極北の大地と幻の魚〜道北イトウ遠征釣行〜0日目
2024年10月上旬 東京都渋谷区
北海道、それも現在では一部の河川にしか棲息しないイトウを狙って、道北へ向かう計画を立てた。大半の渓流が禁漁を迎える9月末、最終日まで3日間、大井川の源流に籠っていた。そのままの熱量で何かをしたかった。そんなときに思いついたのが、長年憧れつつも手が届かなかった魚、イトウだった。北海道は遠い。無職にならない限り、年に何度も行けるような土地ではない。事前の情報収集のため、都内の老舗「サンスイ渋谷店」を訪れた。
【イトウとは】日本最大の淡水魚
原点回帰。実家から持ってきていた古い図鑑のページをめくる。イトウ属について、私が持っている古い図鑑「原色日本淡水魚類図鑑」(保育社)にはこんな記述があった。初版発行は50年くらい前のものだが、ことイトウの記述に関しては現状とそれほど変化がなさそうに思えた。
日本のイワナにはイワナとオショロコマ、そしてそれらの亜種がいる。イトウはそのどれにも該当しない。だけど、イワナに近いとされているらしい。
そして、圧倒的に大きくなる。1m以上には成長するし、1.5mを釣ったという話も聞いたことがあるし、2mという記録もあるという。イワナは2尺とか、降海型のアメマスでもどんなに大きくても80cmくらいのはずだ。
イトウとは逆に、中禅寺湖などに生息するレイクトラウトはイワナ属とされているが、本当はイトウに近い魚なのではないかという話もある。釣ったことはないが、中禅寺湖でも1mくらいになるというから、「イワナばなれ」している。
とはいえ、分類のことはわからないことだらけなので、これ以上は触れないことにする。
【自粛期間】猿払村では6月、9月、10月のみ
極寒の道北の冬。川が凍ってしまうという。すると、イトウはエサを食べられなくなる。だから、本当は11月くらい、肩に雪が積もるような頃、いわゆる冬前の「荒食い」でよく釣れていた。
しかし、2021年の夏の高水温・渇水によるイトウ大量死以降、猿払村ではイトウ釣りの自粛期間が設けられた。夏場の高水温期、真冬、そして産卵期となる春はすべて自粛期間。イトウを追いかけることができるのは産卵期明けの6月、夏が終わった9〜10月、なんと1年間で合計3ヶ月間のみ。
猿払村では「村の魚」として手厚く保護されており、村の面積の約3割を占める社有林を持つ王子製紙も猿払イトウ保全協議会の一員となっている。地元の行政と企業が一致団結して、北海道内でも姿を消しつつあるイトウを見守っているのだ。
【タックル】サクラマス用やシーバス用
ロッドは大型トラウト用やシーバス用などを使うアングラーが多いようだ。長さは8〜9ftくらい。今回のメインラインはPE1.5号、リーダーはフロロ35lb。風が強い地域であり、遠投が可能なもの、多少の風でも無理が効くものがよさそうだ。
ビッグベイトなどを使う場合を想定してベイトタックルも持ち込んでいた。バス用の6ft8in、MHクラス、メインラインはフロロ16lb直結。本当はもっと太いラインか、スピニング同様PEにフロロリーダーの方がいいのかもしれない。
【巻き速度】ゆっくりが基本
カンツリ並にゆっくり。とにかくゆっくり。ちなみに、アクションはつけない。リアクションバイトを誘うという考え方もあるようだが、とりわけ多くの人がイトウを求めて訪れるエリアだけあり、プレッシャーが高く、糸鳴りを嫌うようだ。
扇状にコースを変えながら、ゆっくりただ巻き。流れに乗せて、ターンさせる場所を変える。あるいは、歩いて立ち位置を変えてコースを変える。
また、必ず足元まで引く。ピックアップ直前にルアーを襲うことがよくあるという。
【ルアーカラー】チャートなど目立つ色は必携
川は目立つカラーがいい。チャート、グリーンなど、トラウト狙いではあまり使わないようなド派手のカラーが中心になる。ただし、海ではナチュラル系カラーも必要。
【川と海を往来】凪限定で海でも釣れる
イトウは川と海を行き来する性質がある。しかし、海での生態はあまりわかっていないらしい。
海は川ほどじゃないけど基本ゆっくり。やはりアクションはつけない。糸が鳴るのをとにかく嫌うからだ。
道北オホーツク海沿岸は基本的に風が強いエリア。強風時はほぼ釣りにならない。また、凪でも突然大きな波が来てさらわれることがある。ライフジャケットは必ず着用だ。
購入したルアーは以下の通り。
エクスセンスCOO 190Fジェットブースト 1個
ティムコ ジェネシスガイナ123 1個
ジャクソン アスリート17SSV 2個
【フック】シングルバーブレスを使用
夏場の高水温と渇水によりイトウの大量死が伝えられたのは2021年のこと。気候変動の影響は、極北の地・道北も例外ではないらしい。
日本最大の淡水魚として知られるイトウは河川環境の変化などにより生息地が減っている。かつては青森県や岩手県の一部にも生息していた記録があるが、現在では絶滅。かつては全域で生息していた道内でも生息地は減少している。
ダメージを最低限に抑えるため、シングル・バーブレスフックの使用が推奨されている。
今回購入したのはがまかつのシングルフック53、同SALT、カルティバのS-75Mなど。サイズは#1、1/0、2/0。選択肢はあまりなく、あってもプラグに使いづらい横アイ、スプーン用のものが多い。あとは海用のもので代用できるものがいくつかあるかどうかといったところだ。そして、シングルフック53のパッケージにはなぜか「FOR AREA FISHING」とある。十分すぎるほど太軸に見えた。
完成された造形に手を加えるように思えてしまい、さらにそこから錆びてしまうことが多いから、元からバーブレスのアイテムが理想で、バーブを潰すのははっきりいって私は嫌いなのだが、仕方ないのでペンチで潰す。