「素晴らしい海外学生を見つけた!そこからどうするの?」をまとめる
こんにちわ、たつふみです。前回、前々回と海外の高度外国人材をどうやって見つけて、選抜し、内定を出したかをお話してきました。
今回はそのさらに先、受け入れの実務について弊社がどう歩んできたかをお話したいと思います。
弊社が採用した方は、2023年7月4日、無事就労ビザで入国を果たし、弊社で働き始めてくれています。
フィリピンって審査が多い
新型コロナウィルスの感染が少しずつ落ち着き、入国制限も緩和され始めた2022年秋、いよいよ入国に向けた実務を開始しました。
そこで大事なのが「送り出し国のルール」の確認です。
特にコロナ渦では、入国に関しても様々なルールが追加されていて、そこを警戒していましたが、情報収集をしていくとフィリピン側では目まぐるしく新たな出国ルールが変わり、POEA、POLOといった機関が認定した企業にしか人材を送り出せない状況になっています(2017年8月からの新ルール)
これはつまり受け入れたい企業からすると
「やることが他国からの受け入れより増えた」ということです。
フィリピンの方々は外国での就業が多く、その権利を守るためにしっかりとしたルールを設けたというのバックグラウンドのようです。詳しく知りたい方は下記のリンクをどうぞ。
さて、ビザ申請だけでもお腹いっぱいの中、POLOの認定を取るには町工場のリソースは足りません。書類も多く、英語の申請書や登記簿謄本の英訳など普段扱わない書類を相手にすることになります。そうなるとやはり…
専門家にお願いしよう
私の認識では、フィリピンから人材を受け入れるためには、POEAというフィリピンの政府機関から認定を受けた「送り出し機関」が「受け入れ企業」に人材を紹介し送り出すというスキームのようです。その際「送り出し機関」が指定してきた「受け入れ企業」がきちんとした企業か?労働条件は適切か?を受け入れ現地で確認し審査するのがPOLOという大使館併設の事務所のようなものです。
まずはPOEA認定機関とを連絡を取り、POLOに申請書を出すことが目標となります。
前のnoteでもご紹介しましたが、八王子にはそういったノウハウを紹介してくれる「発ジャパン」という企業があるので、そこからPOEA認定機関かつPOLO申請業務を手伝ってくれる企業を紹介いただきました。ここではU社とします。
U社は、POEA認定機関でありながら、日本にも事務所があり大体日本語でのやり取りが可能でした。日本語でやり取りをしながらPOLO申請書を作っていきました。
U社は、POLO申請書作成業務、およびいざ出国する際に必要な外国人材へのフォローアップなども行ってくれます。
高度外国人材は決して安い労働力ではない
POLO申請書では、「誰を採用するか」ではなく、「こんな人材をPOEAに紹介してほしい」というオファーを出すような建付けです。
弊社は採用したい人は決まっていましたが、法律の建付け上このような方法で申請書を作っていきます。
そこで労働条件をきちんと提示する必要があるのですが、条件面でかなりの好待遇を要求されます。
POEAとPOLOが生まれた理由からも明確ですが、怪しい条件や人材が不利になるような条件ではそもそもPOLO審査ではじかれるようになっているのです。
ですので、基本給はもちろん、家賃補助から水道光熱費まで細かく条件が見られます。
U社のエージェントさんからも、「基本給と待遇が審査通過の条件のようなもの」と言われました。
私は、中途採用と同じ基本給を提示するつもりだったので、基本給は問題ありませんでしたが、家賃補助に関しては大幅に妥協する必要がありました。
実際、基本給いくら以上なら審査に通るのか?は、審査官によって異なるようで、明確なものがあるわけではないようです。
電話でPOLO事務所に問い合わせたけど、回答がまちまちだったそうです。
新卒の学生としては、大手並みの基本給が審査通過には必要そうな雰囲気です。安い労働力が必要だからという理由では、そもそも採用できません。
企業の未来の戦略に必要だから、といったより長期の目線での人材投資といったきちんとした目的・戦略がなければ採用ができません。
こうして、エージェントさんに条件面を募集労働条件書にしてもらい、登記簿なども英訳をしてもらって、フィリピン大使館のPOLO事務所に郵送で送りました。
この申請書の作成は、エージェントさんの仕事量にもよりますが、順調にいけば2か月はかかりません。
突然フィリピン大使館から電話
