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MCに学ぶ

推しの田畑勇一さんがゲスト出演されるから、と
リラックスして見始めたデニスさんのライブ。
途中からMCさんの姿が自分の仕事と重なり、
思いがけずひとり反省会となった。

〔2021.09.13〕
※ネタバレあります。ただし、自分の記憶をもとに書いているので、細かい文言などは違う場合があります。

デニスの「ちょっとツラ貸せや」

本来はデニスさんとゲストコンビによるネタバトル。
今回は、幸雄さんが腰痛で入院中のため、ピンで活動する松下(のぶ)さんのMC力を鍛えるトレーニングライブに。

講師はパンサー向井さんと田畑さん。
早速「オープニングの間がもたない」というお悩みから。
松下さんの目がギンギン。
先輩から技を盗もうという熱意がみなぎっている。

3つの模擬コーナーを行なう。
松下さんが行き詰まった時、
もしくは講師陣が「見てられない」と判断した時は、
SOSボタンで止めてコーナーゲストを退場させ、
指導を挟んでいく。

コーナーゲストは、松下さんと同期のTEAM近藤さん、西村ヒロチョさん、1期後輩のバビロン千葉さん、カラタチ前田さん。
それぞれ個性的で豪華なメンバー。

オープニング

コーナーゲストを呼び込むところからスタート。
TEAM近藤さんのフリーダムなパフォーマンスに圧倒されて早々にSOSボタンを押す松下さん。
向井さんがすぐに、ゲスト全員を制御できる位置取りをアドバイス。

「最初の紹介でのMCの振る舞いで、お客さんは演者をどのように見たら良いのか判断する」というアドバイスは印象的だった。
MCがイジれば、客は「この芸人さんはイジっていい人」と判断する。どこが面白いか説明してあげれば、客は「この芸人さんはそこを楽しめば良いのだな」とわかる…と。

このライブを完全に緩んだ状態で見ていた私に、ガツンときた。そうか、私たちはそのように、MCを道標にしてライブを見てるのか。

会議やイベントで司会役をする時、参加者の方とコミュニケーションをとることがあるけれど、あの時に私が発する言葉って、相手と私の間だけじゃなく、周りが相手をどう見るかにも、影響を与えているのか。

向井さん「のぶくんが一番楽しまなきゃだよ。そうしないと、お客さんどう楽しんだら良いかわかんなくなる。」

ジェスチャーゲーム

開始前、
「制限時間2分と言ってもMCの裁量で延ばせる…」
「なるべく正解した方が盛り上がるからMCがヒントを出して…」
とバンバン「MCのウラ事情」をさらけ出す松下さん。
「ここで言う⁈」と慌てる講師陣。
松下さん、客も「自分の応援者」として巻き込んでいくストロングスタイル。このカリスマ性が素敵だなぁと、一気に松下さんに興味が湧く。

実際のジェスチャーゲームは、淡々と進みすぎてストップがかかったり、松下さんが何問クリアしたか数えてなくて延々と続いたりといったハプニング連発。

一生懸命ジェスチャーゲームに取り組むコーナーゲスト4名の健気さが愛おしい。

モノボケ

続いてモノボケ。
松下さんMCでも特に問題なく進行。
ただ、ヒロチョさんが1回も挑戦せずに固まっておられた。

松下さん「田畑さんのを見たいです」
で、急遽お手本を見せることになった田畑さん。
「今日は俺も殺される(スベらされる)んか…⁈」
と恐る恐る立ち上がったものの、
マイクを持てばいつもの名MC田畑さん。

スタートゴングの前、
「どんどんいきましょう」
「スベるとか気にしないで」
「手数出していきましょう」
とさりげないコメントを軽くポンポンと投げかける。
ゲストの皆さんの顔が少し緩む。
「手数」というワードが演者さんの気持ちを軽くして、
スタート直後から積極的なモノボケが続く。

いつもは演者さんのモノボケに注目するけど、
今日は田畑さんの動きを見てみる。
モノボケのあとの「あはははー」という柔らかい笑い声で
ホッとする。私の推しは声が良いのだ。

不合格の場合もかわいく「…だめぇ。」
ダメージが少なそう。

モノボケをする前や後、
演者さんは頻繁に田畑さんを見る。
これは他のライブでも不思議に思っていたことで、
演者さんたちはとにかくよく田畑さんを見る。
田畑さんのお顔って、
もしかしたら人を安心させる効果があるのかもしれない。

松下さんの回では前に出られなかったヒロチョさんも、
オープニングで「僕はこの場にそぐわないと思う」と言っておられたカラタチ前田さんも、
意気揚々とモノボケを繰り出している。

奇跡の配信トラブル
モノボケの終盤、配信トラブルで映像が止まり、音声だけになった。
それがこの場面↓

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「戦争は!どっちが勝ちとか、ない!」
という力強いセリフとともに、
凛々しい顔で手を挙げるTEAM近藤さん。
それをストップウォッチ片手に優しく見つめる田畑さん。
描ききれなかったけど、後ろで懸命にモノボケの準備をする、ヒロチョさん、千葉さん、前田さん。

とっても良い画で止まったまま、音声だけでライブは進行していて、私は至福の6分間を過ごした。

引き出すMC
リアタイ時は止まっていた部分をアーカイブで見直すと、終了ゴングの直前から、
松下さんが腹を立ててSOSボタンを連打していた。
「なんか、みんな僕の時より面白い。」

