黒猫の話
黒猫の話。
黒猫は存外不幸の象徴として言われているが、その美しい黒猫は幸福をもたらしている。
色が見えると言った犬に色を見た中で表現する術を与え、犬の作家の育ての親になった。
黒猫は料理も得意で様々な作品をも作る作家だった。時に美しく自分を化粧し、好きな歌い手の舞台へと赴く。
黒猫は優しくなりたいと常に告げる。
厳しい言葉にも愛があり、愛がない人にも過去の痛みすらもどうでもいいかのように心を揺さぶる。
心根にあるのは常に尊重。
故に人が集まり心からの愛を奏であう。
生き方が違えど示すのは生きやすい道。
選んで手繰り寄せた幸せは黒猫自身が選んだ人生。黒猫はもっとも素晴らしい生き方を手に入れた。その姿を見た犬はこうも感じた。
この黒猫はきっと誤解や悲しみを受けたとしても人生を謳歌して楽しむ世界を見続けるのだろう。
例えその悲しみや怒りが自分に向けられても、それはそれでいいかなと笑ってやり過ごすのだろうなあともおもう。
犬は出会ってから様々な事をしたけれども、この黒猫においては愛してるの言葉が一番ふさわしい。
黒猫の背中を見て成長していきたいとおもうと同時に横に並び、やがて自分のする表現で追い抜けるような事をして、姉のような黒猫に孝行したいとおもう。
黒猫の性格上望まないとはおもうので、ほどほどにするのだけれども、まずは犬は自立することを目指す事にする。
少し離れる場所にいくけれどもまた戻れると信じてるから。黒猫は幸せになれる事を信じて疑わない。犬はアンバランスになると不幸せを言う。
犬はそろそろやめておきたいので沈黙を覚える事にした。世界は優しくないようで変わる者には優しい。違う事の愛しさを教えた黒猫。また立ち上がる事を決めた犬。まわりにいる黒猫の仲間はひと際輝いて美しい。
黒猫は料理屋の店主であり、作家であり、誰かの道しるべになるべき存在だ。
犬も救われ誰かも救われ、いつか犬も黒猫に頼れる存在になりたいとおもう。
親愛と敬愛と家族にも似た感情を持って、犬はまた旅立ち、黒猫の場所に戻ると決めた。