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トリコ怪文書:食べるだけで料理が上手くなる肉

宇宙でボコボコにされて帰ってきたトリコ。そのトラウマからか、部屋から出てこなくなった。それから1年がすぎた頃、急にいくつかの肉を小松に差し出した。

小松「なんですかこれ? 見たことない肉なのですが。」

トリコ「それもそのはずだ、俺がお前のために用意した食べるだけで料理が上手くなる肉なんだからな。」

小松「食べるだけで……? なんだか胡散臭い気もしますが。」

トリコ「いいから食ってみろってお前に必要な”
もの ”なんだからな。」

小松「分かりました。やってみます。」

そういうと、小松は肉の1つを取り、下味をつけてステーキにした。その小さい肉は焼けば焼くほど旨みがどんどん出る。跳ねる脂はきらきら輝いていた。上質なグルメ細胞特有の輝きだ。

小松「トリコさん凄いですよこの肉。筋肉質かと思えば、豊富なグルメ細胞で旨みが溢れ出ますよ!」

トリコ「おう、そうだよな。」

トリコの歯切れの悪い返事に妙に違和感を感じた小松だったが、気にせず調理することにした。次に、さっきとは変わった別の肉も焼いてみることにした。さっきの小ぶりの肉とは違い明らかにでかい。さらに、あらゆる食材の旨みが凝縮したような匂いがする。

小松(何だこの数多の食材を濃縮したような香りは、こんな食材は見たことがない。)

トリコ「それに気づくとはさすがだな。お前は最高の料理人にならないといけねぇからな……。」


小松はできたステーキを皿に並べた。

小松「さあ、できましたよトリコさん。」

トリコ「いや俺はいいよ。そっちのでかい方だけ半分くれ。」

あの美食四天王トリコが半分しか食べないことに違和感を感じた小松だが、目の前の肉に直ぐに視線を移した。

小松「分かりました。では、いただきます。」

小松は小ぶりの肉を口にした瞬間、体中のグルメ細胞が活性化しみるみる元気になっていく感覚を感じた。それよりも料理人としての実力が上がった感覚に驚いた。本当に食べるだけで料理が上手くなる肉だったのだ。

小松「トリコさん! 凄いですよ! この肉を食べただけで、料理人としてさらに成長したように感じます!」

トリコ「その調子だ。次は、そっちの肉も食ってくれよ。」

トリコはもう一方の大きい肉を指さした。トリコが半分食べると言っていたが、実際は一口食べて残されていた。

小松「分かりました。ではいただきます。」

小松は大きめの肉の一欠片を口に入れる。こちらはさっきの肉とは全く違う。まるで、無数の食材を一気に味わったかのような脂に驚いたと同時にどこかで味わったような気がしてならない。そう、あのスープに……。

トリコ「おっ、気づいたか?」

小松「トリコさん、この肉って……。」

トリコ「あぁ、ユンだ。」

小松「え?」

小松の視界がぐにゃっと歪んだ。小松は震えながら、さっき食べた小さい方の肉に指を指す。

トリコ「ん? あぁそっちは大竹と中梅だ。」

小松「え? 竹ちゃん……梅ちゃん……?」

小松の脳内でまだ人の形をしていた頃の大竹と中梅を思い出した。

記憶の大竹「小松っちゃん!」

記憶の中梅「小松っちゃん!」

大竹、中梅「「どうして……。」」

小松「おぇぇぇぇ。」

あまりの出来事に小松は吐いた。とにかく吐いた。しかし、トリコが小松の首を掴み嘔吐を無理やりとめた。

トリコ「おいおい吐くなよ。それはお前に必要なものなんだからよ。」

トリコは小松の吐瀉物を手ですくいあげ、小松の口にねじ込んだ。

小松「んんーん!」

トリコ「宇宙でのこと覚えているか? 俺達、宇宙の食材にボコボコにされたよな。俺はトラウマで寝込んじまったよ。」

無理やりねじ込まれた肉達はもう小松の胃の中だ。

トリコ「でだ、気づいたんだよ小松。お前のせいだってな。」

小松はじたばた抵抗するが、大竹と中梅の上質なグルメ細胞が故なのか、今までにないくらいの美味しいという感覚に気持ち悪くて仕方がなかった。

トリコ「お前の腕が未熟で、その料理を食べているから俺も未熟で弱い。だから、お前の料理の腕を鍛えることにした。」

完全に消化された感覚がする。小松と共に修行した大竹と中梅はもういない。小松は涙が溢れて止まらなかった。

トリコ「そこで考えたんだよ。地球の料理人全員のグルメ細胞を食ってしまえば、地球一の料理人になれるんじゃねえかって。」

涙と嘔吐でぐちゃぐちゃになった小松は、床に落ちている自分の包丁を手に取った。

トリコ「試しにGODの調理に参加した大竹と中梅のグルメ細胞を食べさせてみようと殺してきた。ユンは目撃者だから殺した。それだけだ。」

トリコ「だから小松。これは全部お前のためのものだ。全部だ。全部食え。」

小松は立ち上がったと同時に包丁をトリコに向けた。

小松「返してください。竹ちゃんと梅ちゃん、そしてユンを返してください。」

トリコ「ん? 何言ってんだ? そいつらならいるじゃねえか。」

トリコは小松の腹に指を指した。

トリコ「お前の腹の中に。良かったな〜これでずっと一緒だ。」

トリコの衝撃の一言を聞いて、小松は覚悟を決めた。

小松「トリコさん、いえトリコ。ぐずっ。もう狂ってしまったんですね。今僕が終わらせます。」

トリコ「おいおい。美食屋に料理人が勝てると思ってんのか?」

トリコは小松に目掛けて軽めの釘パンチを放った。しかし、小松の包丁に弾かれた。

トリコ「なっ!?」

小松「これが僕の……ぐずっ。最後の調理だ。」

次回、トリコ最終回
「暴走したトリコを小松が泣きながら調理して連載終了」

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