POLO申請書を送って2週間後、私が不在の時にフィリピン大使館から電話がありました。
電話をうけた社員は英語での電話だったのでパニック状態。
担当者名や要件を聞き出すことはできませんでした。これは受け入れ企業としては課題です。英語応対ができる人材が限られていると、こんなトラブルも起きます。反省です。
おそらく申請書の不備か確認事項だろうと思って、大使館に折り返し連絡をしました。英語の電話は苦手です。
ただ担当者がわからなかったこともあり、その場での解決には至らず。さらに折り返しを待つことになりました。
電話番の社員に、もし私がいなかったら「なんとか担当者の名前だけでも聞いてくれ」とフレーズを教えたりしてドキドキして折り返しを待っていると、それから2週間ほどたった時電話がありました。
幸い私が在社していました。内容は、とてもあっけなく、2分でやりとり終了。でも2週間余計にかかったことを考えると、時間がもったいなかったです。
そしてその1週間後、弊社にPOLO審査に合格したとの書面が送られてきました。
POLO事務所とのやりとりは、申請書発送から1か月半かかりました。
POLOが取れたら次はビザ
フィリピン政府とのやりとりが完了したので、次は日本国政府に入国のビザを申請します。
ここでもU社さんに、追加をお支払いして在留認定申請書の作成を依頼しました。フィリピンにいる内定者さんから直接必要書類を集めてくれるなど、とてもスムーズな対応でした。
ビザは「技術・人文知識・国際業務」、いわゆる技人国というもの。
ここからは日本語でおkなので、必要書類をまとめて入国管理局へ持ち込みます。
入国管理局は常に人があふれていて、申請書を出すだけでも2時間以上待ちます。
すべての申請が通ればあとは入国
ビザが発給されたら、いよいよ入国です。
航空券の手配や、住居の手配など日本での採用とは異なることが山積みです。
住居に関しては、借り上げ社宅を用意しました。あらかじめ不動産屋さんに「住むのは外国の方。会社が契約する」ということを伝えて、大丈夫なところで探しました。オンラインで直接住居を見せながら内覧してもらい、少しでも新生活がイメージできるよう努めました。最終的には4件の中から、彼自身が「ここがいい!」と決めてくれたのがとてもよかった。
海外で初めての一人暮らしは想像以上に大変なことなので、少しでもイメージが沸いたらいいなと思います。
入国の航空券は会社が発行することが多いです。弊社も片道の航空券を取ってEチケットを送付。マニラの空港に到着していないといけない時間も考慮しつつ、初めての日本で成田に降ろすのはちょっと寂しかった(笑)ので羽田に。初めて降り立つ東京の景色とか、目に焼き付けておいてほしかったという想いがあります。自己満です。
ここからが新たなスタート
7/4、彼は無事日本に到着しました。空港の入国審査で在留カードも無事に取得し、彼が選んだ部屋に住み始め、仕事もスタートすることができました。
ですが採用はスタートにすぎません。ここから彼が自分の能力をいかんなく発揮し、弊社で活躍してもらうために様々な施策を打ち続ける必要があります。
言語、習慣、ニュアンスの違い、食べ物、近隣住民、同僚、法律、税金などなどとにかく様々なことが違います。
これから高度外国人材を「会社・日本に定着させる」という新たなミッションが始まります。
実際、高度外国人材採用、いくらかかったの?
やっぱり知りたい、結局いくらかかったのかという話題。
1名の学生を新卒で受け入れるのにかかった金額を公開します。
・インターンシップ受け入れまで
「海外大学とのインターンシップ受け入れ覚書(MOA)取得+企業説明会+面接」
3回渡航の航空券+エージェントへの支払い
670,000円
・インターンシップ
「インターンシップの給与」
33,600円
・POLOとビザ申請
「入国に必要な書類の準備とその発送・受け取り」
400,000円
・入国にかかる航空券や生活準備のための費用
200,000円
大体、130万円ほどかかりました。
実際、これが高いか、安いかは全くわかりませんし、コスパはこの取り組みにおいて問題だとは思っていません。
高度外国人とマッチングして、インターンをしてお互いのすり合わせをして、内定を出して、ビザを申請して、入国して働いてもらう
この一連のスキームを、社内で完結して再現性高く実行できるというところにこの取り組み真の価値があると思っています。
何かみなさんの役に立つことがあれば幸いです。最後までお読みくださってありがとうございました。