好きな漫才を見続けられるということ
M-1グランプリ2020でマヂカルラブリーさんが優勝した翌日、たばふじちゃんねるからネタ動画が消えた。
好きな漫才を見続けるって、こんなに難しいことなのか…。
田畑藤本さんの漫才が好きだ。
漫才で「金属部品に剪断応力をかけていくところをやりたい」というフレーズを初めて聞いた時は、快感で体が震えた。
追い詰められた時に耳を塞いで「水素、ヘリウム、リチウム、ベリリウム!」や「sin、cos、tan…!」などと唱えていくのも好きだし、〔童話〕や〔水素水〕で世の中の常識や流行を論破していく感じも心地良い。
たしかに、万人受けするタイプの漫才ではないかもしれない。科学用語が出てくるだけで拒否反応を起こす人もいるだろうし、頭を使って見る漫才は好きではない人もいるだろう。
でも私にはそれが気持ちいい。
とにかく気持ちいい!
疲れた時は〔やりたい事〕で藤本さんが「点Aと点Bがグラフ上をすれ違うところをやりたいねんけど」と言っているのを見て、ちょっと想像してくすっと笑って癒される。仕事で失敗した時は、〔爆弾〕の藤本さんのマッドサイエンティストぶりを見て大笑いして切り替える。
半泣きで帰ってきても、後悔の唸りが収まらない夜も、たばふじさんの漫才が笑顔にしてくれた。1日の終わりにたばふじさんの漫才を見るのは、今事情があって夜に酒が飲めない私にとってのささやかな晩酌だ。
そのネタ動画が消えた。大阪チャンネルに残っている漫才以外はもう見られない。
あーーもう見られないのかぁ!
あーーー!
アーカイブさえ残っていれば、いつでも田畑藤本さんに会えると思っていた。でも、ご本人たちが扉を閉めてしまえば、もう会いにいくことはできないんだな…。
好きな漫才を見続けることができるって、普通のことじゃない。
いつまでもあると思うな推しのネタ。
修行だ、修行だ。
人生は、儚さの連続だ。