テレワークゆり物語 (19)幻のWindows 1.0
大学時代の押しかけアルバイトが即日採用された理由が判明した。
アルバイトを始めた頃は、新聞の切り抜きやフロッピーディスクのフォーマットばかりしていたが、そのうち、
「アルバイトさん、これ翻訳してくれる?」
と、英語が書かれた紙を渡されるようになった。
えっ?! 時給850円のアルバイトに翻訳??
そうか。即日採用が決まったのは、私の「外国語学部」という肩書だったからか。英語ができると勘違いされ、アメリカの会社である、マイクロソフトとやらの極東本部に配属されたのだ。それは、残念。私は、受験英語しか知らず、しかもスペイン語学科である(スペイン語の翻訳できるわけではないが)。しかし、ここでクビになっては困る。鉛筆と消しゴム(ワープロが無かった時代)、必死でエセ翻訳にいそしんだ。
ある日、アメリカのマイクロソフト社から届いたFAXの翻訳を頼まれた。その冒頭には、こう書かれていた。
“Windows is ~~”
~~が何だったかは覚えていない。ただ、私は、この文章を見てこう思った。
いくら私が英語が苦手だからって、この間違いぐらいはわかる。
”Window”に ”s”がついているから、”is”はおかしい。ここは、be動詞の複数形 ”are”だろう。そして、こう訳した。
窓たちは、~~である。
この迷訳を見た社員のAさんが、私を呼んでこういった。
「これはね、ウインドウズという新しいオーエスの名前なの」
そういって、あるパソコンのモニターを見せてくれた。そこには、時計とノートパッドという2つのソフトが同時に動いていた。私を魅了したパソコンは、ソフトを替えればいろんなことができるが、このオーエスとやらは、1つのパソコンで同時に2つのことができる! すごい!!
このOSは、Wondows1.0。今のようなマルチウインドウではなく、タイル型のウインドウだった。この時点では、アメリカでも発売前。日本人で、この画面を見た人は、ごく一部だったに違いない。
その後、アメリカでの発売(1985年11月)、日本では翌年にNECのPC98にバンドルされたもののほとんど注目されず、「1.0」は幻のOSとなった。1995年、発売日に40万本が売れた「Windows 95」登場の10年も前のエピソードだ。
ということで、マイクロソフトソフトFE本部でのアルバイト。びっくり体験は、まだまだ続きます。
#冒頭の図は、私の記憶の中の Windows1.0。
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