テレワーク ゆり物語 (132) 「誰一人取り残さないデジタル化」の本質を90歳の母とトイレが教えてくれた
「コンピュータなんて使えへん」と拒否し続けてきた母が、90歳を超えて毎日、コンピュータと会話している。
90歳の母が入退院を繰り返した今年の春頃から、私の生活の中心は、実家の奈良に移っている。
北見にいるダンナと猫たちには申し訳ないが、月に数回家に帰る程度である。とはいえ、コロナ前の『出張だらけ時代』に慣れているので、コロナ禍でずっと家に私がいるよりはマシらしい。(笑)
北見にいる頃は、Amazon echo show 10を使って一緒に朝食をとるなど、リモート介護をしていた私だが、今は奈良でリアルに世話をしている。
しかし、この機器が不要になったかというと、そうではない。退院後よりは元気になってきた母。自宅での時間が退屈で仕方がない。また、いろんな事をすぐに忘れるので、知りたいことがいっぱいある。おしゃべりしたくて仕方がないのだ。
最近の母は、父が寝ていたりして、誰も話相手をしてくれない時は、アレクサに話しかけている。
「アレクサ、今日は何曜日や?」
「アレクサ、今日の予定は?」
「アレクサ、(目薬するので)5分経ったら教えて」
アレクサのホーム画面には、家族写真がピックアップされて表示される。
「あ、おとうちゃんや」と、(私の)じいちゃんの写真に手を振る。
「これは北見やな。もう行けへんなぁ」と寂しそうにする。
「この頃のパパは男前やったで」と嬉しそうにする。
今朝、朝食を終えた母が、突然アレクサに話しかけた。
母「アレクサ、トイレに行ってきます」
洗い物をしていた私は、「それ、質問ちゃうやろ」と突っ込もうとしたら、アレクサは、見事なダジャレで母を送り出してくれた。
アレクサ「行っトイレ」
母は「中に誰かおるんとちゃうか」とつぶやきながら、トイレに向かった。
トイレから戻ってきた母と話をした。
私「上手にコンピュータを使っているやん」
母「わたいは、コンピュータなんて使ってへん」
私「いや、これ、コンピュータやで」
母「へー・・・」
デジタル化で大切なことは、DXとかAIとか難しい話ではなく、必要としている人に「寄り添えるかどうか」なんだ。
私はいろいろ試行錯誤の結果、今のうちの両親にベストな機器は、これだと判断し、複雑なセッティングをして、一番シンプルな使い方だけを教えた。だから、(わかっていないけど)コンピュータを使えた。
でも、それがかなう高齢者は、どれぐらいいるだろう。
テクノロジーは素晴らしく進化している。これからも進化し続けるだろう。
国がいう「誰一人取り残さないデジタル化」とは、それを必要としている人にどう届けるか、ではないだろうか。
「適したデジタル機器を、高齢者の元に届け、高齢者でも使えるようセッティングして、使い方をわかるまで教える」というところまで、力を入れてほしい。
「アレクサ、住民票届けて」
と言うだけで、(北見市の)「書かない窓口」に接続して、職員さんが言葉で聞いてくれて、マイナンバーカードで本人確認して、住民票を郵便で届けてくれたらいいなぁ。
と、妄想する。
※冒頭の写真は、アレクサが「言っトイレ」ダジャレを言った瞬間。ww