見出し画像

地方が経済成長を牽引し東京の尻拭いをしている事実

地方創生とは何だったのだろうか


いまから10年前の2014年、増田レポートをきっかけに地方創生が盛り上がりました。地方創生の目的は東京一極集中の是正を目指し、2020年に東京圏への転入と転出が均衡する状況を目標とされました。しかし結果は総額1兆円以上の予算を投下するものの東京圏への転入超過はむしろ加速し、目標期限の2020年には新型コロナウイルスが都市圏への流入を抑止したという笑えないオチがついて終わりました。

東京一極集中を是正する目的としてよく言われるのは人口減少対策です。一般的に東京等の都市部の合計特殊出生率は低く、地方(特に西日本)は高い傾向にあります。ただでさえ人口減少が進む我が国において、東京都に人が集中すると出生数がさらに減り、人口減少のスピードに拍車がかかる。したがって合計特殊出生率の比較的高い地方に人口を留めることで少しでも人口減少のスピードを緩和しようというものでした。

これはこれで合計特殊出生率の計算方法のトリック※に引っかかっており、問題なのですが、もう一つ見逃していけないのは東京は経済成長が全然できていないという点です。


東京が日本経済を牽引しているっぽい雰囲気は本当なのか?

東京一極集中を擁護する立場の意見としてよく聞くのは

「東京は日本の経済成長を牽引している。東京に若者が集まって経済活動を行うことは日本の経済成長に貢献しているのではないか」

という趣旨のものです。(完全な印象論ですが東京の経営者に多い気がします)

そこで、2008年から2018年の都道府県別のGDPと経済成長率を見てみましょう。ちょっとデータは古いのですが新型コロナウイルスの影響が皆無の期間としています。

出典:内閣府 経済社会総合研究所

なんと1位は沖縄県で全国平均の約3倍の成長率となっており、インバウンドの増加とそれに伴う投資の呼び込みが理由の一つとして考えられます。それ以外では東北勢が入っているのですが、これは東日本大震災からの復興が影響しているかもしれません。また福井県や青森県の低成長は原発稼働の停止が影響している可能性があります。ここで特筆すべき点は東京圏や大阪圏は日本の経済成長を牽引しているわけではない、ということです。東京都の経済成長率は5.66%で27位、大阪は4.75%で35位と共に全国平均以下となっています。首都圏でも平均を超えたのは埼玉県だけで神奈川県、千葉県は低迷。大阪圏もインバウンドで盛り上がる京都府がかろうじて平均超えとなってなっているくらいで滋賀県を除き近隣県も辛い状況となっています。

都道府県民一人当たりの経済成長をみると悲しい現実が

さらに一人当たりGDPとその成長率をまとめたのが以下です。都道府県のGDPを人口で割ったものでそこの都道府県民一人が生み出した付加価値とその増加率となります。

出典:内閣府経済社会総合研究所と総務省統計局から筆者が編集

東京圏、大阪圏のような大都市には全国から若者が流入し人口増加を続ける一方、地方都市からは若者が流出し人口減少している構造になっています。人口増加率に比べ経済成長率がそれ以上でなければ一人当たり経済成長率はマイナスになります。そしてご覧の通り一人当たり経済成長率でみると首都圏がワースト3を占拠し、また関西圏でも大阪府が44位とそれに続く格好となっています。上位は東北勢が占めており東日本大震災の復興予算も影響していると思われますが、東京圏、大阪圏が日本の経済成長の足かせとなっていることは一目瞭然です。経済成長を牽引しているのは(震災復興を除いたとしても)北関東や九州となっており、基本的に都市部は成長せず地方が経済成長を牽引している構図となっているのです。



生産年齢人口あたりの経済成長率は30倍以上の差をつけられる

ちなみに、一人当たりで経済を見るときにより実態に近いのが”生産年齢人口一人当たりの経済成長率”です。一人当たり経済成長だと、働いてない0-14歳、65歳以上も含まれてしまいますが、生産年齢人口だと生産に活動に従事している人の割合が多いため、働く人一人当たりが生み出す付加価値額が実態と近くなります。

出典:内閣府経済社会総合研究所と総務省統計局から筆者が編集

そして、感覚的に掴むためにも上記成長率の折れ線グラフも記載します。

出典:内閣府経済社会総合研究所と総務省統計局から筆者が編集

ご覧の通り、東京都が大きく落ち込み、中京圏、九州が高い水準となっています。東京都の約20倍の成長率を記録する県もあり、東京都は日本の経済成長を引っ張るどころか完全に足を引っ張っている状況であることが分かります。しかし東京都は唯一の衰退となっておりこの10年間何をしてきたのでしょうか。東京は経済成長率の高いしい地方から若者を吸引してグイグイ衰退させ日本経済の足かせとなっているにもかかわらず東京が日本の経済成長を牽引していると思い込むという茶番が起こっている。成長できないのであれば貴重な人的リソースを吸収しないでもらいたいところです。東京一極集中是正は人口減少対策だけでなく経済成長対策でもあるのです。



この状況で東京の会社が地方に貢献できること

地方のことはほおっておいてもらって東京をなんとかしてください。

この状況で若者ができること

東京に行かない。

※合計特殊出生率の計算方法を簡略化すると”分母が15-49歳の女性人口、分子が出生数”なのですが、15-24歳の女性が出産するケースは少ないです。その出産可能性が低い若者層が東京に集まってきているので分母が増えるわりに出生数が増えず、実情よりも出生率が低く出てしまうというカラクリがあります。

追記(8月19日)
東京は規模が大きいので日本の経済を牽引していることには違いがないのではないか?という至極当然なご指摘を賜りましたので、日本の経済成長または経済成長率に表記を統一しました。ご指摘ありがとうございます。読者の誤解と炎上を少し回避できました!



いいなと思ったら応援しよう!