見出し画像

コロナワクチン大量破棄について考える

 私の郷里である茨城県水戸市は、江戸時代の徳川御三家である水戸藩が治めた土地である。第9代藩主徳川斉昭が造った藩校である弘道館が今でも現存している。弘道館は当時の藩校としては珍しく、医学部(医学館という)を有した現在の総合大学的な教育機関であった。斉昭公が示した医学館設立の趣意書が“賛天堂記”として残っている。 
 そこには、「身分の差を問わず、領民の健康を守ること。そのためには、薬の外国(中国や朝鮮に加えて西洋医学も導入され始めていた)依存を極力避け、国内の材料で自ら製薬する道を研究せよ。外国に依存すれば、経費がかさみ広く医療を行うことは難しい。また、国際関係が緊張すれば薬を得ることはできない。それは国の力を減ずることと等しい。」と書かれている。
 実際に水戸藩は、1850年頃、天然痘の流行に対応するために、医学館の医師達が種を造り、村々を巡り、種痘・牛痘を行ったことが記録に残っている(水戸弘道館小史:鈴木暎一著、文眞堂、2003年)。

 2024年4月、厚生労働省は「ファイザー社(米国)・モデルナ社(米国)製の新型コロナ(オミクロン株対応)ワクチン、2億4415万回接種(想定金額6653億円)分の薬剤を廃棄した」と発表した。佐々木昌弘感染症対策部長は、「その時の状況によって必要なワクチンを購入してきた。無駄とは考えていない。」と説明した。
 薬品とはそういうものだ。私の病院は救急医療を行っているので、いつどんな患者さんが救急搬送されてくるかわからない。そのため、必ず余裕を持って、薬品や医療資材を準備しておく必要がある。その中にはほとんど利用される機会が無くても、常備しているものもある。そのため、使用期限が切れてしまい、破棄となる薬品・医療資材は必ず発生する。

 日本の政府がコロナワクチンを大量に破棄したことは必要な対策を行った結果だと思う。しかし、私は厚労省の発表に不安を感じずにはいられなかった。それは、破棄した薬品がすべて外国(この場合は米国)から輸入されたものであるということだ。日本では独自のワクチン開発に事実上失敗した。そして、日本国民の命を救うために、外国企業から薬品を買うしか方法がなかったのである。この事実を反省的に考慮しない日本は大丈夫なのか?と感じてしまう。

今、私たちは江戸時代のお殿様の英智を思い出さなくてはいけない時なのかもしれないと考えた。

追記:写真は現存する医学館の門:薬医門です。1500年代の安土桃山時代に建立され、水戸藩がずっと維持管理してきたと伝えられています。


いいなと思ったら応援しよう!