舞台挨拶『93歳のゲイ』(大阪限定公開)吉川監督「出演者の覚悟や勇気に感謝し、その思いを映画で届けることができれば」 長谷 忠さん「差別されてきた人たちがいて、そこで戦ってきた人たちがいたことをみていただきたい」
大阪での開催初日となる3月24日、かつては治療が可能な精神疾患とされてきた同性愛の歴史を紐解きながら、“93歳のゲイ”である長谷忠さんの生活にカメラを向けたドキュメンタリー映画『93歳のゲイ』が上映され、吉川元基監督と主人公 長谷忠さんが舞台挨拶を行いました。
登壇し席に着くや否や、長谷さんは「生き返った。」とまず一言。会場は温かい笑いが沸き起きおこり、長谷さんのチャーミングな人柄で雰囲気は一気に和やかになりました。
吉川監督は観終わったばかりのお客様を前に、「本日は本当にありがとうございました。普段は日曜深夜に放送されているドキュメンタリー映像シリーズの番組ディレクターを担当しております。映画化というのが本当に想像つかなかったのですが、テレビの場合は視聴者が近いようで遠い存在で、見ている人の表情であったりかどう反応されているかが分からないのですが、映画は、映画を観るためにこのように集まってくださって、最後まで見てくださったことに非常に感謝の気持ちでいっぱいです。今回長谷さんを含めて出演者の方に覚悟や勇気を大変ありがたく思いますし、その思いを映画で届けることができれば、と思っています。」と熱い挨拶をしました。
司会者より3/15に誕生日を迎え94歳になったことを告げられると、長谷さんは「すみません、長生きして。」と返し、再び会場に笑いが。
映画を観た長谷さんは作品の完成度について「よかったですよ。ものすごくよかった。梅田さん(同じくゲイを公表している長谷さんのケースワーカー)とか知っている人がでてきたしね。」と感想を述べました。 吉川監督は「『93歳のゲイ』は映像シリーズで去年の6月26日に放送しました。放送の二日後に梅田さんにお会いして、お礼をさせていただいたのですけど、その時印象的だった言葉が、『自分はゲイに生まれて良かったと思う。普通に私たちのように身近で暮らしているようなゲイの人を扱ったものがなかったので、こういう作品を世の中に広めてほしい』とおっしゃっていました。長谷さんの思いや梅田さんの人生をしっかり伝えるのは映画しかないと思いました。」と映画製作に至った思いを語りました。
また最初に長谷さんの取材することに至った経緯について、「長谷さんを知った時に93歳のゲイの方がいらっしゃるのが驚きだったのですが、その自分の考えが間違っていて、昔から存在していたのに存在がなかったかのようにされてきた人なんだな、と実感しました。存在されて、戦ってこられた人なんだと思い、ぜひ番組にしたい、作品にしたいと思いました。」と話しました。 長谷さんは「政治家の方々にもご覧いただいて、差別されてきた人たちがいて、そこで戦ってきた人たちがいたことをみていただきたい」と語り、最後に「今は昔と違って、政治にも取り上げられるようになって開けてきていると思う。外国の方はもっと開けてますけど、日本はまだ保守的なところがあるかもしれませんが、それでも僕らの若い頃からみたらだいぶ自由になっています。そういう方面に皆さん気遣うようになってほしいと思います。」と話しました。
吉川監督は最後に「この映画を通して、(LGBTQの方が)こんなに身近な存在なんだ、すぐ隣にいるかもしれない、ということを知っていただきたいです。また、長谷さんの人生はまだまだこれからだと思っていますので、引き続き長谷さんに取材させていただきたいと思っていますので、よろしくお願いします。」と引き続き長谷さんへの取材オファーをし、和やかな雰囲気で舞台挨拶は終了しました。