序章の始まり
ウルトラマンメビウス。宇宙警備隊に所属し、ウルトラマンタロウの教え子でありウルトラ兄弟の一員。今は自身の教官、タロウのように後輩を指導できるよう勉強中。
デビルスプリンター。それは宇宙の災厄、ウルトラマンベリアルが宇宙中へ残していった細胞の破片。それは怪獣を凶暴化させる力を持ち、宇宙各地に混乱をもたらしている。宇宙科学技術局はこれに対抗するためのアイテムを開発していた。
この話は、あの戦いへと続くアナザーストーリー。
僕はウルトラマンメビウス。そしてここはM78星雲、光の国。
僕が向かっている先は、ヒカリのラボだ。デビルスプリンターの対策のため、ヒカリは毎日ラボにいる。皆はヒカリが寝てないとか徹夜してるなんて言ってるけど、そんなことは無い。いや、1人ならそうかもしれない。僕が徹夜させないように寝させているんだ。そうじゃないと本当にみんなの言う通り、毎日徹夜するかもだからね。
僕はそんなヒカリの為、行ける時は積極的に手伝いに行ってる。今日も手伝いに行く予定だ。
「やぁ、ヒカリ。」
「メビウスか。」
「メビウス兄さん!」
そう元気よく僕の名前を呼んでくれたのは、ウルトラマンゼット。何でかは詳しく聞いてないけど、"ゼット"って名前はエース兄さんが名付けた名前らしい。今は宇宙警備隊の一員で、ゼロの押し入り弟子をしている。ヒカリが作っているウルトラメダルの被験者でもあるんだ。
「ゼット、調子は……って、聞かなくても大丈夫か。相変わらず元気そうだね。」
「はい!ゼロ師匠やヒカリ先生に頼られるなんて感無量です!」
と話していると、そこに彼がやってくる。
「よぉ、ゼット!」
「師匠!」
ウルトラマンゼロ。セブン兄さんの息子でレオ兄さんの弟子、そしてゼットの師匠だ。本人は認めないけど。そんなゼロをからかうのが少しだけ楽しい。なーんて、ヒカリに言ったらくすくす笑われた。
「やぁ、ゼロ師匠。」
「メビウス……お前はそんな言い方しないでくれよ……。」
「フフフッ。その言い方、まるでゼットは良いみたいな感じだね?」
「ばっばか!んなわけねぇだろ!!」
「え〜〜、俺は弟子として認めてくれてるんですか〜?」
「てめぇ……ブラックホールに投げ飛ばしてやる!」
そう言うとゼロはゼットに向かって走り出した。ゼットは慌てながらも飛び出したもんだから、ゼロはゼットを追いかける。
「勘弁してくださいよ師匠!冗談ですって!!」
「うるせぇ!!師匠って呼ぶんじゃねえ!!」
「うわああああああ!!!!!」
「俺から逃げようなんざ……2万年早いぜ!!!」
「あ、ちょっと!……まったく。」
「お前が原因だろ?」
ヒカリが笑いながらそう言う。こんなやり取りはほぼ毎日だ。
「まぁいい。もう少しで終わる。」
「僕も手伝うよ。」
「あぁ、頼む。」
そう言い僕はヒカリの作業を手伝う。元々僕は授業で習った程度だったけど、今までヒカリの手伝いを結構やってきた。その結果、今では新人の局員以上には出来るらしい。
「これは……フュージョン形態の?」
「あぁ。ゼロから言われてな。これはゼット用のライザーだ。」
やっぱりゼロはゼットのこと可愛がってるじゃん。そう思いながらもヒカリの話を聞く。
「あとはゼロ、セブン、レオの力を使う姿の調整だ。」
「分かった。」
この調整もヒカリがする。ジードくんのライザーはベリアルが手を加えたものだけど、あれの元もゼロのライザーもヒカリが調整している。あくまで基本は使用する本人の能力に合わせて、ヒカリはその姿毎の特性等の調整だ。
「この3人って事は……格闘基本にした方がいいかな?」
僕はヒカリに提案する。
「あぁ。ゼット自身もセブン一門の戦士だから、格闘技はあいつも出来るだろう。」
「能力はどうする?」
「そうだな……あいつは大ぶりな攻撃をする癖があるからな……。」
「だったら、スピードメインなんてどう?彼の攻撃力は申し分ないけど、素早く戦うのは難しい印象もある。」
「そうか……流石、ゼットの面倒も少しは見てるだけあるな。」
「タイガほどじゃないけどね……。」
ウルトラマンタイガ。タロウ教官の息子で、僕の弟弟子。最近はタイタスとフーマっていうウルトラマン(そしてヒロユキっていう地球人)と"トライスクワッド"を結成している。タイガが幼い頃は、僕も可愛がっていた。一緒に特訓することや、地球での出来事を話す時もあった。
「タイガか……あいつは今何をしているんだ?」
「彼なら今はトライスクワッドとして、デビルスプリンターに向けて動いていたはずだよ。」
