのもとはキッチンからのようだ。【冷蔵庫】か【流し】あたり…だろうか。
【クローゼット】
【クローゼット(サンプルテキスト)】
クローゼットをあけた。
中には【血のついた洋服】、くしゃくしゃになった何かの【レシート】、【金庫】が入っていた。
~クレジット~
シナリオ制作:T.B.S.A.
サークル名:TonalGravity
twitter ID:deadmansqtbsa
Thank you for playing.