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テレワークゆり物語 (182)私の「赤のビートル」ものがたり
「由利ちゃん、怒らんといてなぁ・・・」
2011年8月。避暑で北見に滞在している母からの電話。
母が、猫なで声で「由利ちゃん」という時は、ろくなことが無い。
「じいさんが車をちょっとぶつけてしもてん・・・水が流れてんねん。」
はあ?車をぶつけた?水が流れている?
すぐさま駆け付けると、そこには、無残な私の赤い「ニュービートル」の姿があった。
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愛する「終(つい)の車」の赤いニュービートルが!
この大惨事(?)につながる、私の計画性の無いマイカー遍歴については、以下をご覧いただきたい。
全損で廃車になった「終(つい)の車」
レンタカー代をケチって、自分の大切な車を父(当時74歳)に車を貸してしまった私が悪い。
乗るとしても、車15分以内のスーパーと日帰り温泉ぐらい。
北海道の道は、広くて車も少ないから大丈夫だろう。
甘かった。後悔してもしきれない。
事故現場は、日帰り温泉と併設されたパークゴルフ場の入口。
あとひとつ、角を曲がれば、温泉の駐車場だった。
そこを曲がらず、石でできた水飲み場に乗り上げたのだ。
水飲み場の石は倒れ、水が流れ出したものの、車はその上で止まった。
おかげで、母も父も、無傷。
神様とご先祖さまに、心から感謝である。
ビートルよ、両親を守ってくれて、ありがとう。
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とはいえ、心は泣いていた。
北見としては、暑い夏の日だった。
愛する車がつりあげられる様子を、茫然として眺める私。
そこに、母が近づいてきて、こう言った。
「温泉、入ってきてええか?」
さすが、私の母である。
二台目の「グランビア」がマイカーに
一瞬にして、マイカーを無くしてしまった私。
雪道のスリップ事故で全損したグランビアの後、長女との約束を果たすすべく購入した二台目『グランビア 』が、実質、私のマイカーとなった。
大きくて、北海道を家族で旅するには、とても良い車だ。
でも、やっぱり、私の車ではなく、家族の車。
何より「惚れた相手」ではない。
いつかまた、赤いビートルを手に入れたい。
私は強く誓った。
「ザ・ビートル」の登場
奇しくも、その年の冬。
なんと、新モデル「ザ・ビートル」が発表された。
いてもたってもいられない私は、出張とからめ、北見から
お披露目の場「東京モーターショウ2011」に出向いた。
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欲しい。欲しい。欲しい。
でも、さすがにお金が無い。
当時、娘たちは、中学・高校・大学。これからお金がかかる。
がまん。がまん。がまん。
でも、いつか。いつか。いつか。
赤いザ・ビートルを買って、今度こそ「終(つい)の車」にしよう。
私は再度、強く誓った。
「ビートル」80年の歴史に幕
そんな私の「誓い」は、見事に打ち砕かれた。
2019年「ザ・ビートル」が生産終了となった。
もう、赤いビートルを買うことはできない
もちろん市場には、中古車がある。
でも、カタログをなめるように見て、モデルを決めて、オプションを選ぶ、あの楽しみはもう味わえない。
ああ、私のマイカーライフは、ここで終わるのか。
中古車じゃ、ダメなんですか?
3人の子どもたちも社会人となった。
でも、大金をかけてでも欲しい車が無い。
そんな中、2024年、運命の出会いがやってきた。
なぜ中古車サイトを見ていたのかは、出会いの衝撃で覚えていない。
でも、むちゃくちゃカッコいい、赤いビートルを見つけてしまったのだ。
「ザ・ビートル マイスター Rライン」ビートル最後の特別仕様車。
しかも、販売店は、父の介護のために帰っている奈良の実家から1時間程度。ダンナが関西に戻るタイミングで実車を試乗した。
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ボディは、大好きな赤。でも、内装は黒。
そして何より気に入ったのが、注文生産の赤と黒の革シート。
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とにかく、いろいろフル装備。
新車での発売時には、高くて手が出なかっただろう。
(価格コムによると、新車だと400万を超えていた)
中古車でもイイじゃないか!
勝手に「運命の出会い」と信じた私は、21年ぶりのマイカーを購入した。
赤いザ・ビートルで北海道を走る
あの茫然と立ち尽くした、夏の暑い日から13年。
私は、やっと、「終(つい)の車」を、取り戻した。
納車の日、大阪の販売店まで電車で行き、奈良の実家まで乗って帰った。
ドキドキドキドキドキ
2019年モノなので、5年落ちの中古車だが、すこぶる快調。
が、何かが足りない。
そうだ! 私の赤いビートルは、北海道でなきゃいけない。
そして、ワガママな私は、「陸送」という大技を経て、北海道を赤いビートルで走る夢を実現させた。(13年もがまんしたのだから、許して~)
2024年夏。
憧れの赤いビートルで、行きたかった「天売島」へ。
と言っても、ターボエンジンやらオートクルーズやらパドルシフトやら左ウィンカーやら、慣れないことばかり。
ほとんどダンナに運転してもらい、もっぱら、かっこいいザ・ビートル&北海道の風景撮影にいそしんだ。
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今回、自分の記録のために「カーライフ」を整理。
いろんなことがあったなぁと振り返るだけでも、本当に楽しい時間だった。
私的な話にお付き合いいただいたみなさま、ありがとうございました。
2024年8月19日 田澤由利@北見