「たまには会いに来れば良いのにな。俺も会いたいが、フィリスも会いたがっている。」
「そうだね…。僕も言ってみるよ。」
そんな話をヒカリとしていた時にふと思った。
「僕も弟子が欲しいかなぁ………なんて。」
「………どこかの世界のお前には、弟子がいるかもな。」
ヒカリがしばらく手を止めて、そう答える。どうやら心から漏れていたらしい。
「フフっ、かもね。ごめん、急に変なこと言って。」
「大丈夫だ。………それに、俺も見てみたいかな。お前の弟子と……お前が師匠として教える姿が。」
「……ありがとう。」
そう答え作業を進める。そして……
「…完成だ…!」
「おめでとう!とりあえず大きな山は超えたね!」
そう、これはあくまでゼット用。予定としては、ゼロやジードくんも使う。ゼットはまだまだ未熟だから、先に作ったんだ。
「あぁ、お前の協力あってだ。感謝している。」
「そんな、僕は手伝っただけで……。」
「いや、お前がいなかったらまだまだかかっていた。俺一人の負担も増えただろうしな………今から俺はこれをゼロに届ける。」
「じゃあ僕はゼットの特訓に行ってくるね。」
「分かった。じゃあな。」
そう言うとヒカリは飛んで行った。あの二人はもうそろそろ戻ってくるだろう。ゼットは気晴らしでコロセウムに行くのは読めている、だから僕はコロセウムに先に行く。
行く道中で僕はさっきの言葉を考える。
僕が師匠、か………。リュウさん達はどう思うだろう。
コノミさんとテッペイさんはとても喜んでくれそうだし、マリナさんとジョージさんは弟子に色んなこと聞き出しそうで、サコミズ隊長は静かにおめでとうって言って………リュウさんは……泣いて喜んでくれるかな………。
もう居ないって考えると、今でも少し寂しく感じる。でも、もう僕は迷わない。僕が….........いや、僕らが変えてく未来。絆は途切れやしない。あの人達に胸を張って誇れるよう、一層頑張らないと。僕はウルトラマンメビウス………CREWGUYS所属のヒビノ・ミライなのだから。
エピローグ
「ハァ…ハァ……ハァ…。」
「お疲れのようだな。ゼットはどうした?」
「ハァ………ヒカリか……。ゼットならなんとか撒いてきたぜ。」
「そうか、頼まれていたものを届けに来たぞ。」
そう言うと、ヒカリはウルトラゼットライザーとゼットホルダー、ウルトラメダルを渡した。
「おっ、サンキューな。」
「これは一応、武器としても機能できるようにしている。ウルトラフュージョンはゼット専用だが、武器としてはゼロも使える。」
「分かった、丁寧にありがとなヒカリ。」
「…………タルタロスの方はどうだ?」
「あぁ、ウルトラリーグの仲間は集まってきてはいる。が、相手は時間と時空を平気で超えるような奴だ。これまでのヤツらとは訳がちげぇ。戦力は多いに越したことはない。」
アブソリュートタルタロス。様々な並行世界に行くことが可能な究極生命体。これまでのベリアルやトレギアの並行同位体は彼が関与している。相手が強力な上、目的など不明な点も多いため光の国でも極僅かの者しか知らない。ウルトラリーグとはタルタロスを迎撃するためのチームである。
「そうだな。俺も…。」
「いや、ヒカリはメダルの調整を頼む。デビルスプリンターの方も大事だ…。とりあえず俺はこれを頃合いを見てゼットに渡す。」
「すぐには渡さないんだな。」
「あいつはまだ大事なもんが見えてない時期だ。一昔前の俺のようにな………。余程の緊急事態になれば渡すさ。」
「彼のことをよく分かっているな。」
「……俺なんかの弟子に本気でなろうとしているやつだ。俺もそれには応えてやらないとな。」
「……。」
そこに1つのウルトラサインが届く。惑星エビルにて、ユリアンと80がゼットン軍団の襲撃を受けたというサインだった。
「チッ…!これからだってのに!」
そう言うとゼロはウルトラリーグのメンバーに伝える。ゼットン軍団を操る宇宙恐魔人ゼットには、タルタロスが関与してる疑いがあるからだ。ゼロは再びタルタロスと対峙した際に決着をつけるつもりなのだ。
「俺は行くぜ。」
「あぁ、気をつけるのだぞ。」
「……分かってる…………シュア!」
そう言いゼロは惑星エビルに向かった。
「よし…。戻るか……。」
ヒカリは自身のラボに戻った。その姿を、赤く光る不気味な瞳が見ていることに気づかず………。
「キエテ………カレカレータ……」
ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀3章に続く…