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テレワークゆり物語 【183】とっさの判断を冷静に検証したら単なる関西のおばちゃんのおせっかいだった件

危ない!私が助けなきゃ

台風10号の影響が無くなり、ようやく通常営業の大阪国際空港。
朝7時、出発フロアへの上りエスカレーターを降りようとした時のことだった。

エスカレーター反対側の下りの入口で、6.7才の女の子がこけて立ちあがろうとしている。

ピンクのかわいいキャリーケースを抱き抱えている。

周りに親らしき人はいない。

とっさに上りエスカレーターを降り、駆け寄って、ひとりで下りないよう、女の子の体を支えた。

エスカレーターの下を見ると、お父さんらしき人が、大きなスーツケースと共に、こちらを驚いて見上げている。

一緒に乗ったはずの娘がいない。振り返ると、まだ上にいる。
しかも、知らないおばさんと。そら、驚くわ。

怖かったのだろう。不安で怯える女の子。
下まで安全に送り届けるのが、この場に居合わせた私の役目である。

しかし、私もキャリーケースを持っている。
しかもPCが入ったリュックが乗っかっている。
これを持ったまま、女の子とこの長いエスカレーターを下るのは、危ない。

私は、自分のキャリーとリュック一式を、邪魔にならない位置に移動し、女の子に言った。

「怖かったね。おばちゃんと一緒に降りよう。もう大丈夫。」
女の子はうなづいた。

ピンクのかわいいキャリーケースを一緒に持ちながら、下に降りていく。
お父さんがほっといたように見つめている。

無事、女の子をお父さんの元に届けた私は、きびすを返して、上りエスカレーターに飛び乗った。

「わざわざ降りてくださったんですか?ありがとうございます!」というお父さんに、お気になさらずにと「手をあげて」エスカレーターを上がっていく私。かっこいい。

でも、心はワサワサ。上に置いてきたキャリーケースが無くなっていたらどうしよう。
キャリーには着替えぐらいしかないが、リュックにはPCが入っている。

そこに置いて戻るまで、おそらく1.2分。
キャリーたちは、置いたままの姿で待っていてくれた。

飛行機の搭乗口に向かいながら、考えた。

私は、とっさの判断で、キャリーを置いて、女の子を送った。
それは、正しい判断だったのか⁈

落ち着いて検証してみる。

人生も仕事も、判断が必要になるときがある。
私の場合、判断基準は「リスク」である。

ここは日本の空港。
人が慌ただしく行き交う出発フロア。
ポツンと置かれたキャリーケースとリュック。
数分の間に盗まれる確率は、決して高くないだろう。

これに対し、気持ちが動揺している女の子を安心させつつ、彼女のキャリーと、私のリュック付きキャリーケースを持って降りるリスクは、低いとはいえ、前者よりは高い。

では、そのリスクが発生した場合の「被害」を考えてみよう。

PCを盗まれた場合、私の出張仕事はどうなるか。
実は問題ない。
過去に家にPCを忘れて出張に出た経験から、全ての仕事データはクラウド上にあり、(不便とはいえ)スマホで仕事ができる環境を用意している。

PCはもちろんパスワードやら生体認証やらで保護している。
情報漏洩の被害も低い。

一方、私と女の子がエスカレーター上でバランスを崩したら、一大事である。

ええかっこしいの私は女の子を庇ってしまうだろうから、間違いなく負傷する。東京に行けず、講演や会議をキャンセルすることになる。

そうだ。私の判断は正しかった。

と、ドヤ顔になりかけたが、冷静に考えると違う。

両方のリスクを軽減する方法を考えるべきではなかったか。

案1
リュックだけ背負って、キャリーはおいていく。
両手は空いているので、バランスを崩すこともないだろう。
万が一、キャリーを盗まれても、被害は少ない。

→いや、なんでも自分でやろうするのは良くない。

案2
状況を見ていた近くにいる人に、キャリーをみておいてもらう。

→悪くない。自分同様、大阪のおばちゃんなら、喜んで引き受けてくれるだろう。

案3
おとうさんに、てまねきをして、上まで迎えにきてもらう。
おとうさんも大きなキャリーケースを持っているが、すぐ横に、上りのエスカレーターがあるじゃないか。

ということで、結論。
案3が正解だった。

変なおせっかい精神で、自分が良いおばさんになろうとせずに、冷静に考えるべし。

と言うところで、羽田空港に到着したので、関西のおばちゃんの考察は以上。

羽田空港着後、到着ロビーでテレワーク

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