もちろん、ライブ上の演出で松下さんをイジっておられるんだろうけれど、田畑さんのスタート前の声かけでハードルが下がったり、発表した後にさわやかに笑ってくれることで自信がついたりする部分は確かにありそうだった。

大喜利

続いて大喜利。
モノボケでのアドバイスをちゃんと取り入れた松下さんの進行は、悪いところはなさそうに見えた。
ただ、場の雰囲気はなぜか重く、カラタチ前田さんは途中で「ギブアップです」と宣言。
最終的にTEAM近藤さんが優勝!となったものの、当の近藤さんが怒りながらSOSボタンを押して退場してしまった。

そこで向井さんのお手本MC。
最初の回答が発表されるまではそんなに違わないと思ったけれど、1人目の回答を発表したあたりから雰囲気がどんどん変わっていった。ここでも、回答を聞いた直後の向井さんの笑い声が効いていた。
「いいねぇ。」「おもしろいねぇ。」と褒めるコメントはもちろん、途中で「強いワードでひとこと、とかでもいいよ。」と具体的なアイデアを出されたのも印象的だった。

ここでも終盤で松下さんが怒ってSOSボタンをバンバン。
演者さんたちは「えー、もっとやりたい。」「楽しい。」
松下さん「みんなずるい。向井さんの時だけ面白い。」

千葉さん「松下さんの緊張感がこっちにも伝わってきて固くなってしまう。」
ヒロチョさん「向井さんは仲間になってくれている感じ。のぶくんは『来いよ!』みたいな感じでビー玉のような目で見てくるから怖い。」
向井さん「だって本当に面白いから笑ってるだけだよ。」

松下さんは、回答者の皆さんに「さあ、どんなことを考えたの?見せてごらん。」といった、審査員的な、もっと行くと「見せてみろ!」といった敵のようなあり方。
一方、向井さんは「一緒に面白い答えを出そう。」というスタンス。
そういう違いがあったのかもしれない。

ひとり反省会

このライブを見たあと、思いがけず、仕事での自分や子どもとの関わり方について考え、ひとり反省会が始まった。

(以下、身バレ防止のために、私がある企業の管理職で、数人の部下とともにあるプロジェクトを遂行していると仮定して、書いていきます。)
*本当は企業に勤めたことなど一度もありません。

今回、向井さんと田畑さんから学んだこと。

◯部下はもともと良いものをもっている。
 それを引き出せるかどうかは、上司の腕次第。

◯部下がうまくいかない時、それは部下の能力が低いのではなく、上司の関わり方のせいであることが多い。

◯ある部下への声かけは、その部下のモチベーションを左右するだけでなく、他の部下がその部下をどう見るか、ひいては顧客がその部下をどう見るかにも影響を与える。

◯会議等で、発言を促す際にハードルを下げる言葉を投げかけると発言が出やすい。

◯どんな発言が出ても受け止めるというスタンスを示す。

◯発言に対する反応大事。面白がる、褒めるのはもちろん、良いと思った点をさりげなく言語化して共有する。

◯発言がクリーンヒットでない場合、「次行こう」と促し、失敗というのではなく次へのステップだという捉え方をする。

◯「見せてみろ」というスタンスよりは、アイデアをたくさん出し合いながらみんなでだんだん良いものにしていこうという構え方。

◯部下に「この人になら何を出しても受け止めてくれる」という安心感を与える。

◯このプロジェクトに対して誰よりも前のめりである。

…などなど。

改めて、MCさんってすごいなぁ。
推しが一段とかっこ良い。

田畑さんのMCは何度も見てきたけれど、
上記のようなことをすべてさりげなくされるので、
これまで気づかなかった。
今回、松下さんが向井さんと田畑さんからMCのコツを引き出してくださって、本当にありがたかった。

MC育成ライブ

こういうMC育成ライブ、もっと見たい。
もっともっと学びたい。

ちょうど田畑さんが、
ほんまけラジオのスカチャン宮本さん回で、
こういうことを言われていた。(24:30から)
「今、日本の教育が変わってきてて、学校の先生方にMC能力みたいなのが必要になってくるらしい。俺めっちゃMCするから、そういうので役に立てへんかなーって。」

需要あります!需要あります!
私は学校の先生じゃないけど、
切実に、MC能力高めたい!

この方面のお仕事の広がり、期待。

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この日記を書いている最中、
ちょうど田畑さんが神保町のライブ
「シン・漫才タッグマッチ」のMCをなさっていた。

私は出演する4組をほとんど知らない。

4回対戦があり、対戦毎に田畑さんの「中MC」が入る。
私は、知らないコンビの新ネタをちょっと緊張しながら2組見て、田畑さんの登場でホッとひと息つく。
田畑さんが時間つなぎのために軽く話されるトークで、
衝撃デリバリーは和田さんのビジュアルが個性的だけど、変なことを言うのはむしろかつやまさんなんだ、とか、
オドるキネマは橋本さんの女の子の演技が面白い、
などを知る。

漫才中にぼんやり感じていたことを言語化してもらった感じ。それを踏まえての2巡目の漫才は、4組の面白さがよりくっきりと伝わってきた。

MCってすごい。MCってこわい。

推しの凄みをまたひとつ知って、
沼の階段を、また一段降りる。

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みき
僭越ながら公開しました。